なんか周りが言ってたけど……テンパってた俺はそれどころじゃなかった。
どうやら、俺を襲ってきた奴らは商業ギルドと専属契約を結んでいる冒険者パーティーらしい。
パーティー名は《正義の剣閃》。
仕事内容は、有事の際の対応及び不届き者の排除など。
まぁ、要するに……商業ギルドの護衛みたいなモノだ。
裏手にある応接室の一室で、リーダである戦士のトータから詳しい話を聞いた俺達は……呆れたような溜息を吐いた。
「…………勇者アルドがパーティーメンバーだった斥候テオドールが聖剣を奪って逃げたと公言し、それから結構時間が経つが今だに見つからず。色んな国の奴らがこぞってテオドールという名前の奴を探しては捕えてるってことなのか………」
「……………そうだ……」
「…………はぁ……面倒くせぇ……」
もういっそ、聖剣のヤツ、あの野郎のモンになっちゃえばいいのに……。
なんて思ったら、ふわっと聖剣(人型)が勝手に顕現した。
『ねぇ、テオ様⁉︎酷くない⁉︎捨てるんですかっ⁉︎あんなに苦楽を共にしてきたのにっ⁉︎』
「うるせぇ‼︎テメェの所為で襲われてんだろーがっっっ‼︎つーか、お前は俺の彼女かっっっ‼︎」
『だってテオ様が偽物勇者君のモノになっちゃえばいいとか思うからぁぁぁ‼︎』
「人の心を勝手に読んでんじゃねぇよ‼︎」
俺は聖剣をポイっと投げる。
だけど、シュタッと華麗に着地して……聖剣はそのまま『おいおい〜』と嘘泣きして……。
…………うわぁ、うざぁ。
『もうダーリンったら〜』
『ハニー‼︎』
またもや勝手に顕現した魔剣に慰められる聖剣。
………あぁ、うん。
放置しようっと。
「ちょっと待って下さい」
「あ?」
さっきまで敵意マシマシだったジュディ(さんをつける義理はねぇ)は、困惑した顔で俺達を見る。
そして、魔剣に抱き締められてだらしない顔をしている聖剣を指差した。
「………い、いきなり現れたことも色々とツッコミを入れたいのですが……に、偽物勇者とは……」
「ふむ。こちらの事情も話さなくてはのぅ」
アイシャが俺の代わりに、話してくれる。
勇者召喚で俺とアルドが召喚され、顔が良いアルドが勇者となったこと。
それでも魔物に自分達が産まれた村を滅ぼされ……幼馴染であったがため、共に旅をしてきたこと。
だけど、最後の巡礼の地で祈祷をする前にパーティーを追放されたこと。
その追放理由は、俺がいるとパーティーメンバーの女達とエッチなことができないからで。
実際には、俺の方が勇者だったということ。
「という訳で……勇者だったけど偽物勇者に追放されたって訳だ」
『………………………………』
話を聞き終えたジュディ達は絶句と言わんばかりの顔で固まっている。
まぁ、そりゃそうだよな。
「……………え?勇者って顔で選ぶのか……?」
「アンタより顔が良いって……どんだけだよ……」
「……………残酷な世界だ……」
トーマと拳闘士サイ、僧侶リッゾが呻く。
どっかで聞いたセリフ……ってか。
…………………なんか、泣いてね?こいつら。
「…………それが何故、アイシャさんと暮らすことに?」
「拾ってもらったからだけど?おかげで俺は立派な農夫(ここ最近、畜産も始めることになりました)だ」
「……………ゆ、勇者が農夫……」
「…………色々と間違ってますね……」
ジュディ、斥候のダミュ、魔法使いのエデナも頭を抱えている。
俺は頭を掻きながら、答えた。
「とゆー訳で。俺は素直にアイツの前に行く気はない。連れて行くって言うなら、本気で抵抗するが?」
スッと目を細め、殺気を放つ。
目の前にいる奴らはビクッと震え出すが、俺は威圧を解かない。
…………だけど……。
「また疲れる顔してるのぅ」
ふにょん。
……………アイシャが超絶弱々しい力で俺の両頬を引っ張る(伸びてないけど)。
俺は威圧を解いて、息を吐いた。
「だって……こいつら、一応襲ってきた側だからな?俺と敵対したら勝てないって本能で分からせた方が楽だろ」
「お主は獣か」
「魔物は殺気をかけまくると動きが鈍くなるから楽なんだよ。一人の時、五十匹くらい魔物に囲まれた時とかいい対処方法だぞ」
「……………テオの闇が垣間見えたぞ」
アイシャは俺の頭を抱えて、優しく撫でる。
………あの……多分慰めてくれてるんだろうけどな……?
