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EP10 俺、吸血鬼と遭遇する。その11

 吸血鬼を筆頭とした不死者は人畜有害な存在であることは言うまでもない。


 まあ、一部の例外を除けばの話だが――。


 で、特に吸血鬼を倒すと多額の賞金が得られるって聞く。


 そんなワケだ、吸血鬼の真祖であるグリーネは、トンでもない破格の賞金首なんだろうなぁ……。


 さて。


「ぞろぞろとやって来ましたね、吸血鬼ハンターが……。」


「あ、ああ、こんなにいたんじゃ対処するのがキツい展開だな。」


 気づけば、俺、メリッサ、アシュトンは、オロバスの仲間達――吸血鬼ハンター達に包囲されている。


 その数は十人ほどだが、未熟者の魔女である俺にとっては驚異的な人数である。


 むう、このままじゃ老師ウサエルの家の中にいるグリーネを庇いきれなくなりそうだぜ!


「女ァァァ~~~! その家の中に吸血鬼がいるんだろう? 嘘はいけないなァァァ~~~!」


「というかコイツは吸血鬼の仲間だと思う。」


「じゃあ、吸血鬼の齧られて……可哀想に……。」


「吸血鬼に血を吸われたモノは、血を吸った吸血鬼の支配下に置かれると聞く。」


「おい、勝手なことを言うな! 俺のどこが吸血鬼なんだよ、ふざけるな!」


 コ、コイツら、勝手に話を進めやがって……。


 それに俺はグリーネを庇う仲間の吸血鬼だと思われているようだ。


「よし、この女も一緒に……。」


「「「おうッ!!」」」


「お、お前ら、まさか――ッ!」


 ギャキィッ――と、吸血鬼ハンター達は得物を手にする!


 ちょ、俺も滅殺する標的になったワケェ!? じょ、冗談じゃない!


「聖なる銀の弾丸で一瞬で楽にしてやろう!」


「わ、あの男、銃を持っている……ちょ、やめろ!」


「キョウ様、危ないっ!」


 あ、あれぇ? 銀が苦手なのは狼男じゃ……ソ、それは今はどうでもいい話である。


 吸血鬼ハンターのひとりが得物である火縄銃をぶっ放す!


「ヒュー……あと数センチ横にいたら貫通した弾丸が、俺にあたるところだったぜ!」


「う、ううう、危なかったですね、キョウ様! そ、それより左胸を撃たれました……心臓に穴が!」


「メリッサ、大丈夫か!」


「はい、大丈夫です! 後で左胸の穴と心臓を治してくださいね、キョウ様!」


 うう、メリッサが俺の目の前に庇うように立ち盾となってくれたおかげで吸血鬼ハンターのひとりがぶっ放した火縄銃の弾丸を防ぐことができたけど、弾丸はメリッサの左胸を貫通し、心臓を貫き背中から飛び出し、老師ウサエルの家の出入り口の扉に突き刺さる!


 むうう、火縄銃とはいえ、一発の威力だけは凄いなぁ……。


 メリッサの身体を簡単に撃ち貫いたワケだし……ふ、ふう、ほんの数センチ横にいたら、貫通した弾丸が俺の身体も当たっていたかもしれない!


 俺はメリッサと違って弾丸が当たった場合、重症は免れないぞ!


「あ、あの眼鏡の女は元気そうだぞ!?」


「何故、死なん……ジャンの持っている拳銃の弾丸が心臓を撃ち貫いたなはずだぞ!?」


「き、きっと、あの眼鏡も吸血鬼だ!」


「あ、あのぉ、私はゾンビなんですけど……。」


「ええい、黙れっ! そして滅殺だァァァ~~~!」


 メリッサは吸血鬼ではなくてゾンビですよ、皆さん。


 だから銃弾が左胸を撃ち貫いても平然としていられるんだ。


 そ、そんなことはともかく、吸血鬼ハンターが三人、同時に襲いかかってくる!


 で、コイツらの得物は長剣、短剣……そして片手斧!


 接近戦で俺やメリッサを始末しようと目論んでいるようだ!


「おっと、そうはさせないぞ!」


 シャッ――と、赤い影が俺の目の前の飛び出してくる!


 そして襲いかかってきた三人の吸血鬼ハンターを軽々と薙ぎ払う!


「ああ、お前はグリーネ! だ、誰が解放したんだ!」


「フォッフォッフォ、わしじゃよ。」


「老師ウサエル!」


「大丈夫じゃ。此奴はわしとの盟約を守ると誓ったからのう。」


「盟約? う、うむ、まあ、なんだかんだと助かったぜ……。」


 赤い影の正体はグリーネだ。


 どんな盟約を交わしたのかは定かだけど、そんなグリーネを解放したのは老師ウサエルのようだ。


「さて、三人ほど始末したぞ。クククク……。」


「「「ヒイイイッ!!」」」


 側にいる俺も思わずゾッとしてしてしまうような般若の形相で吸血鬼ハンター達を睨むグリーネの白くて細い両手が、二倍……三倍は巨大化している。


 ふ、ふええ、本気で吸血鬼ハンター達を八つ裂きにする気なのか!?


 と、とにかく、血に飢えた野獣……いや、吸血鬼の本性を垣間見た気がするぜ。

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