12 レオン奪還
レオンの装備を手入れを終えたナナシは大きく伸びをすると立ち上がった。
できる限り静かにレオンを助け出したいが、戦闘をゼロにするのは難しい話だろう。ならば少しでも戦闘時間を少なくする準備は怠るわけにいかない。
「よーし、行くか」
「おじさん、頑張っちゃうよ」
「行くであります!!」
いつも通り蒼き狼に向かうとそれぞれ別々に行動しているように見せかけレオンの元に向かう。そうしながら脱出の邪魔になりそうな奴らを別の場所に誘導したり、気絶させてルートを確保していく。
潜入していたおかげで建物の構造はしっかりと頭の中に入っているので余計なトラブルに会いにくい。
「こりゃエアリスのじーさんが言うのも頷けんな」
言われてから改めて歩いてみると、反骨精神というか下克上精神というかが見て取れる。町1番の組織になろうとしているのは口先だけではなさそうだ。
エアリスが今以上の拡大をする前に潰しておきたいと言っていたのもわかる気がする。なんとなくだが、野心のためなら非道なことでもやりかねないとナナシも感じ取っていた。
「ま、力量見極められなきゃ残るもんもねぇけどな」
呟いたナナシは廊下に飾られた額縁の縁をなぞり、それに沿って絵が燃えていく。ナナシは絵が全て燃え尽きるのを眺めてから再び歩き出した。
ナナシがレオンのところに着いた時にはすでにリジーは到着していて、遅れて到着したナナシへ遅いでありますと言ってきた。
まぁ、ナナシは天井裏というルートを通ったリジーに対し色々と潜入中のことで言い返していたが。
「ガルムの方が良かったかも知れぬな。いや、しかし……」
何かあっても逃げ切れるだろうとリジーを選んだが性格的に無理があったのはレオンも薄々気がついてはいた。今さら後悔しても遅いのだが、もう1人の候補の方が良かったかもしれないと呟く。
「どっちもどっちじゃねぇのか。捕まることはないとしても、人間嫌いも騒ぎは起こすだろ」
真顔でナナシはレオンに返し、大体と続けながらレオンの手枷足枷を外していく。
「なんで候補がその2人だよ。どう考えても人選ミスにしかならねぇだろ」
「未知の世界でも無事に帰れそうだと会議で決まったのだ」
「そりゃ確かにらしさはあるけどな」
それっぽい感じならその2人の名前が挙がるのも頷けるが、余計な騒ぎを起こしそうなのもその2人なのである。たぶん、2人以外を選んだ方が何事もなく進んだはずだ。
「お、おじさんがビリか」
「揃ったな」
マジックバックからレオンの荷物一式を取り出したナナシは、それらをレオンに渡しておく。これで全員動ける。
あとはエアリスが手配してくれているはずの最速馬車まで向かえばいいだけだ。
レオンの捕まっていた部屋を出るとどうしてだかにわかに騒がしく、金属の撃ち合う音や爆発音が聞こえてくる。
「じーさんの仕業か」
どうやらエアリスはレオンを逃がすのに協力してくれるらしい。
獣人がいると話もあったことだし、蒼き狼を潰すにはいい機会だろう。
「ありがたい」
「こっちにも来てるであります!」
バタバタと足音が近づいてくる。
レオンを回収しに来たのだろう。取引さえ無事に終われば金はあるのでどうにかなると思っているようだ。実際はそんな希望はどこにもないのだが。
「そういや、いいのか暴れても」
「むしろ暴れない方が失礼ってものかもね」
その方が性に合っていると拳を手のひらに打ちつけたナナシはにっと笑った。
大きな騒ぎにしないようにと潜入してみたが、ナナシにしてみればまどろっこしいと感じるものだったようでストレスが溜まっていたようだ。
元々誰かの下であくせく動けるような性格はしていない。
レオンを移動させに来た男らは新入りがこんなところにいることに一瞬戸惑い、それよりもレオンが外に出ていることに驚いていたがすぐに納得する。
「お前らもそいつを移動させるように頼まれたんだな」
「俺らだけでどうしようかと思ってたがボスも考えてくれたんだな」
心強い味方がいると安心しきっている男たちにナナシは期待を裏切るように笑ってみせる。
「悪ぃけど俺らはレオンを救いに来ただけだ」
「そういうことだから、ごめんね」
言い終えると同時に動いたナナシアサヒが数人の男を制圧にするのに1分もかからなかった。ナナシの方は力加減間違え少々やりすぎになってしまったが。
エアリスが起こしてくれた騒ぎに乗じて町の外へと向かうと、角の生えた黒い馬が荷台をつけて待機していた。
「荷台に乗れと」
「なかなかスリリングなものになりそうだね」
「我らならば問題はなかろう。しかし……」
そう言ってレオンはトライコーンの反対側に視線を向けた。
「あ、お兄さん」
トライコーンの影からひょっこり出てきたのはローワンだった。
「ローワンさん。どうしてここにいるでありますか?」
「エアリスのおじーさんにここに行くように言われて、その……」
その言葉でリジーを除いてローワンがここにいる意味をすぐに意味を理解した。
ローワンをアズライトから連れ出せということだと。そして出来れば、明るい場所で生きてもらいたいのだと。
「そうか。この町を出るつもりなら歓迎するぜ」
荷台に片足をかけたナナシはローワンに乗れとは言わなかった。急に振られて困る選択肢ではあるがそれでもナナシは決断をローワン自身に任せた。
俯いたローワンはキュッと唇を結んで顔を上げた。
「……行きます。お兄さんたちと一緒に」
腹をくくったというには浮かない表情で、それでもローワンは町を離れると決断をして荷台に乗り込んだ。
そして、アサヒたちも荷台に乗り込みリジーが不思議そうに首を傾げた。
「走らないでありますか?」
「おじさん、馬には乗れるけど御者はできないんだよね」
「同じく、私もだ」
「俺が出来るわけねぇだろ」
つまり、誰も御者が出来ないらしい。
せっかくレオンを助け出したというにここで新たな問題が発生したのだった。
レオン
ライオンの獣人。連合国の軍人。
連合国中では種族問わず頼りにされている。
最近は軍の新入りの指導をしているようだがけっこう手を焼くのがいるらしい、かなり苦労しているという。




