表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

…………………少しぐらい、格好つけたかったよなっっっ⁉︎


本日はここまで。次回更新をお楽しみに‼︎







取り敢えず、テオドール()を捕縛するのをトータ達は諦めたらしい。



俺が強いのと、勇者の真実が衝撃的すぎたらしい。

加えて、下手に本当の勇者やら偽物勇者やらを話したら……色んな国に潰される可能性がある……というのが、ジュディの話だった。


『それはそうでしょう。ずっと勇者アルドが本物だと思ってたんです。だけど違ったとなれば……今まで勇者アルドを国賓として歓迎した国などの面目丸潰れです。絶対、政治的な問題やら面倒な問題やらが起きます』


こうして、俺のことは何も見なかった、何も聞こえなかった……と、触れる神に祟りなしでいくことになった。










「テオ、早く‼︎」



楽しげに俺の手を引き、王都を進むアイシャ。

換金を終え、商業ギルドを後にした俺達は、服屋でアイシャに数着見繕って貰ってから、王都でも浮かない程度の服に着替えて……当初の予定通り王都を散策していた。

まぁ……あんまりちゃんと見たことがなかったから、結構楽しみだけどさ。

だけど、だ。



…………………お前、さっきまでスキンシップ云々で照れてたのに……すっげぇ普通じゃね?


俺、今だに照れくさいんですけど?



俺はなんか、ちょっと負けた気分になる。

…………こっちばっかり照れてるのは、狡いだろ……。


「どーしたのじゃ?」


アイシャはこてんっと首を傾げて聞いてくる。

………なんですかねぇ、この平常運転感。

なんか、俺ばっかり意識してるみたいでムカつく。

………ちょっとムッとしながら、俺は彼女の肩を抱き引き寄せた。

さっきのお返し……とばかりに彼女の耳元に唇を近づける。

ついでに、微かに触れる程度にキスをしてやった。


「………………ふへっ⁉︎」

「俺ばっかりドキドキしてて、狡くね?」

「っっっ⁉︎」


ボンッ‼︎という効果音が似合いそうなほどに、彼女の顔が一気に真っ赤になる。

目は涙目だし……なんか「ふみゅふみゅ」猫みたいな鳴き声を漏らしてるし……。

……………………あれ?

………照れてる…?


「わ、妾だって……恥ずかしくない、訳じゃな……頑張って……たん、だもんっ……‼︎」

「え?」

「馬鹿テオぉ……‼︎」


…………顔を真っ赤にして、俺を睨むように上目遣いをするアイシャ。

………でも、我慢できなくなったように頬を膨らませて……俺の肩に額をグリグリと擦り付けて。

………………俺は思わず足を止めて固まってしまった。



……………あざと(?)可愛いな……こいつ……⁉︎



俺はグリグリと擦り寄るアイシャをジーッと観察する。

……………なんか……胸が熱くなるんだけど……。


「…………………なぁ。ウチの店の前で止めてくれねぇかい。胸焼けするんだが」


声をかけられて振り返ると、そこにいたのは出店のおっさんで。

…………俺とアイシャは、ドキドキしてたのを忘れてピキッと固まる。


いや、だってな?



スキンヘッドの顔面凶器(強面)が犬エプロンつけて、なんかお菓子らしきモノ(甘い匂いがするからそう思った)を売ってるんだよ。



えっぐっっっ‼︎



「え?おっさん、出店やって売れてんの?顔面の所為で売れてないんじゃねぇの?」



俺の言葉に、周りにいた人々が「ヒィィィィィィィィィ⁉︎」やら「あいつ、言いやがったぁぁぁぁ⁉︎」だの反応する。

…………周りの奴らも思ってたんかい。

ってか、なんか冒険者らしき奴らの方が顔色悪いな?

おっさんは大きく目を見開いて……スッと目を細める。

そして、静かに問うた。


「…………お前……オレを誰だか知らねぇのか?」

「知らねぇし、本当のことを言っただけだ」


おっさんはゆっくりと歩み寄ってくる。

………あー……このおっさん、ただ者じゃなかった感じか?

