EP10 俺、吸血鬼と遭遇する。その9
ハイドラベルデ城に住まう吸血鬼ことグリーネは、兎天原に厄災をもたらすとされる悪魔のような存在だと思われているようだ。
彼女の姿を描いた絵だとされるモノは、どれも例外なく物々しく、そして冒涜的な姿で描かれている。
俺も一度でいいから拝見してみたもんだ。
実物とどれだけ違いがあるのか確認も兼ねて――。
「キヒヒヒ、こんにちは、お嬢さん。」
「お、おう……つーか、アンタは何しにここへ?」
老師ウサエルの家の出入り口の扉を俺は意を決して開ける……ん、青白い顔をした痩せこけた背の高い男が立っているぞ。
コイツが吸血鬼ハンターなのか!?
むう、ニヤニヤと青白い血行の良くない顔に嫌味な笑みを浮かべている……イライラするなぁ、こういう輩は!
「お嬢さん、アナタは馬鹿ですか?」
「む、むう、馬鹿だと!」
「おっと、失礼! 私がここへやって来た理由が理解できていなそうなんでね、クククク……。」
「ここへ来た理由? は、それくらいわかっているさ。吸血鬼を退治しに……だろう?」
「へえ、わかっているじゃない! 少しは見直したかなぁ、ドゥッフッフ……。」
くうう、嫌味な男だ!
ぶん殴りたい……だが、ここは我慢だ。
俺は紳士……いや、淑女だ。
嫌な野郎であっても熱くならず冷静に対応しなくちゃいけない!
「おっとっと、名乗っていませんでしたねぇ。私の名前はオロバス。王立魔術師協会に属す吸血鬼ハンターです、キヒヒヒ……。」
「むう、オロバスだと!? お前、あのオロバスか! しばらく見ないうちに随分と身形が変わったモンだなぁ……ああ、ワケあって、この鎧を脱げないが、俺だよ、俺、幼馴染のアシュトンだ。」
「アシュトンですと!? その声は間違いないな。」
「え、あの男と知り合いなワケ?」
「ですよー。一応、幼馴染に間柄でしてねぇ。」
「ふーん……っと、吸血鬼を探しに来たらしいな。でも、ここにはいないぜ。」
「ちょ、キョウ様!?」
「ほほう、それは残念。いやいや、吸血鬼を捕らえたモノがいるという話を聞きましてねぇ。確か、ここら辺の家だと……ホントのことを言っています? 今なら引き渡す際に何もしませんよ、クククク。」
「とにかく、ここにはいないから帰ってくれ!」
むう、俺はグリーネを庇ったワケじゃない。
だけど、結果的にそうなってしまったな……。
でも、それには理由がある……オロバスって男から〝何か〟嫌なモノを感じてしまったからである。
だからグリーネを素直に引き渡す気になれないワケだ。
「んんん~……眼が浮いていますよ。嘘を吐いていませんか?」
「な、何を言う! 俺は嘘なんか……わ、銃っ!」
「コイツを見てまだ嘘を吐き通す気ですか、お嬢さん。」
「テ、テメェ!」
「オロバス、なんてモノを!」
む、むう、オロバスの血行の悪い土気色の右手には、火縄式の拳銃が握られている!
俺が本来いるべき世界では、過去の遺物的な銃ではあるが、この世界では最新鋭の武器だったな、火縄銃は――。
「そんな脅しには屈しないぞ!」
「あっそう? じゃあ、死んでください……1、2、3、パーン!」
「が、がああっ! う、撃たれたァァァ~~~!」
こ、この野郎、容赦なく幼馴染もあるアシュトンのドテ腹に火縄銃の銃口を押しつけると、その刹那、銃爪を引きやがった……な、なんて奴だ!




