【番外編】アリアナとルーカスの前世(アリアナ視点)
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昨日は滅多に入らない仕事が丸一日入り、夜は寝落ちしてしまって、投稿出来ず申し訳ありませんでした。
アリアナ視点です。
『』は日本語での会話です。
数日後の休みの日、先日のパーティーは大変だったなぁと思いながら、私は魔法具の店に足を運んだ。
あのパーティーの後、結局クロード殿下に捕まってしまった。ブリザードのクロード殿下は怖かった。
結局兄が助けてくれ、なんとか逃げ出せたのだけど。
でもルーカス殿下の話って、何だろう?
お昼過ぎに、ルーカス殿下(佐伯くん)がやってきた。
彼を応接室に招く。
『ご機嫌よう。』
『ああ、今日はありがとな。ここ使っていいのか?』
彼は周囲を見渡しながら、聞いて来た。
『ええ、ここは私の店なの。』
『やっぱり梨奈が関わっているとは思ったんた。』
私は、以前見かけた時は佐伯くんとは、思っていなかったけれど。
『お茶でいいかしら?』
そう言って、私はお茶を入れて彼に出し、彼の正面はのソファーに座った。
『ルーカス殿下?佐伯くんって呼んでも?』
『ああ。』
『佐伯くんも転生しているなんて、やっぱり信じられなくて。』
そう、前世の同僚だと言われても、外見が全く違う為、まだ信じられない。
そういう私も外見は全く違うのだけど。
『そうかもな。アリアナは佐倉梨奈だよな?』
『前世はそうだったわ。』
まさか自分以外の転生者がいるとは、思わなかった。
彼は突然真剣な顔をする。
真剣な顔は、佐伯くんが重なって見える。
『俺は梨奈を探していた。』
『私がこの世界にいると知っていたの?』
私が転生しているって、どうして思ったのか。
『梨奈は前世で死んだ時の記憶があるか?』
死んだ時の記憶は無い。それより自分の置かれた立場、悪役令嬢に転生したことの方がショックで、気にしていなかった。
彼の両手は拳を握り、微かに震えていた。
『それが、死んだ時の事はよく覚えていないの。自分が28歳だった記憶まであるのだけど、そこから先がないから、私は28歳で死んだのかと思っていたけれど、いつ、どこで、どうして死んだのかは記憶が抜けているの。』
そう、私は転生後も死んだ時の記憶は思い出せなかった。
『そうか…』
彼は残念なような、ほっとしたような、複雑な表情をしていた。
『佐伯くんは?』
『俺は覚えている。』
『そうなんだ。』
私も覚えていたなら、きっと複雑な気持ちになるのかな。
『俺は…いや、俺たちは交通事故で死んだんだ。』
『俺たち?』
私と佐伯くんの事?
『そう。俺が交差点で梨奈を呼び止めたんだ。梨奈が立ち止まって…俺の方を向いた時、トラックが俺たちに向かって来た。』
『……』
『俺は死ぬ時に、梨奈と同じ世界に生まれ変わらせてくれ!と願った。』
ああ、だから彼は探してくれたのね。
『俺はずっと後悔していたんだ。俺が呼び止めなかったら、梨奈は事故に巻き込まれる事は無かった。俺が梨奈の人生を奪ってしまったと。』
『それは違う!』
私は叫ぶ。
震えている佐伯くんの隣に座り、彼の右手に私の手を重ねた。私の気持ちが伝わって欲しい。
『それは違うよ。佐伯くん。私は事故の事覚えていないの。ごめんなさい。でも、今の話を聞いても、佐伯くんのせいではないから。悪いのはトラックだから。もっと言えば、運が悪かったとしか、言いようがないし。きっと私の前世での運命だったのよ。』
『だが、俺が…』
『それを言うなら、私がもう少し早い時間に出ていたら、佐伯くんを巻き込まなくて済んだかもしれないじゃない。私が謝らないといけない。』
彼が次に何かを言う前に、何か言わないとと、私も必死になる。
『俺はずっと後悔していたんだ。最後に梨奈は俺に''逃げて''って言ったんだ。記憶を思い出してから、その場面を良く夢で見る。』
彼は反対の手を私の手の上に重ねた。
『本当は生きていて欲しかった。だけど状況から言って、怪我だけで済むはずは無いとも理解していたんだ。だから、前世の記憶を思い出してから、俺は梨奈を探していたんだ。俺が転生したんだ。だから梨奈も転生しているんじゃ無いかと。だけど俺の国では見つける事が出来なかった。諦めようとした時に、隣の国の、魔法具の事を知ったんだ。この店の魔法具は梨奈が作ったのだろう?』
彼は一体どんな思いで、探してくれていたのだろう。
途方もなく大変だったに違いない。
『それでこの国に留学してきたの?』
『それだけでは無いけどな。この国には学ぶべき所が沢山ある。』
私は少しホッとした。
『私は記憶が無くて…何と言ったらいいのか、わからない。でも今、話を聞いて、佐伯くんが神様にお願いしてくれたから、私はこの世界で生きているのだと思うわ。ありがとう。』
そう、悪役令嬢だったとしても、バッドエンドだったとしても、私の今までは、幸せだった。
『梨奈、今、幸せか?』
『ええ、幸せだわ。恵まれていると思うし。』
『クリストファーとの婚約は?』
『あー。それは…多分、そのうち解消されるはず。』
私は口籠る。お互いの為にも、そうであって欲しい。
『本当に?梨奈はクリストファーの事はどう思っているの?』
