もふもふ少女には無い流派
あざやくんが住む大きな屋敷、玄関側が南である。
その他の三方向。西、東、北、全てに狸達が踏みならした獣道があるらしい。
獣道の先にはそれぞれ違う流派の化狸が集まっているという。
流派と言うのは化け方の流派で……と、あまり細かい説明は聞いていない。
ともかく俺が今から向かう西の獣道の先にいる狸達は縄張り意識が強く、様々な手法で入って来る者を拒むらしい。
そんな西の狸達の流派は『相手の記憶にあるモノを再現する』という突拍子もない化け方らしい。
あざやくん曰く
「それが化けた偽物だと明確に意識した途端、戻ってしまうのが西の流派の弱点です」らしい。
因みにあざやくんのいる森は『体の一部を変化させる』かなみさん、つまりはえぞきちさんの一族は特に流派が無いらしい。
と、まあそんなわけで西の獣道の前に俺はいる。
木の上には数匹の雀、地を這っているのはよく見るけど種類がわからない小さな虫。
特に珍しい生物はいないようだな。
獣道を数歩歩くと木の上にいた雀が一斉に飛び立ち、虫が道を開けるように茂みに入った。
獣道に響くのは俺の呼吸と足の音だけ。なんだか不気味だ……
目的の薬草は獣道を進んだ先にある岩の下にあるのだという。
三メートルくらいある白い大岩らしい。
「まるでゲームだな」
不安を紛らわそうと独り言を呟き俺は進む。
数分進んだ時、なにか丸い物を踏んで転びそうになった。
獣道だから木の実かなにかだろう。そう思ったのだが……
「鉄球?」
いや、別にあってもおかしくはないのだが……やけに綺麗だ。
ずっとここにあったのではなく、今この瞬間ここに置かれたかのような……
「……ってえ!」
上からなにか落ちてきた。頭にコブができたじゃねぇか……
落ちてきたのはもちろん鉄球ではなく……
「……なんだこれ」
よくわからない実だった。
実は俺の頭に当たった衝撃で割れた実から何か液体が、なんだか粘っこくて
「くっさ!!」
途轍もない異臭だ、今すぐ戻って風呂に入りたいくらい……戻って……
「まさか」
既に、狸達の妨害が始まっているのか。




