EP10 俺、吸血鬼と遭遇する。その8
「吸血鬼ハンター……王立魔術師協会の連中かな?」
「王立魔術師協会?」
「ああ、兎天原の本拠地に活動している魔術師団体のひとつさ。確か、今はどうか知らないけど、昔はそこそこ有名な魔術師を輩出していた気がする。」
「ヒュー……流石はババア! 昔のことをよく……ごぶばっ!」
「デュオニス君、黙ってて……ま、とにかく、面倒くさい連中がやって来たわね。」
吸血鬼ハンターねぇ。
で、ソイツらが属す王立魔術協会かぁ……。
確かに面倒くさそうな連中がやって来たな。
そんな連中の目的は言うまでもなく――。
「私が目覚めたことに勘づいたな、下郎共!」
「むう、やっぱり、アンタが狙いなワケね……。」
「まあな! 私は敵が多くてな。やれやれだぜ!」
「やれやれだぜ……それは俺が言いたい台詞だよ!」
敵が多いだって!?
うーん、吸血鬼は危険な存在だし、駆除しなきゃいけないのはわかるけど、敵が多いとなると巻き込まれる可能性があるなぁ……。
「むう、さっきから気になっていたんだけど、今は空で太陽が燦々と輝いている昼間だけど、よく平気でいられるな……吸血鬼の弱点は太陽の光なんだろう?」
なんだかんだと、ずっと気になっていたんだ。
今の時刻は午後一時かそこらである。
太陽が天空で燦々と輝いている時間だし、オマケに今日は雲ひとつ見受けられない晴れ晴れとした空なんだよなぁ……っと、それはともかく、俺が知っている吸血鬼の弱点は、確か太陽の光だった筈だ!
それなのに何故……活動できるんだ、グリーネは!?
太陽光を浴びると吸血鬼は灰になってしまうんじゃないのかー!?
「太陽光が弱点だって? ハハハ、そんなワケがないだろう? 私はビーチで日焼けをしたいなぁと思っているくらい太陽が大好きなんだ。」
「そ、そうなんだ、意外だなぁ……。」
「――というか、アンタは吸血鬼の真祖だ。太陽光を浴びても平気なんだろう?」
「吸血鬼の真祖?」
「ケモニア大陸の全土に潜んでいる吸血鬼の原典は、その女なんだ。つまり原種の吸血鬼……元を正せば、吸血鬼はその女以外はいなかったというワケ。」
「え、そうなの? んー……時々、私の居城であるハイドラベルデ城へやって来る物好きな冒険者の血を美味しくいただいていたが、まさかそれで吸血鬼が増えてしまうとはなぁ!」
「む、むう、お前、軽い気持ちで……。」
「知らんかったのだ! 私が血を吸ったモノが、同じ吸血鬼になってしまうだなんて……。」
吸血鬼に襲われたモノも吸血鬼になるという設定が、俺が本来いるべき世界にあったな。
まあ、SFやホラー映画等の設定だけど、まさかケモニア大陸では現実のモノだとは……さ、流石はファンタジー世界だな。
「ん、扉を音が……来たか、吸血鬼ハンター!」
と、それはともかく、コンコンと俺達がいる老師ウサエルの家の出入り口の扉をノックする音が聞こえてくる――吸血鬼ハンターがやって来たのか!?
「よ、よし、俺は応対してみるぜ。」
「キョウ様、私も一緒に行きます。」
「では、俺は一緒に行きましょう。この村にやって来た王立魔術師協会の連中の中に知り合いがいるかもしれないので――。」
「アシュトン君は顔が広いなぁ。」
「ハッハッハ、まあね!」
ま、まあ、とにかく、メリッサとアシュトンと一緒に俺は老師ウサエルの家の出入り口の扉を開けてみるのだった。




