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18 鍛冶師の根幹

 フィリーたちは相変わらず日中はこの辺りの探索をしていていなかったが、今日は朝からずっとナナシがいた。


 ちなみに魔力雨の予定はないが降った時に備え、ナナシがレインのウロコを半分に切ったものをフィリーたちに渡していた。止むまではそれでも被ってしっとしてろと。


 レインを乗り物代わりにしてルーグと畑まで向かうと、食べ頃よりちょっと早めのトマトなどを収穫してマジックバックに詰めていく。


「ルーグ。お前の母さんの料理に役立ちそうなのはあるか?」

「え?うーん、普段から使うものならなんでも役立つと思うけど……」


 難しい顔をしてルーグが答えた。

 ここになる実は美味しかったけれど、なにしろデカい。数日、同じ食材が食卓に並ぶと思うとそんな表情にもなってしまう。


 どうやらルーグの母へのお土産にと言うことらしい。

 食事をほぼ毎日作ってもらっているがルーグの母は金銭を受け取ってくれないのでナナシもなかなかお礼が出来ずにいる。なので料理を作るのが好きなのは知っているので食材ならちょうどいいだろう。


 客はあまり来ないといっても店を長く空けるわけにもいかないので、そろそろ帰る準備はちょっとずつ進めていく。


「こんなもんかな。あんま持ち帰っても置き場所に困んだろうし」

「これだけ大きければね」


 今日食べる分もついでに収穫して、再びレインに乗って洞窟入口まで戻る。

 ルーグもナナシたちがいない間レインが散歩に付き合えと、レインに乗っていたので慣れたものだ。さすがにナナシのように寝転がることはしないけど。


「ナナシよ、そういえばあやつが嘆いておったぞ。お主の部屋の隣は掃除が出来ぬと」

「あー、そういやホコリ被ってたな。すぐ帰るつもりで放置してたかんな」


 レインに言われ思い出したナナシは、少し片付けるかとその部屋に向かった。

 やることのないルーグもついて行く。


 何も書かれていないネームプレートがかかった部屋はナナシの部屋で、その隣の扉を開けると真っ先に目につくのは巨大な炉のようなものだった。外と繋がるようにおおきな穴が空いている以外はルーグがよくみる炉に似ている。


 作り途中なのか部屋の中には物が散乱してナナシの言うことも頷ける。うっすらと被ったホコリさえなければついさっきまで作業していたとしてもおかしくはない。


「この部屋は?」

「作業部屋、だな。ほとんど武器っつーか罠作んのにな」


 まだ戦えなかったナナシが肉などの食材を手に入れるには罠などで相手を動けなくしてからでなければ出来なかった。

 かかる生き物は少なく、罠にかかったところで壊されて逃げられてと初めの頃は罠もほとんど無意味だったとナナシ。


「ま、この森で普通の素材感使ったところで無理があるわな」

「レインさんといるから感覚狂うけど、普通と比べたら大きいし強いんだよね」


 ドラゴンに喧嘩を売るようは生き物はそうそういないこともあるが、そもそもドラゴンが手こずるような相手はそういないためいまいちこの辺りのモンスターの強さがルーグには分からない。

 フィリーたちが大変そうにしているのでなんとなくは察してはいるが。


「少なくとも一角兎が初心者向けじゃなくなってんのは確かだな」

「常識の通用しない場所だよね。なんか、色々と」


 魔力磁場とドラゴンの影響か、よく分からない場所になっているのは確かだ。

 ここに来た人間でまともに知識があるのはオーウェンしかいないのであまり解明されることもないが、ナナシの話を聞いたオーウェンが言うには他にもここに遊びに来る客人たちの影響も受けてるだろうと仮説を立てている。


 普通と違う場所なのは否定出来ないとナナシ。この森を離れて時間が経つほどにここが異常だと結論に至ったらしい。


 ナナシはホコリを払ってハンマーを拾うと壁に作られた道具置き場にかけると、次の道具に手を伸ばした。


「これみたらじーさんにも怒られんな。レインが思い出して助かった」

「この家がキレイなのってその人が掃除してるから?」


 危なかったとこぼすナナシの言葉からルーグは疑問に思ったことを拾い上げて聞いてみる。レインがあやつと呼ぶ誰かがいるのは確かなのだ。


「んにゃ、別のやつ。じーさんは罠の作り方教えてくれたドワーフ」

「じゃあ、武器の作り方とかもドワーフに教えてもらったの」


 ドワーフと言えば鍛治など物を作るのが得意な亜人だ。連合国にいるとされているが誰も細かいことは知らない。


「残念ながら門外不出だって教えてくれなかった。素材の扱い方とお情けで罠の作り方だけは教えてくれたけどな」


 まだ幼い子供だったナナシがどうにかやっていけるようにとドワーフも教えたらしい。

 同じ人としての暮らしはドラゴンよりも近いこともあって結構手を焼いてくれたと言う。頑なに武器などの作り方は教えてくれることはなかったようだが。


「ま、そっから武器も罠の応用で作るようなったんだよ。あいつらもなんだかんだ見せればアドバイスもくれたしな」

「じゃあ鍛冶師の始まりってことなんだ」

「そーいうことになるな」


 ルーグに言われて気がついたナナシはそのことにケタケタと笑った。

 どうにもこの場所が自分の全てのルーツのようだと。

ドワーフ


亜人だとか妖精だとか言われているが詳細は不明とされている。


人間の間でそうなのであって、レインたちドラゴンからすると古くから付き合いのある種族とのこと。

物を作るのが得意なようでエルフなどと協力して住処のリフォームをしてもらうことも。


ちなみにナナシの家の家具はドワーフ作。

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