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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
フィリー編
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2 妙な噂

「妙なやつがいる?」


 お弁当を届けに来たルーグは、父ウォルバーグからナナシに伝えるように言われたことをまっさきに伝えた。


 ナナシの店は街の中心部から離れていて、ナナシ自身もあまり街に降りてこないために職人街の情報に疎い。


 なので時にこうしてナナシの耳に入れておいた方が良さそうな情報などの連絡をルーグが任されることがある。


「うん。なんかね、街の人たちに冒険者のことを詳しく聞いて回ってる貴族の人がいるんだって」

「そりゃ確かに妙だな。ま、うちの店にゃ来ないだろうが」


 お抱えにするやつでも探しているのだろうか。

 ありえない話でもないが、街の連中が警戒をした方が良さそうな人物と見ているのであれば無視はできない。


 この店は心配する必要もないだろうが、この騒ぎが落ち着くまではちょこちょこと街に顔を出した方がいいかもしれない。

 冒険者よりも貴族の方が怒らせると何をしでかすか分からない。戦力はあって困らないだろう。


 そこにロイがやってくる。

 装備の受け取りもあるが、久々なのでルーグとも話をしたいようで早めに来たと言う。


「持ってくるな」

「あ、あの、昨日は忘れていたのですが相談があって」

「そーか。ルーグ、お茶淹れてくれるか」


 ルーグにお茶を頼むとナナシはロイの対面に座り、それからロイが相談事を話すのを待った。


「オーウェンさんに相談をしたら、鍛冶師さんかギルベルトさんに相談した方がいいと言われて」

「そうなるとちょっと厄介そうな感じか」

「あ、はい。実は貴族からお抱え冒険者の話が来ているとギルドから言われて……」


 断りたいとも思うのだが、相手が貴族だけにロイもどうしていいのか分からないのだ。


 ちょうどお茶を持ってきたルーグも聞いたが、ナナシもルーグも素直に喜ぶどころか怪訝な顔をしていた。


 ネームドグリフォンを討伐した1人である。しかし、そのことはほとんど公にされていない。広く周知していないだけだが、知っている面子を考えると広まるとも考えにくい。

 なので、わざわざロイを名指しする必要も感じない。


「確かに貴族ならそうだよね」

「え?鍛冶師さんも貴族だったんですか」


 ルーグの言葉に焦ったようにロイが言う。

 そうは思えないが意外と高貴な生まれだったりするのかもしれないと。


「いや、違ぇよ」

「大体こんなのが貴族だったら世も末だよ」


 即座に否定するナナシにそうそうと頷きながらルーグが肯定し、ナナシはルーグの頬をつまむ。


「ツテがあんだよ。ついでに貴族について勉強もした」

「みたいだから、そこら辺の人より詳しいよ」


 そういうことなのでオーウェンの言う通り力にはなれると思うぞとナナシ。

 まぁオーウェンもモンスター学者としての築き上げた地位があるので貴族相手にもどうにか出来るはずだが、何しろ貴族についてはあまり理解がない。


「たまたま話があると言われた時にオーウェンさんとお会いして、一度保留にした方がいいと言われてのでそうしたんですが……」


 どうしていいのか分からないとロイは困った顔をする。


 ナナシはオーウェンに言われた通り保留にするのはいい方法だと褒めた後、ロイを指名してきた貴族の名前について尋ねた。


 ロイはカバンに入れたギルドからもらった紙を取り出してそれを読む。


「えっと……コネリー子爵です」

「ギルに調べてもらうとして、子爵程度なら断ったところで問題にゃならねぇだろ」

「そういうもの?」


 断ったから報復するなどもまぁありえないわけでもないのだが、ロイの冒険者としての実力などから固執してるとも考えにくい。ついでに言うとロイの容姿も普通だ。


「ロイのランクってまだ1つ上がっただけだもんね」

「そーいうこと」


 まだまだひよっこ冒険者なら大成の見込で声掛けただけという可能性もある。そうじゃなかったとしても対処法はあるとナナシは言う。


「で、もひとつあってロイはここ(職人街)所属の冒険者になってるかんな。強引にこられたとして領主に伝えればいいだけ」

「えっと、この街に領主なんていたの?」

「それらしい建物もないですけど……」


 初耳だと驚くルーグとロイに対してナナシは呆れるようにため息をついて2人に領主はちゃんといると教える。


「基本的に俺たち(職人たち)のやり方に口出ししねぇからな。それ以外なら務めはしっかり果たしてるぞ」


 そもそも領主より各職人たちの長の方が目立っているので知らなくてもおかしくはないのだ。領主自身も黙々と仕事をするようなタイプなので余計に知る機会がなかったりする。


「この街で暮らしてるんだよね?」

「冒険者ギルドの裏、住宅街の手前にちょっと大きな家がそう」

「え?」


 確かにギルドの裏にはなんでこんな場所にあるんだというような、ギルドの敷地内の1部に建てましたみたいな家が1軒だけある。


 ルーグは冒険者ギルドのおしゃれな倉庫かなにかと思っていただけに驚きが隠せない。


「あそこがそうだったんだ」

「元あった屋敷をギルドに改築したって本人から聞いた」


 ナナシも滅多に領主に会うわけではないがちょっと不思議な立ち位置なので、ウォルバーグやギルベルトと一緒に会うこともあると言う。


 一通り話も終わったので装備の微調整だとナナシは、手入れを終えたロイの装備を運びに席を立った。

冒険者ランク


FたまはEからスタートしてD、C、B、A、Sの順でランクが上がっていく。

Cランクが冒険者の壁と呼ばれている。


ちなみにロイはEランク。

クエストを受けた回数などの関係もあるためで、次のランクくらいの実力は持っている。

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