EP4 俺、死霊魔術を使います。その4
兎天原の東に広がる人跡未踏の場所が数多く残るディアナスの森には、奇怪で禍々しい固有種が数多く見受けられるとか――。
例えば、人間の頭蓋骨のような模様が見受けられるキノコの一種である髑髏茸や生き物の腐敗臭に似た悪臭を放つその名の通りの死臭茸などなど。
ちなみに、どっちも毒キノコのようだ。
食べたら最後、苦しみ悶えて死んでしまうという……。
ふええ、どれも嫌な固有種だなぁ……。
さて。
「キョウ、髑髏茸ならお前の足許のあるぞ。」
「わあ、ホントだ! に、人間の頭蓋骨に見える模様のキノコが足許に……よし、採取してみるか!」
「むう、素手で触ってはいかん! そのキノコの胞子が指に触れてしまった場合、君の身体が腐ってしまう!」
「ふえええ、マジかよぉ! じゃあ、どうやって採取すりゃいいんだ!」
「お、そうだ、アジトの中に確か! ちょっと待ってろ……コイツを使えーっ!」
「え、トングじゃん! ふう、これで髑髏茸は採取完了だ!」
食品をピンセットのように挟み込む道具ことトングを兄貴が持ってくる。
ふう、丁度いい具合のコイツがアジトの中にあって助かったかも……。
髑髏茸は素手で触ると危険な代物ようだし……。
「死臭茸発見だニャー! おええええっ!」
「くっせぇ! なんだ、この悪臭は!」
「死臭茸は素手で触っても無害だ。しかし、刺激臭がキツいぞ。」
「う、うん、確かに……。」
「はううう、もうダメだニャ……ぐえっ!」
フレイヤの使い魔である猫獣人の一匹が死臭茸と思われるピンク色の派手なキノコを持ってくるが、ギュルンと白目を剥いて気絶する。
ひゃああ、この耐え難い悪臭が腐敗臭ってモノなのか!?
とにかく、即席のゾンビをつくる薬の材料となる四つの禍々しい代物のうちふたつが無事にそろったワケだ。
「毒蛾草も近くにあったわ。ほら、可愛いでしょう?」
「そ、そうかぁ? 葉っぱが櫛状の蛾の触角のような感じってだけで別段……。」
フレイが毒蛾草を発見する。
うーん、蛾の触角のような櫛状の葉っぱが特徴的な野草だな……可愛いかなぁ、これ?
「ソイツは即席のゾンビをつくる薬の材料の中で唯一、毒物じゃないんだ代物だ。」
「そ、そうなのか!」
「だが、トンでもなく苦いぞ。三日は口から苦味と渋味が取れないと思う。」
「お、おえ~! 絶対、食べたくはないぁ……。」
「う、うん……。」
「さてと、残りは魔界樹の葉っぱだな。」
「それなら見つけてきたニャー!」
「お、真っ黒な葉っぱ! コイツが魔界樹の葉っぱか……わ、たくさん目がある!」
毒蛾草は、その名前と裏腹に毒物じゃないようだ。
しかし、苦味と渋味が三日は口の中に残るらしいな、おえ~!
さて、フレイヤの使い魔の猫獣人の一匹が、こちらをジッと見据える目玉が、いくつも見受けられる真っ黒な葉っぱを持ってくる。
コレが魔界樹の葉っぱなのか?
ヒュー……即席のゾンビをつくるために必要な四つの材料の中で、もっとも禍々しい代物だな!




