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14 帰ってきたし

 職人街に着くまでトライコーンでは1週間ほどかかった。


 ドラゴンに乗ってよりもやはり時間はかかる。

 とはいえ、ナナシたちの戦闘能力が高いこともあってほぼノンストップだったことも考えれば異常な速さであったのは確かなのだが。


 冒険者ギルドに馬を預けるとレオンとリジー、それとローワン、ついでにアサヒも連れてナナシは寄り道せずに領主の家に向かった。


 そこに向かうのにあまりの活気にローワンが怯えてしまい、ついでに人に流されかねないのでレオンがローワンを抱えて向かった。

 リジーは関してはナナシとアサヒが監視しながら進んだ。


 領主の家に着くとすぐに応接間に通され、それぞれがいつも通りにしている中でローワンだけは恐縮しまくっていて居心地悪そうにしていた。


 貴族に対しての一般的な反応としてはローワンが普通であって、他の4人が堂々としすぎているだけだ。マイペースな奴と慣れている奴のそれぞれで。


「鍛冶師さん、もう、もう脱いでもいいでありますか?」


 席に座ったリジーが顔を全て覆い隠していた服を脱いでもいいかとナナシに尋ねてくる。

 領主の家(ここ)では知られているのでナナシも許可をだす。ついでにレオンにも言っておく。


 レオンも世話になる相手に姿を隠したままは良くないと、フード付きのローブを脱いだ。


 領主がやってくるとアズライトでのことをナナシが中心になって話していく。

 伝えなければならないことは大して多くないが、結局暴れて来たことやローワンのこともあるのでレオンとリジー(獣人)を預けて終わりにも出来ないのだ。


「――って感じだな」

「そうか。アズライト(向こう)は陛下がエアリスと上手いことやるだろう。残るは……」


 一通りアズライトでの話を聞いた領主はローワンの方をそっと見る。


 職人街でローワンが暮らすことについてはなんの問題もないし、領主の家でローワンの今後が決まるまで置くのも構わない。1人くらい増えたところで支障はないのだが――。


「………………」


 運ばれてきたキャベツを頬張るリジー以外の視線がローワンに向く。


 ローワンは緊張でガチガチに固まっていて、このまま領主の家に置いておくのも可哀想になってしまう。ここまで緊張するやつも珍しい。


 すぐに慣れるだろうと推測もあるが環境が全て変わってしまうというのもローワンの精神面を思うと負担も大きすぎるかもしれない。


「しばらくは俺の方で面倒みるわ。落ち着いたらどっかよろしく」

「ああ、考えておく」


 ひとまず全ての話が済み、あとは王子がやってくるまで自由となった。


 キャベツに夢中なリジーは領主の家に置いたままにしておき、ひとまずナナシたちはナナシの家に向かった。


 冒険者が多くなる時間帯なこともあり、レオンが再びローワンを抱えて行く。

 レオンは獣人だけあって人間と比べると力も体力もあるので店の前の長い階段もローワンを抱えたまま楽々と上がっていた。


「あ、おかえり。無事にって人増えた?」


 家に着くと帰る支度をしていたルーグがいて、ナナシが帰ってきたことを嬉しそうにしながらレオンに抱えられている子供(ローワン)が目に入り疑問を口にした。


「組織が潰されたかんな 」

「そっか。それで連れてきたんだ」


 ナナシの短い説明を聞いてルーグはそれ以上は聞かなかった。詳しく聞く話でもないだろう。少なくともローワンがいる前では。


 目の前のライオンの獣人のことも気にはなるがルーグは明日にでも聞くことにして、ナナシの留守中の来客を伝えておくことにする。


「オーウェンさんが来てるよ。ナナシが帰ってくるまで待つって。もう1人来たんだけど……」


 この場で言ってもいいものかと躊躇ったルーグの声が小さくなる。ドリアードのことはナナシ以外に伝えない方がいいだろう。


「俺の方も明日っからのどっかで聞く。店の客ってわけじゃなかったんだろ」

「うん。ナナシに会いに来たわけじゃないって言ってたけど」


 ルーグの言いたいことを感じ取ったナナシは、ひとまず店の客ではないのなら後日ゆっくりと聞くと言うことにした。


「留守番サンキューな、ルーグ。オーウェンにゃ手紙でも出しとく」

「わかった。母さんにお弁当のことだけ伝えとくね」

「おう、よろしく」


 帰ろうとしたルーグにアズライトの土産(留守番代)だと茶色い液体の入った瓶を渡してから帰らせた。


「随分としっかりしている子であるな」

「あいつの親はこの街の長の1人だかんな、それなりに」


 歳の割に落ち着いた雰囲気のルーグはレオンからしてそう映ったらしい。まぁ少なくともリジーよりはしっかりしているのは確かだ。


「ふむ、そうであったか」


 長の子供ならば色々な苦労もあるだろうと納得したレオンは、自分の国の王子と重ねたのかルーグが帰っていった方をみて笑った。


「さてと、本格的な手入れでもすっか。代わりのやつは適当にその辺から持ってけ」

「それじゃ槍でも借りようかな」

「斧は……」


 レオンとアサヒが武器を選んでいる間にナナシはローワンを二階の部屋へ案内する。


 ほぼギルベルトが私物化しているが一応空き部屋なのである。しばらくの間のローワンの生活する部屋としては問題だろう。


鍛冶屋(2階)


ナナシの部屋と空き部屋(ほぼギルベルトの部屋になってる)とお風呂場と洗面所で構成されている。


ちなみにナナシの部屋の家具など人間のセンスとは少々ズレている。

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