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やってきましたレイオラル。

この国は国土の全てが宗教関連施設となっている。

その建物内で商店があったり共同の炊事場があったりするわけだ。

私達が割り振られたのは宿舎の一部。国外からやってくる人たちが滞在する建物の中でも上等な部類に入る場所だ。床に素泊まりって程度の部屋もあるので、藁敷とはいえ寝床があるだけ豪華と言えるのだろう。

寄付金とか、そういうものはもっと信仰に関連のある施設につぎ込まれている。

巡礼者の待遇に関してはそこまで関心がもたれていないようだ。


「これはビジネスチャンス……施設の一部の買取ができないか後で聞いてみよう」


「でもでも、このお国はぜんぶぜんぶ宗教施設だけなのですよっ? 介入は難しくて難しいとおもうのです」


こちらの呟きに返してきてのはタリーちゃん。

屋敷で雇っているメイドさんで、各国の言語に対応できるとのことで今回の随伴として抜擢された。

まあ、ゲーム的なメタで翻訳いらずなんだけどね。どこの国のどんな言葉だろうが日本語として聞こえるわけだ。便利だよね。


「まあ、聞くだけならタダだし、外国人には売れないとか言うなら国民の誰かを買収すればいいし」


「この国の方は宗教関係者だけなのですよ?  うまくうまくいく気がしないのです」


「まあ、チャレンジするだけならタダだし」


国同士の交流とは別の話になるから、うまい事いいくるめできたらいけると思うんだけどな。

なにより、今後も何度か来る場所になりそうなのに、その度にベッドに文句を言いたくない。

そんな些細なことでストレスを溜めたくないわ。


「ともかくまずは交易の話だよねぇ。みんなは上手くやってるかな」


「大丈夫だとおもうのです。みなさん優秀で優秀ですのでっ」


今回の直接交渉、私は顔を出さない。

全体の統括というか引率しているんだけど、スカーレット様の代理はあくまでテルジオ君だし、その補佐でクロード君がついている。

実務としては商団関連業務だ。やり手の交渉人が別口の契約を取りに行ってるから、たまにはオーナーも働けって感じで駆り出された。


国内のあちこちを歩き回る。

公共浴場もあるし、図書館も存在する。

そしてその向こうの一角に屋台広場があった。

ここは一般にも開放されている土地のようで、販売員はこの国の礼服を身に着けていない。

購入者側には制限がないようなので、公認であると見て取れる。


「こんな場所もあるんだ」


「何か何か買ってくるのですっ」


そう言って、近くの屋台に突撃していくタリーちゃん。

彼女の帰りを近くのベンチで待つべく腰を掛けた。


「もし、そこの方」


そして速攻で話しかけられた。

タリーちゃんに用意されていたのは男装用の服だったので、性別不明だったのだろう。

男性にしては装飾が華美であるし、女性にしてはかくばった格好だし。


「私ですか」


振り向けば、宗教関係者。

ローブの端に金と銀で刺繍がされていることから、それなりに高位であることが見て取れる。

老齢の彼は、私の姿に目を見開くと、深くお辞儀をした。なんぞ。


「いきなりのこと、失礼いたしました。私はラストア教の枢機卿が一人、レイオラル公国第十二席のアーバン・ランスバッハと申します」


枢機卿で十二席って、だいぶ上の方なんですが。

こんなとこで気楽に屋台飯食ってていいのかよ。


「これは、こちらこそ失礼しました。ガーベラ商団のアニア・デメトルと申します」


偽名である。

デメトル男爵の名前を決める時に適当につけたやつだ。アアアにしようと思ったらトトルに却下喰らったので。


「アニアさま。もしお時間がよろしければ、私と話をしていただけませんでしょうか」


「構いませんよ」


「ありがたき」


何の理由かはわからんが、公国でも上位の人物と繋がりができるなら悪くない。

セーブしてっと。


「それではこちらへどうぞ」


丁度良くタリーちゃんも戻ってきた。

後をついていくと、いつの間にか宗教関係者に包囲網を敷かれていたけれど、まさか他国の貴族に手を出すほど考えなしでもあるまい。セーブもしたし、何かあってもやり直せる。


そこまで考えて気付いた。

ガーベラ商団の関係者としか言ってないから貴族と思われてないかもとか、セーブのタイミングミスってるんじゃないかとか。

でもすでに後の祭りだ。

何となく不安になるけど、何事もなく終わることを祈っておこう。

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