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9 取り引き

「さーてと、レオン探す前に確かめとかねぇと」


 自分に押し付けられた雑用の清掃はリジーに全て押し付けたナナシはレオンを探して倉庫に使われている建物内の探索を始めた。


 リジーがいた方が鼻が利くので探し物には早いのだが、基本的に大人しく出来ないので目立つことこの上ない。しかも色々素直すぎるので作戦に支障を出しかねないので連れては探さない。


 ついでに言えば、レオンを探すとも伝えてない。

 伝えたのは迷子にならないように散歩してくるとだけだ。逃げ道のルート確認も兼ねているが教えると喋りかねないのでやはり言っていない。


「あれはこっちに運んでたと……つっても、別に保管されてもおかしくないかんな」


 誰もいない廊下を歩きながらナナシは盛大な独り言を言って扉を次々に開けて回る。


「ここだな」


 そのうちの一つで妙な感覚を感じ取ったナナシは、なんの躊躇いもなく部屋の入った。1番奥、壁に立てかけられたところどころにサビの目立つ斧に触れる。


「やっぱドワーフのか」


 時にこうしてドワーフが作ったものが流れることはあって、所有者の死後はその価値が分からないまま売られて市場に回ることも多い。

 まぁ、サビているのに処分されていないあたり、何か珍しいものくらいは分かってるのかもしれないが。


 斧を手に取ったナナシはまじまじと斧を観察して使われている素材を確認していく。

 ドワーフが作ったからと言っても人間の高名な職人が作ったものと同じでただ秀逸な逸品なだけだ。特別な素材や製法が使われていなければ。


「これは――誰か来たな」


 足音が近づいてくるがコソコソする必要もないのでナナシは気にせず斧を手に持ったまま、部屋に置かれた他のものにも目を向ける。


「そこで何をしている?」

「んー、素材見てるだけで心が踊るもんで。鍛冶師と名乗ってたこともあったかんな」


 背後から喉元に刃物を突きつけられているというのにナナシは恐れもせずに淡々と質問に答えて振り返る。


 そこには若いのと中年に近い2人の男が立っていた。ナナシの記憶が正しければこの組織の中で割と腕の立つ奴らだったはずだ。


「新入りじゃねぇか」

「鍵がかかってはずだぞ」


 ここ数日でめちゃくちゃ強い新入りとして覚えられてるため侵入者と思われず無用な争いはせずに済んだのだが、まだ安心は出来ない。


 鍵がかかっていたと言うが、それらしきものをナナシは見ていないと心当たりを探る。鍵穴も魔道具らしきものもなかったことを考えるとおそらく扉に魔道具が組み込まれたものだったのだろう。


 そんなものナナシにとって鍵のかかってない扉同然だが言えるはずもなく、ナナシは知らないフリをする。


「フツーに開いたけどな。誰か閉め忘れたんじゃねぇのか」

「ありえるな。ボスもケチんねぇでオートロックにすりゃよかったんだ」

「ったく、閉め忘れた奴ァどいつだよ」


 誰が当番だったかと言いながら2人はまぁまずは鍵を閉め直すかとナナシにも部屋から出るように声をかけた。


「なぁなんで厳重な保管してっとこにこんな錆び付いたもんを入れてんだ?」


 しかしナナシはその場から動かず立ち上がって、手にしたままの斧を2人に見せるように持ち上げた。


「オレもよく知らねぇが値打ちもんらしくてな。丁重に扱えって言うんだ」

「そりゃ手入れしてやんねぇと」

「さっき鍛冶師とか言ってたもんなぁ」


 しかしボスの許可がなければここのものは勝手に触るわけにはいかないと言う。


 この部屋は特別価値のあるものを入れて置く場所でボスの許可なく入ることが許されていない部屋らしい。確かにナナシが分かる範囲でも高値で取り引きされるものしか置かれていない。


「ボスに頼みゃいいんだな」

「お、おい、鍵がかかってなかったことは言うなよ。ボスに知られたら――」

「オレたち殺されちまう」


 組織である以上、上に逆らえないのは仕方がないが2人の怯えっぷりときたら素晴らしいと言いたくなるほどだ。まるで下位ドラゴンと対峙した人間のようだ。


「言わねぇよ。取り引きに応じてくれんなら」

「な、なんだ?」


 無理なことを言われるのではないかと警戒はしているが、よほどボスからお叱りが怖いのだろう。2人

 ナナシの話を聞く姿勢だ。


 ナナシは手にしていた斧を適当に立てかけて、部屋の外に向かって、出る瞬間扉の鍵を確かめておく。


「大したことじゃねぇよ。ただ探してる奴の情報の教えて欲しいだけだ」

「そんなことか」

「どんなやつなんだ?」


 簡単な要求だと安堵をしている2人にナナシは爆弾を落とす。


「――はぐれの獣人」


 獣人という言葉に反応したように若い方が肩を跳ねさせた。中年の方も隠しているつもりのようだが真顔になってしまっていてバレバレだ。

 相手も分かっているので取り繕うのと単純な疑問で尋ねてくる。


「なんだって探してんだ?」

「薬の材料に必要だから。獣人なんざどうなろうと構わねぇだろ」


 ナナシは淡々と言ってみせる。まるで獣人は人ではないかのように冷えた視線で。


 それに一瞬怯えたような中年の方は教えるべきじゃねぇんだがと前置きをして、獣人を捕まえていることを口にした。勝手に探されても困るからだろう。


「あ、ああ、確かにここには獣人がいる。だけど傷つけるなよ、あれは商品だ」

「必要なのは小瓶いっぱいの血液だ。回復薬(ポーション)でもかけときゃ問題ねぇよ」

「いや、そういう問題じゃねぇよ。それで暴れられでもしたらやばい。やっと大人しくなったってのに」


 もとよりレオンが大人しく捕まったのは暴れて周囲に大きな被害を出さないためだったのだろうが、今は動けなくなっている可能性がありそうだ。


 ナナシはにぃっと笑うとレオンの居場所を吐かせると決める。


 ここからは取り引きじゃなく脅しだ。わざわざ暴力を振るう必要はない、ドラゴンに畏怖しない人間などいないのだから。

魔道具の鍵


魔力で開く鍵。

アナログのただの鍵よりは防犯性は高い。また安いのから高いのまで種類が豊富。


ただし、ドラゴンや精霊など魔力の質が高い存在の魔力はマスターキーになってしまうためアナログの鍵の方が安全である。


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