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「スカーレット・エスペリオス! 俺様は貴様との婚約を破棄する!」


やってくれたぜ!


ということで、期末テストは乗り越えました!

やればできる子がんばる子、赤点回避はしたので補習はなしだ。大阪関連の問題が多かったのは何かの陰謀か。

そして今度こそ堂々と参加したダンスパーティで、無能王子がスカーレット様へ婚約破棄をつきつけたわけである。


殿下の隣には目を潤ませたイェレネちゃん。

彼女をエスコートしてきて、入り口の少し高いところから他の生徒達を見下ろしながらの宣言だ。


「貴様はあろうことか王位簒奪を画策した。だが才覚もなく、王より課された案件も一向に進まぬ始末。聞けば王妃教育も散々な成績だそうじゃないか。体面だけは繕ってきたようだが、底が知れたな」


「私、あなたのような人が国主になるなんて、国民の皆様がかわいそうで……っ! 過ちは早めに正したほうが良いと、そう思うのです」


「ああ、貴様が国母になるなど悍ましい。身分をかさに好き放題してきた傲慢極まるその所業、こちらも我慢の限界だ。この時を以て貴様をこの国から追放とする! 二度とそのツラを俺様の前に見せるな!」


おおう。

おさるさんがなんかきーきーわめいている。と思っていたら、男子生徒の何人かがスカーレット様を取り囲むように動いている。

守ろうって動きじゃないね。

参加している大人の人達は、教師陣と来賓か。王族が生徒のため、国王代理もいる。大臣級も二人ほど、その身辺警護の近衛騎士、その他お偉いさん方の代理人。

いやー王族の生徒がいるって学生主体パーティとはいえ来賓も大変なことになるわなー!


「スカーレット様親衛隊! 彼女の保護を最優先!」


「はい!」


「貴方、邪魔よ!」


「ちょっと! なんでそっちの味方してんのよ!!」


私の号令で、スカーレット様にほど近い令嬢たちが周囲を威嚇するように言葉を飛ばす。

その周りにさらに女生徒が群がり、無辜の生徒を力づくで排除できない男子生徒達が外へ外へと押し流されていく。


「いやー、人望の違いってやつ?」


「ロートリシュ……やはり貴様が下手人か……!」


「何の話? 婚約破棄の宣言をしたのはそっちだけど」


ぱち、と指を鳴らす。

すかさずトトルが書類を持って現れた。


「は? なんだこれは」


「簡易誓約書。王家と公爵家の婚約があんたの号令程度で無効になるはずないからね、書類を揃えておかないと」


「は? 貴様、何を企んで……」


「そうなんですの? アスト様、私と添い遂げてくださるという言葉は、嘘だったのですね……」


さすがに敵対者から差し出された書面は素直に署名しなかったけど、イェレネちゃんの追撃に王子が黙る。

私だったらスカーレット様を正妻にしてイェレネちゃんを側室に迎えてハーレムするけどな。

一本気なのかアホなのか、こちらの殿下はそういった頭を持っていないようだ。


「こちらにサインをすれば良いのですか? これで、王家も、公爵家も私達を認めてくれるの?」


「その一助になりますよ」


「アスト様……」


「くっ……イェレネ、もちろん俺様は、お前の事が……」


「その程度なんですのね」


目じりに涙を湛えて。

口元を覆いながら俯くイェレネちゃんに負けて、俺様野郎が胡散臭い書類にサインを残す。

まあ、これがどれだけの効力を発揮するかはわからんけども。

一つの保険にはなったかな。


そしてこちらでわちゃわちゃやっている間に、スカーレット様は親衛隊に連れられて退室している。

こっちが本命だね、無事に彼女から目が逸れて良かった。


「それでは、ごきげんよう」


目的は達成した。

こちらを睨む殿下を無視して会場を後にする。

ダンスの腕を披露する場が全くないな、なんてことを思いながら。


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