11 と、その前に
「レオン、見つけたぞ」
宿屋に戻ったナナシは淡々とそれを報告した。リジーは眠っているので後で伝えればいいだろう。
「あとは連れ出すだけだね」
アサヒには昼間にレオンのことを伝えたあったので、実際にレオンがいたというが分かりこれから忙しくなると気合いを入れる。
「おじさんが集めた情報だと、オークションへ出さずに貴族に直接売る予定みたいだね。最速ならあと3日ってとこ」
部屋に広げていた地図を指しながらアサヒが言う。
リジーから聞いた話から推測していたらしい。すぐに連絡を取って貴族が最速の移動法で来ていればあと3日でアズライトに着けるとアサヒ。
「そーかよ。なら明日にでも――」
決行するかといいかけた瞬間。
開いていた窓からハリツバメが入ってきて、すいっとナナシの前に手紙を落とすとそのまま急上昇旋回をし、ナナシの頭の上に止まった。
ナナシの頭上で羽が乱れたわとでもいいたげにハリツバメは羽繕いを始めた。
ナナシは降りろとマジックバックから止まり木になりそうなものを取り出したがハリツバメは見向きもしない。そのツンと澄ました感じは高貴な振る舞いにも見えてしまうほどだ。
ハリツバメを頭から降ろすのを諦めたナナシは手紙の封を開けた。わざわざ差出人を見なくても、手紙を運んできたハリツバメの性格から誰からかはなんとなく分かる。
「……なるほどな。つーことは一応お伺い立てた方がいいってことか。レオンは明後日だな」
「うん、明後日ね。それで明日はおじさんもいた方がいいのかな?」
手紙を読み終えたナナシが今後の流れを組み立て、アサヒは口出すわけでもなく了承し、明日のことを察したアサヒは人手が必要かと聞く。
「まぁ大丈夫だろ。少なくとも敵意を向けられることはねぇはずだ」
戦うことはないとナナシはそれを断った。
「じゃあ、おじさんはリジーちゃんのお世話でもしておこうかな。1度、レオン君に会いに行くよ」
「作戦伝えといてくれ。あとあいつらの荷物の回収よろしく。ローワンが知ってると思う」
「あの子がね。うん、分かった」
それからナナシは手紙の内容についてざっくりとアサヒに伝え始めた。
ギルベルトからレオンとリジーを連合国からの大切な使者として無事に職人街まで連れ出し、国からの使者が行くまで面倒を見るしておくこと。
それとアズライトで暴れる予定があるのなら、エアリスと言う古参の組織に声をかけておくといいと書かれていると。
なんでも必要悪として国から黙認されている組織らしく、この街の裏側の治安を守っているようで声をかけておけば後処理など力になってくれるだろうと言う。
というか、違法な取引を取り締まるのにいい場所なので大っぴらに動いて他の奴らにも警戒されたくない国の事情もあるとかないとか。
「なるほど。 どこの国でもあるものだね」
故郷のことか旅をしてきた国の話かは分からないがアサヒが言う。護衛職ばかりやっているからというのもあるかもしれない。
「つーわけで、ちょっと声かけてくるわ」
「その方がいいだろうね。蛇の道は蛇ってね」
ざっとこれからの打ち合わせをし、翌朝――。
相変わらず日の出ともに目覚めるリジーに起こされるようにして目を覚ましたナナシとアサヒは、朝食を食べながらリジーにも作戦を伝える。
「見つかったでありますか?!すぐに、すぐに向かうであります!」
即レオンに会いに行こうとするリジーだったが、そうなることを推測済みのナナシがリジー飛び出し防止で既に服を掴んでおり、リジーはその場でずっこけた。
「ちょっと待とうね、リジーちゃん。せっかく、レオン君を見つけたのに隠されたら困っちゃうよ」
「そうでありました!」
アサヒの言葉を理解してリジーはすぐに動きたい気持ちをグッと堪えてじっとする。
しかし数分と持たず貧乏ゆすりが始まり、ナナシはリジーに飴を渡し大人しくさせておく。扱いやすいのはこういう時助かるのだがもうちょっとしっかりしてくれると嬉しいものだ。
出かける直前に、ナナシはリジーに今日やるべき事を念の為にまた伝えおく。アサヒがいるので大丈夫だとは思うが。
「いいか、リジー。お前はレオンと自分の荷物を回収してこい。それと倉庫の鍵のかかった部屋にあるサビた斧も。復唱」
「はいであります。レオンさんと自分の荷物、それと倉庫にある斧の回収でありますね」
ピシッと敬礼をしたリジーにナナシは上出来だと褒め、声には出さずアサヒにリジーを頼んだと視線だけで伝えた。
エアリスという古参の組織に向かったナナシは、さっさと話をつけるためと正面から訪ねずにボスの部屋にいきなり突撃したために少々警戒されてしまったが、国王の紋が入ったギルベルトからの手紙とナナシの性格が気に入られかなりスムーズに話が進んだ。
エアリス
国と繋がりのある古い組織。
元々は町の問題児を集めて作った小規模な自警団だった。




