EP4 俺、死霊魔術を使います。その7
登場人物紹介
・メリッサ――ネメシス騎士団の団員。そして自分がゾンビ。
その名を無闇に口にしちゃいけない伝説の魔女モルガン・ルフィエルの容姿は、どんな感じなんだろうなぁ。
いつか、そんな伝説の魔女モルガン・ルフィエルの姿が描かれたモノだという絵画の天を舞う厄災の魔女を見学しにマーテル王国に出張ってみたいもんだ。
だが、それは不味いな。
魂は違うけど、俺は故人であるエリス姫ご本人なワケだし!
そんな俺が現れたら、きっと大騒ぎになるに違いない!
仮に行くなら変装が必須かもしれないなぁ……。
さて。
「あのぉ、リリス様ぁ?」
「俺はリリスじゃねぇ!」
「わあ、怒らないでください! そ、そんなことより、私の首……なんか変じゃありませんか?」
「あ、ああ、なんだか曲がりすぎてるというか……。」
「まどろっこしいな! 俺が元に戻してやんよ!」
「ひええ、下手に動かすと首の骨が折れてしま……あれれ、痛くない?」
おっと、忘れていたぜ。
ゾンビとして蘇ったメリッサの首は、虎獣人のボリスにぶん殴られた(?)ことによって、その衝撃であらぬ方向へと曲がったままの状態だってことを――。
とまあ、そのことが死因に繋がったワケで……わ、おい、フレイヤ!
強引にメリッサのあらぬ方向へと曲がった首を元の状態に戻すなっつうの!
「うーん、何故、痛くないんだろう? 普通なら超痛いはずなのに……。」
「ん、それはアンタがゾンビだからさ。痛覚が麻痺しているんだよ。」
「え、ゾンビ!? ハハハ、妙なことを言いますねぇ。」
まあ、ゾンビだってことが理解できるワケがないよなぁ。
メリッサは死んで間もない〝新鮮〟な状態のゾンビなワケだし、オマケに損傷個所は頸椎のみである。
「うーん、なんだか首に違和感はあるけど、痛みがないのが不思議ですねぇ。」
「さっきも言ったけど、アンタはゾンビだから……。」
「まあいいや、私は帰ります。ここにいたら、さっきの虎さんにまた遭遇しそうですしね。んじゃ、リリス姫、ごきげんよ~。」
「おいおい、俺はリリス姫じゃないっつうの!」
まあいいや――で、済ませ俺達の目の前から走り去るメリッサは、ホント呑気な奴だなぁ。
でも、近々、気づくだろうね。
自分の身体が以前とは異なることに……。
「わあああん、ゾンビは来るなって追い返されました!」
むう、お仲間のネメシス騎士団の連中には、ゾンビであることが、すぐにバレてしまったようだ。
とまあ、そんなワケでメリッサは十分もしないうちに、ディアナスの樹海にある兄貴とヤスのアジトの前にいる俺達のもとに戻って来るのだった。
「まったく、メイザースさんもミネルさんも、みんな私のことをゾンビゾンビって連呼するんです! うううっ……イライラします!」
「うーん、ホントにアンタはゾンビだし、そこら辺は仕方がないさ……。」
「あの薬を飲ませた俺が言うのもなんだけど、お前は本当に死んでいたよ。それが突然、動き出した時はマジでビビったわ! ゾンビキターってね……。」
「わああ、またゾンビで言いましたね!」
「信じたくない気持ちはわかる。だが、君は一度、死んだ――それは間違いない事実だ。」
「ひえええ、今度は本が喋った! しかも空をフワフワと飛んでいるしィィ!」
ブックスは空中浮遊もできる生きた本である。
流石は魔道書ってヤツだな。
「さて、君はこのままでは真のゾンビになってしまう可能性がある!」
と、ブックスが言い出す――むう、メリッサはこのままだと〝本物〟になってしまう……だと!?




