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EP10 俺、吸血鬼と遭遇する。その13

「むう、お前、コイツらをゾンビ化させることができるだと!? では、お前は死霊使いなのか?」


「まあ、そんなところかな? さてと、この薬で……。」


「お姉様、私にやらせてください~☆」


「お、おう、口の中に流し込むだけでいいからな。」


 髑髏茸、死臭茸、毒蛾草、魔界樹の葉という材料をすり潰し、水と配合しただけで簡単な飲み薬だけど、死んで間もない人間や動物のみに効果を発揮する即席ゾンビ薬のストックは、常にブックスが保管している。


 うーむ、どれだけつくったかな、わからないくらい大量に……っと、いつの間にか老師ウサエルの家の中から出てきていたフィンネアが、バッと俺の手から即席ゾンビ薬を奪い取り、屍と化した四人の吸血鬼ハンターの口の中の順に流し込む。


「「「「グ、グエエエエーッ!」」」」


「お、すぐに効果は出たな。」


「お、お姉様、死んでいた男達がっ! ヒャハ……すげぇ! なんか興奮してきた!」


「お、おい、興奮なんかすんな! だ、抱きつくなーっ!」


 効果抜群! 四人の吸血鬼ハンターの屍に活力が戻り……ドギャーッ! と、勢いよく立ちあがる。


 ゾンビとして復活だ……あ、でも、なんかむせ返って苦しんでいるなぁ。


「に、苦ぇ! なんだ、口の中は苦ぇ!」


「がぼがぼ、これはキツい!」


「み、水をくれぇ!」


「オ、オエエエッ!」


 そういえば、即席ゾンビ薬はトンでもなく苦いんだったな。


 オマケにしばらく口の中に、その苦味が残るはずだったような……。


「おおお、本当に生き返ったぞ、コイツら!」


「俺達が生き返った……うわあああ、吸血鬼!?」


 さてと、四人の吸血鬼ハンターはゾンビとして生き返って早々、今度は悲鳴を張りあげて狼狽する。


 そりゃそうだよなぁ、自分達が死ぬ原因をつくった元凶――吸血鬼グリーネの姿が見受けられることだしね。


「さてさて、お前達は自分が今、どんな状態に置かれているのか、それがわかるかな、クククク……。」


 と、俺はわざとらしく訊いてみるのだったが、


「ああ、そんなにわかっている。俺達はゾンビなんだろう? 身体の変化くらいわかって当然さ。」


 ぬう、即答かよ!


 それに自分の身体の変化に、即、気づくとはねぇ……。


「痛みを感じないんだ……痛みが……。」


「俺はそこにいる吸血鬼に爪で引き裂かれた筈だ。それなのに、まったく痛みが……。」


「お姉様、どういうことです?」


「痛覚が麻痺してんだよ。だから痛みを感じないんだ。」


「あ、私と同じですね。」


「ああ、そうだなぁ……。」


 痛覚の麻痺はゾンビ化した証拠である。


 そして頭を――脳を破壊するか、或いは腐敗して肉体が朽ち果てるまで不死の状態は続く証拠でもあるワケだ。


「は、俺がゾンビだと!? 信じられるかよ!」


 むう、素直に自分がゾンビだと認められない奴もいるワケだ。


 ま、当然だろうなぁ、見た目は生前となんら変わるところがないしね。


「ま、しばらくしたらわかると思うぞ。お前らは、このままだと本物のゾンビになっちまうからな。」


「「「「な、なんだと!?」」」」


「信じられないって顔だな。当然かな? さて、本物のゾンビにならなくて済む方法ならあるぞ。」


「なんだと、それを早く言えっ!」


「まあまあ、そうがっつくなよ。そうだな、ありていに言えば使い魔になればいいってところだな。」


 四人の吸血鬼ハンターは、このままだと本物のゾンビになってしまう。


 今のところは死後変化が見受けられないが、そのうち……と、それを防ぐには使い魔になる他ないってワケだ。


 ちなみに、俺の使い魔であり友達でもあるゾンビのメリッサやミネルは、そんな俺のもとから半径三十メートル以上離れた状態が長く続くと、ブックス曰く死斑等の死後変化が身体に生じ始めるとか――。


 アシュトンの場合は、さらに酷く、俺のもとから半径三十メートル以上離れるとタダの骸骨になってしまうとのこと――。

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