第76話 下積み冒険者は充実感を感じる
ドワ子にさっき子どもにいろいろ質問され、その後あの冒険者が首を突っ込んできてたところを住民が庇ってくれたことを夕食を食べながら話をした。夕食は住民の奥様方が作ってくれているため味もしっかりしたものだ。
「住民はちゃんと見てる」
「そうですね。ああやって冒険者の活動で直接感謝されたのは初めてですよ。二人のおかげだって」
「そう」
ドワ子も返事はそっけないが嬉しそうだ。
冒険者が魔物を討伐することで魔物の勢力を留め、住民を守っている。それはわかっていたつもりだったがこの護衛で住民に感謝され初めて私が人の役にたっているのだなと実感した。
こんな非常時に不謹慎だが私は充実感を覚えていた。
この1年磨いてきた私の実力が認められたのだ。
日本にいたとき仕事を進めていくなかで感謝されたりすることもあったがそれは仕事の肩代わりだったり、負担を軽くするだけのもので感謝といってもそれなりのものであった。
それになにより日本では私の代わりなどいくらでもいたがここでは必要とされている。
命を対価としてかけてはいるが、いやかけているからこそ私は充実した思いをおぼえるのだった。
夕食の後、冒険者は集まって打ち合わせを行った。
先ほどのことでドワ子はメガネに報告したらしく応援がもらえ人数は6人に増えている。
夜間は冒険者1人と住民男性3人を1セットとし、2~3時間毎に交代、夜明けとともに手早く食事をとり出発することに決まった。
あのDランクの無鉄砲な冒険者が心配だが決定に従い夜営をすることになる。私の順番は2番目、夜10時から朝1時くらいまでだろう。
(あの冒険者がなにかしなければいいけどね)
ディクトよ、思っても口に出してはいけない。そういうのをフラグっていうんだよ。
毛布にくるまり目を閉じる。
(おやすみディクト、時間が近くなったら起こしてくれ)
(わかった。おやすみ)
ディクトに足音がすると起こされ、少しした時に先のもう1人のE冒険者がやってきたので交代をする。
「ずっと起きていたのか?」
「いいえ、歩いてくる音で起きましたよ」
「はぁ、俺、夜営なんてやったことないし、眠れるか心配だよ」
気持ちはわかるが寝ないと体がもたないだろう。
「冒険者は眠るのも仕事だって言いますよ」
「はぁ、そうだな。よろしく頼む」
さっきはあの無鉄砲なDランク冒険者に乗せられてゴブリンたちに突っ込んでしまっただけで根は悪い人ではなさそうだ。
少し、安心して焚き火の前へと向かう。