動きが滑らかだし、重心移動が上手い。

筋肉のつき方からして……何かしらの武器を持っていた。

だけど、右足を庇うような歩き方……。

冒険者らしき奴らの反応を省みるに……元冒険者か。

俺はアイシャを隠すように立ち、おっさんと真っ直ぐ向き合う。

すると……。



ガシッと肩を掴まれた。



…………………いてぇ。


「そーなんだよぉぉぉぉぉっ‼︎クレープは美味いのに、オレの顔の所為で売れねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉおっっっ‼︎」

「いや、売り手雇えよ」

「オレの顔が怖すぎて売り手が怯えるんだよぉぉぉぉぉぉ‼︎」

「どんまい」


俺はおっさんの肩に手を置いて慰める。

おっさんは泣き笑うなんて器用なことをしながら、自己紹介した。


「いやぁ、すまねぇな‼︎オレはニルギス。怪我をして引退した元冒険者だ」

「俺はテオ。こっちはアイシャだ」

「………妾、テオのコミュニケーション能力に驚きなんじゃけど……アイシャじゃ。よろしくのぅ」

「いやぁ、オレに怯えることなく堂々と対面で話す奴は少ねぇから嬉しいぜ」

「顔、恐いもんな。あんた」


サラッと言うが、おっさんは気にした様子もなく「ガハハハッ‼︎」と豪快に笑う。

見た目の割に、朗らかな性格らしい。


「ちなみに、くれーぷってなんだ?」

「オレが冒険者として色んなところで仕事してた時に食ったデザートなんだけどな。かなり美味いし、食べ歩きができるんだ。食べてみるか?」

「うむうむ。妾、甘い物に目がないから食べたいのじゃ‼︎」


俺の後ろに隠れていたアイシャはぴょこっと前に乗り出して、二人分の金を出しながらおっさんにクレープを頼む。

すると、おっさんはギョッとしながら俺を見た。


「……………なんだよ」

「……………女に払わせるのか……?」

「っっっ⁉︎」


そう言われて、俺は衝撃を受けた。

凄まじく今更ながら言えば……俺って金持ってねぇじゃん。

勇者パーティーにいた頃は、聖女が金の管理してたし。

追放されててからは、身一つ(聖剣はあったけど)で。

そこら辺の川から水を入手したり、身体を洗ったり……動物を狩ったり、木を使って火をつけたりしてたんだっけ……。

……………………………つまり、サバイバル生活をしてたため、ここ暫く金という俗物的なものと離れていた訳で。

そういえば……さっきの服屋でも店員の顔が一瞬、固まったのって……同じことを思われてた?


…………今の状況ってアイシャのヒモじゃね?


……………ヤバい……ヤツだ。

俺の戦慄に気づかないアイシャは、首を傾げて俺を見つめる。

そして、不思議そうに聞いてきた。


「テオは妾の屋敷で畑仕事をしてくれとるから、給料としてお金を与えようか?テオが好きに使えるお金があった方がよかろう?」

「…………いや、でも……住む場所とか、食事とかはアイシャが提供してくれてる訳で……そもそも、そんなに負担がないからアレぐらいで給料もらうのは……」

「…………ふむ?気にしなくても良いけどのぅ?」


そうアイシャは言ってくれるけど……おっさんは視線で訴えてくる。


〝養われてるのは、アウトだと思う〟ーーと。


…………いや、あのさ。

別に性差別とかじゃないけどさ。

アイシャは女の子で、俺は男で。

実質、これはデートな訳で。



…………………少しぐらい、格好つけたかったよなっっっ⁉︎



…………これは至急、金を稼ぐ手段を確立せねば……。


「テオ、あーん」

「むぐっ」


モグモグモグ……。


「えっ⁉︎美味っ⁉︎」

「じゃよなぁ〜。妾もびっくりなのじゃ〜」


ハッと我に返ると、目の前には紙に包まれたクレープというものを俺に差し出すアイシャ。

俺はそれを受け取って、もう一口食べた。


「へぇ……これ、果物が入ってるのか」

「うむ‼︎妾のは苺で、テオのは南国のフルーツでバナナというらしいのじゃ‼︎」

「アイシャ、そっちも味見させてくれ」

「テオのも味見させて‼︎」


互いのクレープを食べてみる。

あぁ、美味いな……苺も合う。


「バナナも美味しい〜」

「苺も美味いぞ」


互いにモグモグと食べていたら……いつの間にか、周りにいる人々の視線が集中していた。

…………………ん?


「おっちゃん、こっちにもクレープ一つ‼︎」

「あ、私も‼︎」

「クレープ二つ頂戴‼︎」

「お、おぅ⁉︎」


………………どうやら、俺達が食べてたのが宣伝効果になったらしい。

かなりの賑わいになってきて……俺らは互いに顔を見合わせて、苦笑しながらその場を後にした。






そうして……王都散策を目一杯楽しんでから、アイシャの屋敷に帰えるのだったーーーーー。












その後。

おっちゃんの出店は王都で一、二を争う人気店になったとか、ならなかったとか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