アイシャ……また、顔が胸に埋まる………。
「…………………羨ましい……」
「…………バ、馬鹿ップル……」
「……………目の前でイチャつきやがって……」
男勢が羨ましそうに呻いてるが……まぁ、うん。
確かにこれは男にとったら、一大事だよな。
「アイシャ……苦しい……」
「む?あぁ、すまんのぅ」
アイシャは俺の頭を離して、頭を撫でてから隣に座り直す。
…………ふぅ……ふわふわアイシャはヤバいな。
俺の理性がパァンッ‼︎ってなりそうになる。
「………………と、とにかく……これからお二人はどうするつもりで?」
俺達を見ていたジュディは、何故か顔を赤くしながら聞いてくる。
俺は面倒になりながら答えた。
「どうって……どうもしねぇよ。俺はアイシャんところでほのぼのと生きていくだけ。偽物勇者が何やってようが関係ない」
まぁ、本当は魔王の味方だけど。
偽物勇者が来たら、本気で潰すつもりだけど。
そんな物騒なことを考えている俺の隣でアイシャは……ゆっくりと俺の腕に抱きついてきた。
「妾も面倒ごとには巻き込まれたくないのぅ。にい様達には反抗しまくるが」
魔王のことは言えないからか、アイシャはオブラートに包んでそう告げる。
………そして、ちょっと頼りなく苦笑した。
「………そんなことよりも……テオとの楽しい生活が……これからも続いて欲しいのじゃ……」
………………ちょっと、止めろよ。
そんな悲しげに言うの。
俺は溜息を吐きながら、アイシャの手の甲を撫でた。
「………まぁ……俺が続かせるから……そんな不安げな声出すなよ」
「……………本当?」
「あぁ。任せろ」
「………………うん、信じてる」
アイシャは俺の肩に頭を預ける。
俺もそんな彼女の頭に頬を擦り寄せる。
………………うわぁ……めっちゃ良い匂い。
甘い花のような、でもくどくない匂いが……。
「え?なんなの?この二人はイチャつかなきゃいけない呪いでもかかってんの?」
「はわ、はわわわわわっ‼︎」
ダミュが「ケッ」と悪態をつき、エデナは顔を真っ赤にして謎言語を発する。
…………………というか……。
「え?俺らっていちゃついてるの?」
「え?妾らってイチャついてるかぇ?」
思わず聞くと、その場にいた奴らの顔が渋くなる。
聖剣と魔剣はケラケラと笑いながら、実況し出した。
『おぉぉっと、これまた無自覚イチャつきのようですよ‼︎どう思いますか、ハニー⁉︎』
『これはきっとアレですね。無意識の内に私達の真似をしておりますね。いやん、たっのしぃ〜(笑)』
『アイシャ様は愛され体質ですが、テオ様には効きにくいですからね‼︎つまり、テオ様はテオ様の意思でアイシャ様とイチャついてるという訳です‼︎』
『ちなみに、ここ最近我々に負けず劣らずのスキンシップになってきおりますが……二人は気づいておられないようです。意識しての私達よりタチが悪いですね(笑)』
…………………え?
………………聖剣と魔剣の……真似?
…………………そんな……スキンシップしてた、か………?
俺は記憶を探る。
記憶の中の俺達は確かにーーーー。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ‼︎」
「ふみゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ‼︎」
俺達は互いに顔を真っ赤にして慌てて離れる。
ヤッバイ‼︎顔が、尋常じゃなく熱い‼︎
死ぬ‼︎オーバーヒートする‼︎
いつからだ⁉︎いつから俺達はあんなにスキンシップを取るようになってた⁉︎
「セーフ⁉︎まだセーフかっっ⁉︎」
「あやつらのように〝ご飯あ〜ん♡〟しとらんからセーフじゃろ⁉︎」
「待って‼︎どっからがアウトだ⁉︎膝枕はセーフ⁉︎」
「そもそも何がセーフでアウトじゃ⁉︎」
「分からん‼︎」
互いにあわあわして、何を口走ってるのか分からなくてなってるし。
ヤバい、頭がおかしくなってる。
こっわっ‼︎無意識に聖剣達の真似してたとかこっわっ‼︎
俺、女性耐性なかったよな⁉︎
よく、今までサラッとスキンシップできてたな⁉︎
はっずっっっ‼︎
「……………………確かにこれは……魔王云々がよくなるでしょうね……」
「…………羨ましいっ……‼︎」
「……………(グスッ)」
「…………結婚したい……」
「ケッ」
「ふわわ、はわわわわわわわ⁉︎」
なんか周りが言ってたけど……テンパってた俺はそれどころじゃなかった。




