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5 いざ、アズライトへ

 留守の間の店のことはルーグに任せることにして、ナナシはレオン救出に向かうために職人街を出た。


 同行者は責任を感じてついていくと聞かないリジーと、協力すると申し出てくれたアサヒだ。


 特にアサヒは護衛業に詳しいだけにレオン救出の大きな力になることだろう。戦闘面においても実力は折り紙つきだ。


 今はフィリーたちと同ランクだがアサヒは元Aランクの冒険者だ。


 ナナシの推測だがSランクにいける力はある。

 アサヒは護衛依頼ばかり受けているので滅多に実力が認められることがないせいだろう。護衛依頼は襲われなければただいるだけになってしまうから成果が見えにくい。


「それでどのルートで行くの?最短なら遠回りに見えるけど南からだけど」

「当たりの保証もねぇんだ最速で行く。夜までに出来るだけ街から離れる」

「了解でありますっ!」


 気合いだけが十分なリジーが返事をしてひたすら職人街から遠くを目指す。アサヒはどんな方法なのかと楽しそうにしていた。


 かなり飛ばして進んだのだがアサヒもリジーもへばる様子はなく、1番に体力が尽きたのはのはナナシだった。


 これからのことを考えるとナナシはあまり無茶も出来ないので仕方がない。というか単純にアサヒとリジーの体力が多すぎるだけなのだが。


 日が完全に暮れ明かりがなければ進めないほどになり、職人街から十分な距離もとれたとナナシは喉を触りながら息を大きく吸い込むと空に向かって咆哮する。ビリビリと周囲が震えた。


 その場にへたりこんだナナシはマジックバッグから水筒をとりだして水を飲む。

 咆哮しても大丈夫なよう身体は作り変えられているようなのだが、普段使うとこのないものだけにやると疲れるのは否めない。


「ドラゴン様を呼んだでありますか?」

「ドラゴン?」

「そうであります!鍛冶師さんはド――もがっ」


 リジーをこれ以上喋らせないようにマジックバッグから大きな棒付きキャンディーをとりだしたナナシはリジーの口に突っ込んだ。

 リジーは美味しそうに舐め始めた。


 連合国だとナナシがドラゴンも兼ねた人間だと広く知られているというより、感覚的にドラゴンだと分かるらしくバレたという方が正しい。


「ドラゴンなら最短だろ?」

「まさか下位ドラゴンじゃないよね」

「正真正銘ドラゴンだな。うるさいのは下位ドラゴン級だけどな」


 しばらくしてやってきたのは黒いウロコを持つドラゴン、オニキスだった。闇夜に乗じて動くならいい色だ。


「また小僧か。我を乗り物扱いするでないと何度言えば分かるのだ?」

「うるせぇなぁ。だったら来なきゃいいだけの話だろ。つーか、今回は急ぎなんだよ」


 もはやお約束になりつつあるやり取りをしたナナシは、オニキスがまた小言を言う前に獣人がこの国で誘拐されたことを伝える。


「真か?」

「そうであります!どうか助けて欲しいであります!」


 自分が弱い(ポンコツな)せいでと嘆くリジーはオニキスに必死に頼み込む。レオンを心から助けたいと思っているのだ。


「何卒お力お貸し頂きたい」


 リジーの心からの願いにアサヒはオニキスに向かって手足を地につけて頭を下げた。アサヒの故郷では最大級の礼に当たる。


「……近くまでならよかろう。ただし止まりはせぬからな」

「サンキュー、オニキス」


 長く息を吐き出したオニキスは面倒そうにそう答えた。


 有象無象の人の子らにわざわざ率先して手を貸してやるつもりはオニキスにはないが、だからと言って彼らの強い想いを無下にするつもりもない。

 それに()()()()()()からも頼まれては仕方がない。


 オニキスは乗りやすいように伏せ、ナナシたち3人が乗り込り背に座ったのを確認すると一気に空に舞い上がった。


 真夜中のフライトは明るい時間と違って地上の様子がほとんど見えない。時折見える集落の明かり以外はどこまでも落ちてしまいそうな暗闇が広がっている。

 空を見上げれば地上のときよりも星空を近く感じる。


「空の旅っていうのも乙なものだね」

「……鍛冶師さん、い、いつ着くでありますか?」


 空を飛びたいと鳥に憧れるのも分かるとアサヒ。いつか空の上で月見酒といいかもしれないと景色を楽しんでいる。


 そんなアサヒとは反対にオニキスのウロコをガッチリと掴んで小刻みに震えているのはリジーだ。高いところは苦手なようだ。


「あと10分くらいか。つーか平気か?着陸はしてくれねぇんだぞ」

「あわわ……いや、でもレオンさんのためには」


 低空飛行はしてくれる予定だが、リジーの様子だとそれでも出来るか怪しそうだ。レオンのためにやる気はあるがそれが空回りして余計な怪我を負っても困る。


「連れて降りる方が良さそうか」


 大人を連れて降りるのとなると不安は残るがリジーが自分で降りれるかと言うと難しそうだ。どうするかとこぼすナナシの肩をアサヒが叩いた。


「それならおじさんがやるよ。ほら、おじさん護衛の職人だから慣れてるし」

「俺がやるよかマシだな。頼んだ」

「任せといて」


 目的地であるアズライトの町が見えるとオニキスが高度下げ始め、ナナシとリジーを抱えたアサヒがオニキスから飛び降りて魔法を使って着地する。


 すぐにアズライトに向かってもよかったのだがリジーの腰が抜けたことと、夜は中に入るのに時間がかかることなどもあってその日は野営をし翌日向かうことにした。



咆哮


モンスターがよく使う。

威嚇や仲間を呼ぶさいに使われることが多い。


強い生物の咆哮は聞くものにパニックや硬直などの状態異常を引き起こすことも。

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