EP4 俺、死霊魔術を使います。その6
「ふえー、口の中が……口直しに何か食べたいです! つーか、お腹が空いた!」
「むう、コイツ……。」
うーむ、即席とはいえ、俺は死体を生ける屍ことゾンビに変えることができる薬をつくってしまうとは――。
さて、なんだかんだとB級ホラー映画の一幕を見ているんだろうかって本気で思ってしまう光景が、ドーンと目の前で展開する。
何せ、ほんの少し前まで間違いなく〝死んでいた〟メリッサという女が、まるで何事もなかったかのように立ちあがり、腹減った~と言い出したワケだし……。
つーか、蘇ったとはいえ、死因となって頸椎の骨折箇所は、そのままなんだよなぁ。
あれれれ、コイツの痛覚はマヒしてしまったワケ? 平然としているけど?
ああ、ゾンビ化すると同時に、そんな痛覚がなくなったってヤツか?
ま、とにかく、観察が必要だなぁ。
今のところは特に問題はなさそうだけど、時が経つに連れて〝俺が知っているゾンビ〟のようになってしまうのか、そこら辺が気になるしね。
それはさておき。
「うう、口の中がイガイガする! マジで口直しに何か食べたいなぁ……。」
「なんかすげぇ元気なゾンビだな。」
「う、うん……。」
蘇った死体――メリッサは、殊の外、元気そうだ。
蘇って早々、何か食べたいとか言い出したワケだし……。
「人間の生肉を食べたいとか?」
「ん、そんなワケありません! 妙なことを訊ねますね。」
ありゃ、きっぱり断ったぞ。
むう、俺が知っているゾンビじゃないのかなぁ?
そうなら安心できるが……。
「おわ、アナタはモルガン・ルフィエル……いえいえ、リリス様!」
「リリス?」
「あ、知ってる! マーテル王国の家出姫でしょ、ソイツ?」
「コラッ! そこのおっぱい女、その呼び名で呼んじゃいけません!」
「お、そりゃ悪かった!」
んんん、リリス様だぁ?
伝説の魔女モルガン・ルフィエルと呼んだりと、俺を誰かさんと間違える奴が多いなぁ、まったく。
「リリス様って誰なんだよ、兄貴?」
「お前の姉さんだろ? 忘れたのかぁ?」
「へえ、そうなんだ。」
「確か何年か前に男と駆け落ちしたんじゃなかったっけ?」
「駆け落ちかぁ、意外と度胸があることをするなぁ!」
ふーん、俺がこの世界で使っている仮初の肉体ことエリス姫には、数年前に家出をした姉がいたワケね。
とまあ、ソイツがリリス様っつうワケだ。
ふむ、異世界からやって来た虚ろな魂が宿ったことで肉体が急成長してしまったエリス姫の容姿は、メリッサには家出姫ことリリスにそっくりに見えたのかもしれないな。
ついでに伝説の魔女ことモルガン・ルフィエルにも……。




