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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】アリアナとルーカスとクロード(アリアナ視点)

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。


前話の続きで、番外編、アリアナ視点です。


『』は日本語表記です。

「何をしている!」


 私はルーカス殿下から引き離され、クロード殿下に抱きしめられていた。

 やっぱり、クロード殿下から逃げ切れないか…

 気配を纏わせて、小物を置く作戦は失敗でした。残念。


 クロード殿下がルーカス殿下を問い詰めるが、ルーカス殿下は負けていない。

 こんなに度胸があった人なのかと、驚いた。これは佐伯くんの記憶があるせい?

 色男でチャラチャラした人だと思って、ごめんなさい。と、こっそり謝っておく。


 すると、クロード殿下が日本語について、追求してきた。確かに聞いた事ない言語だろうけど、スルーして欲しい。この世界にない言語って、説明難しい。


「カタルニア語ではありません。遥か彼方にある東方の国の言葉ですが、アリアナ嬢がご存知だと知って、お話させていただきました。この言葉を知る者はほとんどいませんので、つい嬉しくて。」


 ルーカス殿下の口のうまさは、何処でも通用するのか。佐伯くんの営業テクニックか。


「だからと言って、肩に手を置く必要はないだろう?」


 だからと言って、クロード殿下が私を抱きしめようとするのは、もっと問題のような気がしますが…

 今となっては、兄以上に私に構ってくる。


「ああ、すみません。感動してしまい、つい。ですが、婚約者ではないクロード殿が、アリアナ嬢を腕の中に閉じ込める方が、不適切だと思いますが?」


 もっと言ってやって!と思わない訳ではないが、これ以上、クロード殿下を怒らせると、後が大変だ。

 私は少し緩んだ腕を外そうとするが、全く動かない。仕方ないので、クロード殿下の胸に手を当て、顔を見上げる。


「アリアナ、本当か?」

 クロード殿下が聞いてくる。

 ルーカス殿下の話に乗るしかない。


「クロード殿下、ルーカス殿下が仰る通りですわ。わたくしも珍しい言葉を使うことが出来て、嬉しくて会話を重ねただけです。だから離してくださいませ。」


 クロード殿下は溜息をついた。顔は怖いままなんですけどね。私はやっと腕から解放された。だけど、クロード殿下の腕は私の肩に回されたままだった。

 逃亡防止ですか?


 さて、どう切り抜けようかと、考えを巡らせていると、ルーカス殿下が日本語で話しかけてくる。


『君はこのままクロードと一緒にいていいのかい?会場に戻るなら、エスコートして行くが?』


 また日本語使うと、クロード殿下が恐ろしいのに、この人は一体何を考えているのか…


『助け出してくださるのですか?彼は怒らせると後が大変ですの。お気遣いだけ、いただいておきますわ。』


 そう、今助けて貰っても、必ず後から何か絡んでくる。


『いや、俺が会場へ連れて行こう。』

 ルーカス殿下は諦めない。


「異国の言葉で話す事は止めろ!」

 ほら、怒り出した!


「いえ、アリアナ嬢にダンスを申し込んだだけです。彼女も承知していただきましたので、これから私達はホールへ戻ります。彼女を返していただきますよ。」


 クロード殿下に対抗出来る、ルーカス殿下も凄いと思うが、私を巻き込まないで欲しい。

 そう思いながら、二人のやり取りに気を取られてあたら、ルーカス殿下が私を引っ張り、クロード殿下から引き離す。

 う〜ん。これはマズいかも。後が恐ろしい。


 ルーカス殿下は私を引っ張って、会場へ歩き出す。


『君はクロード殿下の事をどう思っているんだ?』


 彼は私とクロード殿下の事が、気になっていたようだ。どう思っていると言われても、攻略キャラには近付きたくないと思っている、とは言えない。


『過保護な兄』


 今のところは。


『お兄さんか。』


 義理の兄(予定)の人だ。

 私は心の中で盛大にため息をつく。


『貴方を含めてだけど、何で関わり合いになりたくないのに、私に関わってくるのかしら?』


 つい、愚痴が口から出てしまった。

 日本語恐るべし。いつも脳内で使っていた言語なので、頭が油断していたわ。


『それは君が魅力的だからだろう?』


 確かに見た目は前世と大違いだ。だけどね。外見だけで中身はアラサーなのよ。


『私は悪役令嬢のはずなのに…』

 私は思わず呟く。

 また、口が勝手に…


『悪役令嬢?』


 ルーカス殿下に聞こえてしまったようだ。

 そう、そして貴方は攻略キャラ。私が関わったらいけない人。


『もう、私に構わないで。佐伯くん』


 私はそう言って、彼の腕を解き、走り出す。

 だが、彼に追いつかれ、腕を掴まれた。


『離して!』


『嫌だ。話がしたい。梨奈、聞いて欲しい。』


 彼は真剣だった。半分泣きそうな顔をしている様に見えたのは、気のせいかしら?


