EP10 俺、吸血鬼と遭遇する。その10
「さあ、次はお嬢さんが撃たれる番だよ、キヒヒヒ……。」
「うええ、火縄式の拳銃を何丁持っているんだよ、お前!」
「十丁はあるぞ、クケケケ!」
「む、むう……だけど、アシュトンは平気だぞ、あの程度じゃね。」
「はい、元気爆発ですぞー!」
「な、なんだと!?」
オロバスって野郎は鬼畜だ!
幼馴染でもあるアシュトンのドテ腹に躊躇することなく火縄式の拳銃の銃弾を撃ち込むし……。
だけど、アシュトンはあの程度じゃ再起不能にはならない。
今のアシュトンは不死者の一種である動く骸骨だ。
身につけている全身甲冑の下に隠された彼の身体は、肉が一切、存在しないスカスカの状態だし、オマケに不死者は、たった一発の銃弾ごときで動けなくなるほどヤワな存在ではない!
「オロバス君! 酷いじゃないか! あ~あ、気に入っている鎧なのに穴を開けやがって! さて、俺の身体が、こんな感じじゃなかったら、今頃、涅槃へ旅立つところだったぞ!」
「ウ、ウギャアアア、骸骨……骸骨ゥゥゥ~~~!」
ギャキィと全身甲冑の兜のバイザーを開くアシュトンは、現在に自分の姿の〝一部〟をオロバスに見せつける。
動く骸骨という現在の禍々しい姿を――。
「ヒ、ヒギギ……お、お前も吸血鬼と同じ不死者と化したのか!? うお、何をするっ……む、むうう、私の拳銃が!」
と、動く骸骨という異形のアシュトンの姿を見て引っくり返ったオロバスに対し、今だ――とばかりにメリッサが飛びかかり火縄式の拳銃をすべて取りあげるのだった。
「ふむふむ、本物はどうやらアシュトン君を撃ったモノだけみたいですね。残りは水鉄砲みたいです。」
「その水鉄砲の中身は、きっと聖水の筈よ。大方、近くのラーティアナ教かゼノビアス教の寺院から提供してもらった聖水のはずよ。」
と、ウェスタが老師ウサエルの家の中から出てきて、そんな説明を――。
「ん、ウェスタさん……水鉄砲の中身は聖水だって!? そ、そうか、なるほど! 聖水は吸血鬼を退く効果があるしな……わお、ニンニクや十字架なんかも持ってる!」
へえ、この世界でも通用するようだな、俺が知っている吸血鬼撃退アイテムが……。
「ふう……聖水、それに十字架? やれやれ、私が永い眠りから覚める度に弱点だってアイテムが増えている傾向があるんですけど……。」
と、そんなグリーネの溜息混じりの文句が聞こえてくる。
「じゃ、弱点じゃないのか!?」
「当然! 私を屈服させたかったら腕っぷしで勝負と洒落込むべきだ。」
「は、はあ、やっぱり実力行使が一番なのね……。」
自分を屈服させなかったら腕っぷしで勝負を――と、グリーネは言っているけど、普通の人間じゃ返り討ちに遭ってしまうことは言うまでもないかな。
ま、とにかく、この世界の吸血鬼には、聖水や十字架は効果はなく最終的には実力行使で打ち負かす他ないってヤツだな。
「オロバス、武器を奪われたようだな。」
「まったく、我々、吸血鬼ハンターの面汚しだな、テメェはよォォォ~~~!」
「仲間だと!? やっぱりひとりじゃないのか……。」
当然だよなぁ、オロバスって野郎は、たったひとりでここへ来るワケがないと思っていたんだが、やっぱりビンゴだったのか――。




