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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
フィリー編
73/115

12 それが本性なら

 子爵が交渉に来てから2日、店の中を片付けないととかほざいていたナナシは店の強化をしていた。


「片付けるんじゃなかったの?」

「そう思ったんだけどな、この店壊れた方がめんどいだろ」


 店の中にあるのは自分のものなので別に壊れようといいらしいが、店自体はギルベルトのものであるため壊れると色々と大変だと判断したようだ。


 結果、店が壊れないよう頑丈にするという結論に至った。


「ギルベルトさんは怒らないような気もするけど」

「馬鹿言え、ルーグ。あいつのことだ、これ幸いだとタダ働きさせられかねねぇぞ」


 そうはならないと思う反面、ギルベルトならやりかねないのではルーグも思う。何故かギルベルトはナナシをここに置いておきたいようだから。


「つーわけで、もっと頑丈にしとけば人間にゃ壊せないはず」

「すでにそうだと思うんだけど……」


 確か工房に続く扉はドラゴンのウロコが使われていたはずだ。その他にもありとあらゆる場所を強化してるとか言っていたし、脆いところを探す方が困難な気がする。


「ま、完璧じゃないから改良の余地はあるし」

「そこまでする必要ある?」

「半分は趣味みたいなもんだから気にすんな。それに家ってのはオオカミの息吹でも壊れないのが理想だろ」


 時折ナナシは訳の分からないことを言う。頑丈なら頑丈なほどいいと言いたいのは理解できるが。


 鼻歌を歌いながらナナシは強化に使えそうだと持ってきていた素材を使ってどんどんと店を強化していく。ルーグはそれをナナシの近くで呆れながら眺めていた。


「ミスリル取ってくれ」

「……この青いやつ?」


 聞きなれない名前だったのでルーグはしばらく悩み、それから見慣れない素材を指さしてナナシに確認を取る。


「そうそれ、作り手にとっちゃ憧れの素材ってとこか」

「父さんも?」

「大将か?手に入ったら気絶すんじゃねえの。一生に1度お目にかかれりゃ運がいいってもんだかんな」


 見ることが出来ても、それが自分の手になんてことは夢のまた夢のようなものだ。

 見つかったところで大抵はオークションで金持ちが競り落とし、有効活用されることなく秘宝として厳重に保管されるだけというのがミスリルだ。


 その青の美しさは宝石にも勝るような、人の目を奪ってしまうほどだから加工なんてしなくないと考えてしまうのだろう。

 失敗せずに加工出来る職人もまた希少だろうし。


「確かに壊れちゃうならこのままにしておきたいって言うのもわかる気はする。これはどんな効果があるの?」

「1番は魔力伝導率が高いっつーことだな。おまけで魔法耐性」


 魔剣や杖などに重宝するとナナシは言って、細かい説明は省き魔力の消費が少なくなるのだとざっくりと説明する。


「ま、そんなん知る人間もほぼいないんだろうけどな」

「そっか。加工する人がいないから」


 研究者や作り手には自力で入手出来るほどの金はなく、譲られることもないためほぼ謎に包まれている鉱石になっている。


 数年前、どこかの金持ちの学者がミスリルを競り落とし研究所に寄付した言う話を聞いたので、そのうち素材として認識されることだろう。


「そろそろ休憩すっか」

「お茶淹れてくるね」


 ルーグは工房へ向かおうとしたが扉の前には大きな荷物が置かれていて通り抜けができず、仕方なく店の出入り口から出て裏口に回ることにする。

 ちょっと面倒だけどその方が早い。


「――わぁ!ナッ、ナナシ!!」


 外にルーグが出た瞬間、ルーグの大声が響き、ナナシは作業をすぐさま中断すると急ぎ外へ飛び出した。


 モンスターなどいるはずもないこの場所で大きな声が上がることはないはずで、明らかな異常事態だ。


「ルーグ!?」

「ナナシ……」


 喉元にナイフを突きつけられたルーグは左手に嵌めた転移の腕輪を使おうとしてナナシが視線で止める。ルーグは泣きそうになりながらもナナシの指示に従った。


「……っ」


 ナナシはすぐに状況の把握に務める。下手に動くのはルーグの身を危険にさらす。それだけは避けるべき事態だ。


 ルーグの背後には大柄の男がいて、逃げないようルーグを捕えている。

 大柄の男の後ろには細身の男が隣の華美な服装をした人間を守るように立っていた。


ルーグ()を救いたくばフィリーとの結婚を認めることだな」

「……ったく、なりふり構わずかよ」


 悪態をついたナナシは、とにかく最善策を求めて頭をフル回転させる。

 とにかく冷静に、そうしなければこの前のようなことになりかねない。ルーグにはあまり負担はかけたくない。


 転移は移動できる質量などから大柄の男ならおそらくルーグだけが移動出来るはずだが、魔力を込める必要があるので怪しい動きと捉えられかねない。


「庶民ふぜいが逆らうからだ。素直に聞き入れればいいものを」


 子爵程度ならどうとでもなるが大柄の男はおそらく手練だ。ルーグ奪還に大きな障害すぎる。


「まぁ、すぐに許可を出したくなるだろう」


 そういうと子爵は大柄の男に短くやれとだけ指示を出した――刹那。


 底冷えするような冷たい空気が流れだした。

ミスリル


非常にレアな鉱石。

少量でも対魔法にかなりの効果が見込めるのだが、現在はほぼ宝石扱いされている。


大量に採掘出来たことがないので仕方ないのかも知れない。

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