 そこへ足音が近付く音がした。

 またクロード殿下であれば、また大変な事になる。


『一曲踊る時間なら。』とダンスに誘った。

 ホールで踊る間は、誰にも邪魔はされない。

 彼の真剣な眼差しに負けてしまった。


 二人でホールへと足を踏み入れる。

 周囲はまた騒めく。

 音楽に合わせて、二人で踊り出す。

 ゆっくりとした、ワルツだったので、会話に集中できそう。


『梨奈なんだろう?』


 やっぱりその確認ですか。さっきの泣きそうな顔を見た後では、もう認めてもいいかな。


『ええ、貴方は佐伯くん?』


 王子様に転生ですか。なんだが前世のまま、モテモテのキャラみたい。


『そうだよ。ああ、よかった。梨奈に会うことが出来た。』

 彼は心底ホッとした様だ。


『ええっと…佐伯くん、何で私が佐倉梨奈だってわかったの?姿形は全然違うし、話している言葉も違うし。他にも転生者がいるなんて、普通思わないじゃない?』


 それに国も違う。こうして会えた事は奇跡に近いのではないかと思う。私も彼が佐伯くんと知って、敬語が抜けてしまう。


『それは、梨奈の声だ。最初は確かにわからなかった。梨奈は覚えていないかもしれないけど、最初にあったのは学校近くの魔法具の店だったんだ。だけど、さっきのアリアナの声は梨奈の声だった。』


 声は似ていたんだ。自分では気付かなかった。


『私はビックリしたわ。日本語が聞こえた時は、空耳かと思ったわ。でも何でそんなに転生者を探していたの?』


『梨奈、ゆっくり話したい。俺は転生者を探していたんじゃない。梨奈を探していたんだ。簡単に話せる事じゃないんだ。お願いだから、二人で話す時間をくれないか?今日でなくともいい。近いうちであれば。』


 私を探していた?

 私が転生していると、知っていたって事?

 私も佐伯くんの話が聞いてみたい。


『ええ、じゃあ、次の休みの日、学校近くの魔法具店で。お昼過ぎでいいかしら。』


『ありがとう。昼過ぎに行くよ。』


『でも佐伯くんが王子様なんて、似合いすぎ。』


 そう、本当にピッタリだ。


『梨奈こそ、白薔薇姫だろう?』


『今の間だけね。』


『クリストファーと何か揉めているのか?俺で良ければ、力になるよ。』


 揉めているというのか…嫌われているのよね。


『クリストファー殿下は一応婚約者なの。彼は私の事よりカーラの事が大事みたいだけど。で、私がカーラを虐めていると、彼女が殿下に吹き込んでいるから、私の事が憎いのよ。』


『君がそんな事していない事は、皆知っているじゃないか。』


 でも、クリストファー殿下にはカーラの言葉しか届かない。


『クリストファー殿下の腰巾着がカーラの後押しをしているわ。カーラは彼らとも、仲良くしているのよ。』


『カーラは私にも近付いて来たが、あのあからさまな態度は気持ち悪い。』


 そうね。貴方はヒロインの攻略キャラだから。


『貴方は見目麗しい王子様ですもの。物腰も柔らかく、女性に優しい。ヒロインの好物だわ。』


『止めてくれ。カーラとなんて、想像しただけで、気持ち悪い。』


 女子からモテモテのルーカス王子は、カーラを相手にしなくても、不自由しないわよね。


『ふふふ…でも女の子を泣かすのは止めてね。』


『俺は梨奈がいてくれればいい。』


 何故に私が出てくる?まぁ口説くのが仕事なのかな。


『ほら、口が上手いんだから。』


 そんなところは、佐伯くんのままだ。


 そんな話をしていたら、ダンスが終わってしまう。

 ルーカス殿下(佐伯くん)は、私と離れ難そうにしていたが、それぞれに人垣が出来てしまった。


 私も男子生徒に囲まれている。慌てて令嬢の仮面を張り付けて、応対をしていると、視界の端にクロード殿下と、兄の姿が見えた。

 クロード殿下は鋭い眼差しを向けてくる。

 私は慌てて目を逸らした。

 う〜ん。どうやって逃げようかしら。


お読みいただき、ありがとうございます。

番外編祭り、まだ続きます。

これからもお付き合い頂けますと嬉しいです。

ブックマーク、感想、評価もお待ちしています。


次回もアリアナ視点です。

明日か明後日…(明日は用事が入ってしまい、確約はできません)に投稿予定です。


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