もふもふ少女の許婚
「今日選択あるから」
「そか、じゃあな」
放課後、伸二と別れて一人廊下を歩いているとかなみさんを見つけた。
どうやらかなみさんも一人のようだ。
緩んだ顔を叩いて小走り。何気ない感じを精一杯出して声をかける。
「よっ、一人?」
「あ、先輩! 先輩も一人ですか?」
「おう、伸二が選択授業でな」
そう言って自然に横に並ぶ。……自然だったよな?
「三年生になると選択授業が入るんでしたね……放課後まであるんですか?」
「いや、あいつ一段階上の大学目指すらしいからさ」
「なるほど……私も進路考えとかなきゃ」
そんな他愛ない会話をしながら歩いていると後ろから誰かが走ってくる足音がした。
何気なしに後ろを向くと一人の男子生徒が小走りでこっちに向かってきていた。
「……ん?」
見覚えのない制服だ。微妙にここの高校の物とは違う。
「転校生ですかね?」
「なるほど……知らないの?」
「違うクラスでしたので」
他愛ない会話を再開して歩き始めようとした時、男子生徒が声を上げた。
「かなみさん! まってください!」
「え?」
「へ?」
俺たちは同時に振り向く。今あの男子生徒はかなみさんを呼んだのか?
「かなみさん……ふう、ちょっと息を……整えるので……」
肩で息をしながら男子生徒が途切れ途切れに言う。
かなみさんを見てみると
「わ、わたし?」
戸惑っている。どうやら知り合いでは無いらしい。
「……ふう、いきなりすいません」
「えっと……」
かなみさんの視線を感じて男子生徒が自己紹介を始める。
「今日転校してきた二年生で、本藤あざやといいます。 そちらは先輩ですか、よろしくお願いします」
「お、おう」
何だこの丁寧ながらも勢いのある転校生は……じゃなくて。
「本藤君はかなみさんに何かようかな?」
「あ、そうです。そうなんです」
本藤君はまだ戸惑っているかなみさんの両手を掴んで
「貴女の許婚のあざやです。よろしくお願いします」
「……へ?」
間抜けな声が出た。
「あ、あなたが……?」
やっと声を出したかなみさんに本藤君が笑顔で答えた。
「はい、許婚です」
そして俺にも笑顔を向けた
「かなみさんも先輩も、僕の事は是非あざやと呼んでください!」
「……おう」
とりあえずその手を離せ、あざや君。




