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ブレイクタイム3

 レインの元に辿り着いたナナシは空を見上げてハリツバメを探した。


 一応ウォルバーグに無事に着いたことを伝えておくためだ。それさえ伝えておけば安心して仕事にも身が入ることだろう。

 ナナシも常連らを任せているのでしっかりしてもらわないと困るのだ。


 相手(ウォルバーグ)知らない(登録してない)ハリツバメでは届けられないはずなのだが、方法がない訳では無い。


 ようはウォルバーグの手に届けばいいのだ。ひとまず職人街まで届けられればあとはなんとかなるだろう。

 保険に数枚手紙を持たせておく。内容は全て同じだ。


 森に近づきたがらないハリツバメに苦労しながら、ナナシはハリツバメに手紙を持たせて本日の食料探しを再び開始した。


 ○○○


「ウォルバーグさん宛の手紙が届いてますよ。あの鍛冶師さんみたいです」


 冒険者ギルドの職員は、冒険者が街の中で拾ったとギルドに届けられた手紙をウォルバーグに届けに来たのだ。


 たまにハリツバメが目的地近くに配達物を置いて終わりなんてことはあるのでおかしなことではない。依頼を請け負ったハリツバメによっては屋根の上などに置いて直接届けないということもある。

 飼い慣らされていない個体でそうしたことはよく起きる。


「ありがとうございます。鍛治長!」


 手紙を届けに来たギルド職員に礼に言ったカウンターにいた若い男は工房に向かって叫んだ。今は見習いたちの指導をしていたはずなので呼んでも問題ないだろうと。


「どうした?」

「あの鍛冶師からの手紙だそうです。冒険者が拾ったらしくてギルドから」

「あいつか。相変わらずよく分からねぇことをする」


 ウォルバーグを記憶しているハリツバメを連れいったわけでもないのに、どうしてこうも正確に届けられるのかと疑問はあるが考えないことにする。おかしなことをするのは今に始まったことじゃない。


 その場ですぐに手紙を開封したウォルバーグは、文面を見て呆れたようにため息を吐いてそれからすぐにその手紙を店のハリツバメに持たせて妻のいる家に送った。


 正直、心配しているのはルーグ(息子)だけではないのだが。


「ルーグ君は無事そうですか?」


 ハリツバメが飛び立ったあと、男はウォルバーグに声をかけた。


 目的地までは知らずともルーグがあの鍛冶師たちとどこかへ出かけたのは知っている。代理をウォルバーグが請け負うこともある都合上説明はされている。


 それに口や態度に本人は出さないがルーグと一応あの鍛冶師のことも心配しているのがウォルバーグをよく知る相手には筒抜けなのである。


「おう、なんとか無事に着いたってよ。それ以外何も書いてねぇよ、あいつは」

「それはよかったですね」


 危険な場所に向かっていたので早く連絡をしてくれるのは嬉しいのだが、それにしてももう少し詳細を伝えてくれてもいいのではないかとも思う。


 ルーグたちの無事をウォルバーグと一緒に喜びつつ男は苦笑いをする。


「彼らしいというか、なんというか……」

「面倒がって言わねぇからなぁ」


 必要そうなことであれば伝えてくるが、それ以上は基本あまり言わないのだあの鍛冶師は。


 まぁ、うかつに喋れないことが多いためにそうなったのだとウォルバーグは察している。


 本人はほとんど言わないが失敗談についてはギルベルトとオーウェンから聞いている。失敗(そういうこと)があって学んだらしい。


「仕方ないってとこか」


 封を開けずに届けられればいいが、もし読まれた場合を考えれば仕方がない。荒唐無稽な話だと笑うだけ済めばいいが万が一を思えば詳しく書かない方がいいだろう。


 ウォルバーグは無事だと分かっただけでも良しとして筆をとった。向こうからこちらに送れるということは、一応ハリツバメも配達をしてくれることだろうと。


 まずはルーグに。

 体調は崩していないかや、怪我をしてないかなどをこちらの様子とともに綴って、そこに鍛冶師が無茶なことをしていないかと付け足した。


 時折、無茶なことを平然とやろうとするあたりウォルバーグとしてはルーグと同じくらい心配している。大人に対してどうかも思うが拭えない不安もある。


 続いてルーグたちが会いに行ったドラゴンに向けて。

 ドラゴンには感謝しかないのでまずはお礼から。

 鍛冶師がドラゴンと出会っていなければ、その鍛冶師がギルベルトに雇われこの街に来なければ、ルーグはもうこの世に存在していなかった。その巡り合わせには感謝してもしきれない。

 それと突然やってきて滞在しているので、迷惑をおかけしていることへの謝罪などを。


 ドラゴンという崇める対象に近い生き物に対しても、なぜだか親という立場が余計にそうさせた。


 そして鍛冶師には書かなくてもいいかと思ったウォルバーグだが、わざわざすぐに手紙を届けてくれているので礼くらいはとペン先を紙につけた直後によぎった直感にウォルバーグは手を止めた。


「あいつ、忘れちゃいねぇよな」


 仕事となれば割と真面目にやるのだが、自分のこととなるといい加減なところがある。そう考えると忘れていてもおかしくはない。


 ルーグに伝えておけばよかったと後悔しながらたった一言だけ書くと、ひとつにまとめてハリツバメに手紙の配達を頼んだ。

 代金は仕事のあまりのレアな金属だ。

ウォルバーグの鍛冶屋


職人街では小規模な店に入る。

しかし、店の技術としては確かで冒険者の装備から貴族などの儀礼用のものまで請け負っている総合的な鍛冶屋である。


職人街では比較的争いが少ない店とされているが、1度始まると長期化することも。客と作り手のこだわりの妥協点が中々見つからないので仕方がない。


客と店員の怒号はわりと職人街の名物になってたりする。

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