『小さな頃から一緒にいたから、家族のような存在かな。弟みたいな。』
そう、異性としては見れない。前世の記憶のせいでもあるのだが。
彼はホッとした様子だ。
『そうか。なら、俺の国に来ないか?』
彼の表情が柔らかくなった事にホッとして、私は手を離す。
『それは難しいと思うわ。』
私の魔法力の問題で、国から出して貰う事は難しい。
市井でひっそり暮らすぐらいなら、見逃して貰えるのでは無いかと、画策してはいるけれど。
『俺は第2王子だし、兄を支えていくつもりだ。結婚についても自由だし、アリアナの身分なら問題ない。』
そう言って、彼は外したばかりの私の手を取った。
『そんなに簡単な事じゃないよ。って、結婚って?誰が?』
『俺と梨奈。俺はもう後悔するのはやめたんだ。やっと、やっと梨奈を見つけたんだ。事故の日、本当は、俺と結婚を前提にして付き合って欲しいと、言うつもりだった。今世で会えたら、絶対に梨奈に伝えるって思っていた。』
『……』
『なぁ、梨奈、考えてくれないか?』
『急に言われても…色々と聞いて、私も混乱していて。』
『そうだよな。悪い。でも俺は本気だ。』
『でも、佐伯くん、前世に囚われなくともいいんじゃない?いまは、佐伯くんはルーカス殿下で、私はアリアナだわ。貴方はルーカス殿下として、自由に生きていいのよ。もう後悔しなくていいのよ。』
そう、外見も性格も私より可愛い子はいっぱいいる。
せっかく転生したのであれば、過去に囚われて欲しくない。
『俺は梨奈の事だけを考えてきた。今更諦められない。』
『でも、貴方は今の私を知らないし、私も今の貴方のことを知らないわ。』
そう、悪役令嬢の私はひっそりと生きる事にしたのだ。
だけど、ルーカス殿下から、死んだ時の話を聞いて、私も動揺していた。彼に対して、どんな態度で接したらいいのかわからない。
『なぁ、今からでもいい。俺の事を知って欲しい。』
私の事を知れば、ガッカリさせてしまうと思うと、簡単には''はい"と言えない。
『私は貴方が思っている梨奈では無いかもよ。』
『そう言えば、パーティーの時、悪役令嬢とか言っていなかったか?』
彼は口角を上げて言う。
『えっ!聞こえていたの?』
私は絶句した。まさか聞かれているとは思わなかった。
『ああ。悪役令嬢って、よくゲームとかで、出てくるキャラだろう?』
私の心臓がうるさい。早くこの場から逃げ出さないと。慌てて彼の手を振り解こうとするが、反対に彼にしっかりと握り込まれる。
『知っているの?』
辛うじて、平静を装って声を出す。
『歳の離れた妹がハマっていたからな。』
妹さんがいたんだ。残された家族の事を思うと悲しいよね。
『そうなんだ。それは妹さんは悲しんだだろうね。』
『そうだな。だが、今は梨奈の事だ。』
いえ、私の事は放っておいて。
『忘れてくれない?』
『嫌だね。どういう意味か説明して欲しい。』
彼の目は真剣だ。彼が前世の告白をしてくれ、私と向き合ってくれたのだから、もう誤魔化しは効かないと思う。
私はため息を一つ吐く。
今までずっと一人で抱えて悩んでいた事を話すことは怖かった。
私は俯いて、言葉を絞り出す。
『この世界が、私がプレーしていたゲームの世界なのよ。登場人物が一緒。ヒロインはカーラで私は悪役令嬢役。貴方を含めた王子様はヒロインの攻略対象。私が関わると、私のバッドエンドに向かう可能性が高いの。』
『ふーん。それで?』
『それでって、私はバッドエンドにならないよう、頑張って来たつもり。だけど、カーラは現れるし、王子様たちも、揃ってしまったし。私は逃げるしかないでしょう?』
彼は意地悪そうな笑みを浮かべる。
『逃げていないじゃないか?』
はい。逃げ出せていません。
『それを言われると辛い……』
ますます下を向いてしまう。
このまま逃げ出したい。
彼は私の顔を覗き込む。
『なぁ、前世に囚われているのは、梨奈の方じゃないか?ゲームの中と同じになるとは、限らないだろう?』
私はハッとする。だけどそんなに都合良く行くだろうか?
『それは…そうかもしれないけれど。』
『なぁ、俺とそのゲームとやらの結末を幸せなものに作り変えていかないか?ヒロインがカーラなら、クリストファーと、結ばれて幸せになるんだろう?梨奈が俺と一緒になったとして、悪い結末になるとは限らない。』
『……』
私の頭が考える事を拒否する。
今まで逃げる事しか、考えていなかった。
黙り込んだ私に、佐伯くんは
『今日は色々と混乱しているんだろう?一人でゆっくり考えたいよな。明日も休みだから、またここに来てもいいか?明日は、梨奈の都合がよかったら、街を案内して欲しい。』
と、引いてくれた。
そして私の頭を撫でながら、
『あんまり先の事を考えるな。』と励ましてくれた。
本当は励まさなければいけないのは、私の方なのに。
佐伯くんの優しさに、涙が浮かんでしまった。
お読みいただき、ありがとうございました。
ブックマーク、評価、感想、お待ちしています。
色々と意見をいただけると勉強になります。
次回も明日か明後日にと思っています。
年末に向けて、不定期で仕事が入り、毎日更新するのが難しくなって来ましたが、お付き合い頂けますと幸いです。




