EP6 俺、異世界からやって来た仲間を得ます。その8
「わお、ここにいたのね。私の愛玩動物の白熊ちゃん~♪」
「コ、コラァ! 私はお前の愛玩動物なんかじゃないぞガウ!」
「いや、私がそう思った時点で愛玩動物なのよ!」
「うわあ、メチャクチャなことを言い出した!」
と、ボンネットをかぶったメスの獅子に跨った赤い派手な日傘を差したフリフリした衣装の女――アグリッピナ・マウソロスは、そんなメチャクチャなことを言い出すのだった。
まったく、なんだ、この派手な女は!
さて、そんなアグリッピナという女の外見年齢は見た感じでは二十歳くらいかな?
それに如何にもセレブな貴族の令嬢という感じの気品に満ちた容姿端麗な姿が、異性だけではなく同性からも注目を集めそうな魅力を放っている女性ってところだろうか?
「く、でかい胸だな!」
「お前が言うな、お前が!」
と、ついでにアグリッピナという女は、そんな文句を言うフレイヤに勝るとも劣らぬ巨乳の持ち主のようだ。
「ああ見てもアラフォーのおばさんなんですよ、キョウ様。」
「え、えええ、マジで!?」
「はい、間違いありません。」
「俺の耳にも聞こえたぜ。人間のメスってわからんものだなぁ……。」
え、見た目は二十歳くらいだけど、実はアラフォー――四十路前後だと!?
そう小声で説明するメリッサに対し、俺と兄貴は同時に苦笑する。
ちょっと信じられないって感じだしねぇ……。
「ねえ、今、アラフォーって言わなかった? アラフォーって!」
「うわああ、地獄耳! いいい、言ってませんよ、そんなことは!」
「あらそう? ならいいんだけどね。いや~ん、どうもアラフォーって言葉に過敏に反応する癖があって自分でも困っているのよぅ、ウフフフ。」
地獄耳だなぁ、メリッサは小声で、オマケの耳許でゴニョゴニョと喋ったはずなのに、トンでもない聴力を発揮し、〝アラフォー〟という言葉に過敏に反応しちゃってるよ、このおばはん……。
「あふう、アグリッピナ様!」
「あら、アシュトン君じゃない。しかし、どうしたの傷だらけだけど?」
「むう、元同僚のゾンビと白熊ちゃんにぶん殴られてしまって……。」
「ふーん、そういうワケで傷だらけなんだ? やれやれ、役立たずとはアシュトン君のような男のことを意味する言葉なのかしら?」
「わ、アグリッピナ様! おおお、怒っていませんかァァァ~~~!」
「全然よ、全然、怒っていないわよ、ウフフフ……。」
「ヒ、ヒイイイ! グギャガアアアアッ!」
アシュトンって男は意外とタフだな。
ゾンビ故、肉体のリミッターが常に解除された状態であるメリッサとミネルに殴られた上、サキの熊パンチも食らったというのに、まだまだハイテンションであり、底抜けの元気な様子を見せている――が、突然、そんなアシュトンが苦しみ始める。
「ア、アイツ、いきなりどうしたんだ!?」
「キョウ様、それにフレイヤさん、あの女と目を合わせちゃいけません!」
「あの女の両目は……魔眼です!」
「うむ、悪意を持って睨んだ対象に呪いをかけるという魔力か!?」
「ですね、ブックスさん。ですが、あの女の魔眼は、その呪いの効果が及ぶのは、あくまで人間……対人というワケで、兎獣人の兄貴さんとヤスさん、それに北極熊のサキちゃんには効果がないみたいです。」
「な、なるほど、だから俺とフレイヤに対し、あの女と目を合わせちゃいけないって言ったワケね!」
ふえええ、なんだか嫌な能力を持っているなぁ、アイツ!
とにかく、あの女と目を合わせちゃいけないな。
アシュトンみたいの突然、苦しむとかマジで勘弁したいし……。
「ガ、ガアアッ! め、目がっ……目がァァ……ヒギイイッ!」
「あああ、アシュトン君が!」
「ゴッ……ゴピャアッ!」
「わああ、アシュトン君の両目がパーンと弾け飛んだ!」
わ、何が起きたんだ!?
これもアグリッピナの双眸に宿る魔の力……魔眼がなせる技なのか!
ア、アシュトンの左右の眼球が、パンという甲高い音を張りあげて弾け飛んだぞ!




