【番外編】クロードの想い1(クロード視点)
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本編より番外編に走ってしまい、このまま書いていていいのかと考えていたので、大変励みになりました。
今回は、前回の続きでノックの後からの話です。後半を明日更新予定です。お楽しみ頂けますと幸いです。
「クロード、入るぞ。」
アリアナの兄、エリックが入って来た。
「どうした?浮かない顔をして。」
「今日は色々あったからな。」
「ああ、アカデミーの爆発か。」
「アリアナに助けられたよ。防御魔法を上手く使ってくれた。」
「報告書はレオンハルト殿下が防御魔法を使ったと書いてあったが?」
「クリストファーが怪我一つないんだ。アリアナ以外考えられない。」
「そうだな。アリアナはクリストファーをよく見ているからな。」
エリックの何気ない言葉が刺さる。
「レオンハルトは何を企んでいるのか。だが、彼はアリアナの力に気付いただろう。」
「それは厄介だな。親父を呼ぶか?」
「公爵にも話しておくべきだろう。それとアリアナと早急に話がしたい。今から呼び出せるか?」
私はレオンハルトに抱き上げられたアリアナが、瞼から離れない。
嫉妬で狂う前に、アリアナに会いたい。
「ああ、親父の部屋ならアリアナの転移ポイントがある。誰にも疑われず会えるぞ。今から行くか?」
エリックは私の想いを知って、協力してくれるいい親友だ。
「ああ、頼むよ。」
エリックがアリアナとファーガソン公爵に連絡を入れてくれる。
「親父は今執務室にいるから、いつでもいいとさ。アリアナは用意が出来たら、抜け出して来ると言っていた。お前は事件より、アリアナに会いたいのだろう?」
エリックはニヤリとする。
「悪かったな。今日は私は機嫌が悪いんだ。余計なことを言うなよ。」
「お前が機嫌が悪いと、アリアナは怖がるぞ。顔見たら逃げ出すかもな。」
エリックはハハハと笑いながら、肩を叩く。
私はエリックを睨む。
「お前は私の味方じゃないのか?」
「俺はアリアナの味方さ。可愛い妹に幸せになってもらいたいだけだ。妹を幸せにしてくれるのであれば、お前以外の男でもいいと思っている。本当は王家に嫁がせるなんて、嫌なんだが。苦労する事がわかっている家に可愛い妹を差し出したくはない。妹に相応しい男がいなければ、俺の側で一生面倒を見てやるさ。」
エリックなら、言葉の通りにアリアナの面倒を一生見るだろう。私はその言葉に苛立つ。
「アリアナは私が幸せにする。お前も協力しろ!」
「はいはい。わかったよ。俺もクリストファーだけはないと思うからな。ただ、アリアナの気持ちも尊重しろよ。あいつは幼い頃からクリストファーの婚約者にされたおかげで、色恋沙汰には疎いからな。」
「わかっているさ。心配するな。」
二人で公爵の執務室に入る。
公爵は笑顔で出迎えてくれた。
アリアナはまだ来てないようだ。
「クロード殿下、お忙しいところ申し訳ありません。」
「いや、今回はクリストファーが迷惑をかけたのだ。ご令嬢を危険に晒してしまい、申し訳ない。」
「アリアナも、もう少し上手に誤魔化せれば良かったんだよなぁ。」
と横からエリックが口を出す。
「エリック、お前は口を閉ざしていなさい。」
「やだね。」
相変わらずの親子のやり取りだ。公爵の家族は皆仲が良い。
「ところで公爵、今日の事件の事は、聞いているか?」
「報告書は読ませていただきました。」
「防御魔法の件はどう思う?」
公爵は眉をしかめて、ため息をつく。
「アリアナでしょう。間違いなく。」
私も肯く。
「隣国のレオンハルトにアリアナの魔法力を知られてしまった可能性がある。」
「やはりそう思われますか。私も危惧していたのですが。」
「あの様な状況であれば、とっさに魔法を使う事は致し方ないだろう。アリアナも気を付けてはいたはずだが。」
そう、アリアナが怪我をしなかった事が大事だ。
正直、クリストファーは少しぐらい怪我をして、学習すると良いと思うが。
「ともかく、アリアナに今日の事故について、話が聞きたい。」
「承知いたしました。」
「レオンハルトにアリアナの力が知れたのであれば、彼がアリアナを手に入れようと画策するであろう。十分注意してくれ。」
「注意って、あのアリアナだぞ。どう注意するんだ?人の注意なんか、素直に聞かないだろう?基本、お人好しの天然の人たらしだ。レオンハルトが寄って来ても、拒む事はしないと思うぞ。」
エリックが口を挟む。
その言葉に、イラッとする。
エリックは頭を掻きながら言う。
「賢いはずなのに、肝心なところが抜けていたり、考える事が斜め上過ぎたりで、掴み所がないんだよなぁ。まあ、男が近付いて来ても、婚約者がいるから、必要以上は親しくしてない様だが。俺がアカデミーにいた時なら、監視できたのに。」
私もどうしたものかと思案していたのだが、婚約者のくだりで、腹立たしくなる。クリストファーの婚約者である事か、アリアナから男達を遠ざけているのは確かだ。だが、そのせいで私が表立って動く訳にはいかない。
「アカデミーを辞めさせ、魔法師団て保護するか。彼女は魔法師団に入る資格が十分ある。」
私が考え浮かぶ、一番安全な手である。
それに魔法師団に入ってくれるのであれば、毎日彼女と会う事が出来る。
「それは王妃様がお許しにならないのでは?ただでさえここの所、クリストファー殿下がカーラ嬢に入れ込んでいらっしゃるので、王妃陛下はご心配されていますから。」
公爵が思案顔をしている。
王妃もアリアナの事が大変気に入っている。クリストファーを任せられるのはアリアナ以外考えられないと思っている様で、時々アリアナを呼び出している。
「クリストファーも早く婚約解消すれば良いものを。」
つい、本音が出た。クリストファーがカーラに入れ込んでいる今なら、婚約解消を簡単に進める事が出来るだろう。
「殿下、私の自室とはいえ、お言葉は慎重になさって下さい。」
「そなたも知っているだろう。私がアリアナを欲している事を。」
「ありがたいお言葉ですが、まだ時期ではありませぬ。」
そう、公爵は私の味方である。
私の後ろ盾となる事を申し出てくれている。
まだ、表だってはいないが、私と第2王子の間でどちらが王太子になるかと、派閥が出来つつある。
公爵家は、息子は私の側近、娘はクリストファーの婚約者と中立派だ。
しかしクリストファーが余りにも無能である為、見切りを付けたのだった。そして、アリアナとクリストファーとの婚約解消に向けて動き出している。
公とは、婚約解消が成された暁には、私とアリアナの結婚を承諾すると約束を取り付けた。
その時、執務室の奥からノックの音が聞こえた。
「お父様、アリアナです。入ってもよろしいですか?」
「ああ、入りなさい。」
「失礼いたします。」
アリアナが着いたようだ。
お読みいただき、ありがとうございました。
後半、最後の見直しをしています。明日には投稿出来ると思います。
アリアナとクロードの出会いも仕上げに取り掛かっています。
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