第93話 下積み冒険者は大群に立ち向かう5
心の余裕のなくなった私は注意力も散漫で無意識に足を動かし住民に付いていく。
頭に浮かぶのは槍使いの少年の最後の笑みだ。
無理してあれだけ犠牲を出してまで足止めをしたのは間違いじゃなかったのだろうか。
さっきの家族たちみたいな大切な人を残したした冒険者を犠牲にして提案した私がノコノコ生き残ってしまっている。
突然ドワ子に肩を揺さぶられる。
「気持ちはわかるけどしっかりして! もう蟻がやってくる」
そうだ、彼らは皆家族を守ろうとしてあの場に残り犠牲になったのだ。彼らの分まで戦わなくては。
やがて先頭の蟻の姿が見え、どんどんとその見える数は増えていく。
住民の中には振り返ってそれを見てしまい悲鳴をあげる人たちも現れる。
「なんだあの数は!」
「うわぁぁ」
「もうだめだ!」
「振り返っている暇はありません! 諦めないで一刻も早くここを離れるんです!」
メガネが必死に声を出して避難を急かせる。
私も蟻の列に目を向ける。
さっきまでもずっと見ていたはずなのにさっきまでとは全然威圧感が違うように感じる。
さっきまでは目の前のことに必死でいざとなれば逃げるつもりだったが今度は違う。私たちの後ろには戦えない住民がいるのだ。逃げることはできない。
私は頭を振って頬を叩く。
いや、逃げることができないじゃない。彼らの代わりにあの人たちを守るのだ。
逃げない!
付き添いのギルド職員以外の全ての冒険者が最後尾に集まる。
「あの蟻の列に魔法を叩きつけてその足を止めます。魔法使いはこの場に私を含めて4名ですが、それなりの規模の魔法が必要なのでこの役割をこなせるのは私と残りの3人の二交代で打ち込んでいきます。しかし打ち漏らしがどんどんとこちらに迫ってくるでしょう。それを残りの全員で対応します。もう応援が来てもおかしくないはずです。皆さんも諦めないでください!」
「「「おう!」」」
蟻たちがどんどんと迫ってくる。
対する私たち冒険者は前衛が一列に並び、その後ろに弓使いや魔法使いが控えている。
メガネが杖を手に集中して頭上に巨大な火球を出現させる
「行きますよ」
そして蟻たちの列に向けて火球を放つ。
火球は蟻たちへと飛んで行き、地面に激突するとともに大きな爆発を起こす。
距離のある私たちの側まで爆風のやってくる凄い威力だ。
これなら直撃した蟻たちはひとたまりもないだろう。
だが、この蟻の列を止めるには至るはずもない。
爆風が吹き荒れ土煙が立ち上がるそのなかを突き抜けてきた蟻たちが姿を表し、私たちに襲いかかるのだった。




