EP5 俺、ゾンビを使い魔にします。その3
「それじゃ今日からリリス様とは友達ですね。」
「ああ、よろしく頼むぜ。でも、俺は家出姫ことリリス姫じゃないぞ、キョウだ。」
「じゃあ、キョウ様と呼ばせてもらいます……ん、そういえば、駆け落ちした相手であるディルム元騎士長はどこです?」
「だ~か~ら~、俺はそのマーテル王国の家出姫じゃねぇって!」
「はうっ! 申しワケないです! 容姿がメチャクチャ似ているので……。」
「む、むう……。」
俺の容姿ってマーテル王国の家出姫ことリリスに、そんなそっくりなのかなぁ?
まあ、当然だよな。
この身体――エリス姫の姉に当たる人物なワケだしね。
「さて、使い魔強化用カードデッキを手渡しておこう。」
「え、使い魔強化用のカード?」
「うむ、スタンダードなモノだがな。」
「お、おう……わあ、そこから出すのかよ!」
使い魔強化用のカードデッキだって!?
へえ、そんなモノを用意してくれていたのか、そりゃありがたい!
だが、ブックスの表紙に見受けられるダンディーなヒゲのおじさんの顔がカッと光り輝いた途端、口の中から、ゴボォとまるで吐き出すかのようにカードデッキの入った箱が出てきたのが腑に落ちない気分だ。
「うわ、カードデッキの箱が少し湿ってる……。」
「気にするな!」
「むう……。」
「どうもいいけど、どんなカードがあるのか見せてくれよ。
「ああ、フレイヤ! 勝手に取るなよ!」
「へっへっへ、気にすんな。どれどれ……ん、狂化のカード?」
「む、そのカードを使うと一時的にメリッサの理性がぶっ飛んでしまいそうだな。」
「うむ、ビンゴだ! その他には、損傷個所を修復できるカードや筋力、脚力増強の効果があるカードもあるぞ。無論、必殺技カードも――。」
「わああ、必殺技とかすげぇー! でも、理性がぶっ飛ぶとかは絶対に嫌ですー!」
理性がぶっ飛んぶワケだし、メリッサは完全なゾンビと化してしまうのでは!?
うわ、そうなると某B級ホラー映画のような生きている人間や動物を襲って食べてしまう真のゾンビになっちまいそうだし、狂化のカードは使いたくないかも……。
「うーむ、カードデッキの効果を試してみたくなってきた。」
「え、いきなりっすかぁー!」
「ちょ、俺の喋り方を真似をするなっす!」
「あ、いや……何故か、こんな喋り方になったっす。」
「あああ、またっす!」
「うむ、まあとにかく、使い魔強化用カードデッキの効果を試す絶好の相手がやって来たぞ。」
「な、なんだってー!」
「あああ、あれは虎獣人のボリス! あの野郎、戻って来やがったな!」
虎獣人のボリスが戻って来た!?
そういえば、メリッサを殺害した相手だったな。
それじゃ使い魔強化用カードを使ってゾンビとなって甦ったメリッサにリベンジさせるのもいいかもしれないな。
「よっしゃ、コイツを使って、あの虎さんにリベンジしないか?」
「えええ、リベンジですかー? ううう、怖いから断固拒否します!」
「弱腰だなぁ、おい……ん、話し声だ。よし、聞き耳を立ててみるかな。」
え、断固拒否しますって!?
弱腰だな、コイツ……ん、それはともかく、話し声が聞こえてくる。
虎獣人のボリスと舎弟の狐獣人のコタロウだろうか?




