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5 冒険者の日常

 船は予定通りに港に着いた。


 やっと陸地だとアルゼルは大いに喜んでいた。

 薬をわすれたせいでずっと船酔いしていていたのでそれから解放されるとなれば嬉しいのだろう。病人のような顔色をしていたし。


 着いた先の町で1泊をして、あとは4日ほどかけて幻影の森まで歩いていく。


 ショートカットコースなので道中の生息モンスターは別ルートよりも強くはなるが、フィリーたちの実力であれば十分だ。ロイだと難しいだろうけど。


 町を出発して1時間ほど鍛冶師たちは平原を歩いていた。この先の分かれ道で林を向かうと幻影の森へのショートカットコースだ。


 先頭を歩くガラドとフィリーは襲いかかるモンスターの核を壊しながら進んでいく。その後ろを歩くシーナとアルゼルは上空からの襲撃に備えながらフィリーたちのサポートをする。


 当初ルーグを間に入れて進もうとしていたのだが鍛冶師は連れてきたのは自分なので面倒を見ると言い、鍛冶師を最後尾にルーグはその前を歩いている。

 鍛冶師の強さは知っているので異論は出なかった。


「なんか冒険者って感じだね」

「ま、実際冒険者だかんな」


 モンスターと戦って倒すと言うのが、やはり冒険者のイメージだけあって目の当たりにするとそんな感想が出てくる。

 まぁ雑談しながらのあたり、ちょっと思っていたよりも緊張感はないが。


絵本(英雄譚)のようにって感じじゃねぇけどな」

「そのようなことが日常的にあったらたまったものではないですよ」


 アルゼルが鍛冶師に突っ込みを入れるが、冒険者のイメージを考えるとそうだと言いながら現実は地味な作業の方が多いとこぼす。


 時にダンジョンと呼ばれる洞窟の探索や護衛などもするが、基本は薬草集めや素材の調達、それと街道のモンスターが増えすぎないようにの討伐だ。


「護衛って言えばさ、貴族のお抱えになる冒険者もいるんだよね?」


 ウォルバーク(父さん)の店にそういう()がいたとルーグは言う。


「うん、いるよ」


 飛びかかってきたモンスターを切り伏せながらフィリーがルーグに返事をした。


 お抱え冒険者といっても、貴族から素材採取や護衛を任される以外は一般的な冒険者と変わりない。違う点があるとすれば衣食住や金銭面の補助があることか。


「一見良いように思いますが、ギルドが間に入らないため問題が起こりやすいんですよ。主人に恵まれればまだマシですがね」

「どういうこと?」

「――小難しい話はそこまで、アルゼル!」


 すぐには理解出来ず首を傾げるルーグだが、シーナが声を上げたため遮られる。空を見上げると鳥のようなモンスターが急降下してくるのが見えた。


 シーナが杖を構えて風魔法を飛ばし、アルゼルが弓で核を撃ち抜いた。連携がよくとれている。


 分かれ道までたどり着くと、1度休憩になった。

 フィリーたちはまだまだ体力に余裕はあるが、ルーグには慣れないはずなので少し長めに。鍛冶師からもいつもよりこまめな休憩を心掛けるようにと事前に言われている。

 ルーグが旅に慣れていないだけが理由ではないらしい。


「しっかり休んどけよ、ルーグ。こっから少しずつ足場は悪くなるからな」

「う、うん」


 鍛冶師に真面目な顔して言われたルーグはわずかに戸惑いながら頷いた。


「フル装備にした方がいいかな?」

「いや、森に入るまでは問題ないだろ。強くはなってくるけどな」


 ここから先はフィリーたちもほとんど知らない場所なので鍛冶師の言うことを信じるしかない。


 それならまだいいかとマジックバックに手を伸ばしたシーナはその手を引っ込め、鍛冶師に対し不躾な視線を向ける。


「あんた、軽装すぎない?ルーグは仕方ないと思うけどね」


 そう、誰も今まで突っ込まなかっただけで鍛冶師の格好はルーグ同様普段着かと言いたくなる服装だった。

 2振りのナイフと数箇所につけたポーチがあるだけマシだが、外を歩く格好としては少々軽すぎる。

 それにはガラドやアルゼルも頷いていた。


「言っとくがお前らの防具より頑丈だからな」


 そう言うと鍛冶師は替えの服を1枚取り出し、休憩している場所から少し距離をとった。魔法をなんでもいいから当ててみろと言う。


 動いたのはフィリーだった。

 なんの躊躇いもなくフィリーは小さな炎の球を鍛冶師が持った服に向かって飛ばした。服は傷1つついていない。


 燃えない時点でかなり特殊だということは見て取れる。


「魔法以外も耐久性あるかんな」

「すごい……」


 性能に感動するフィリーたちは、鍛冶師がこんなものまで作れるのかと驚いていたが鍛冶師は作れないと否定をした。

 これは知り合いがつくってくれたものだと。


「再現すらできねぇよ」

「珍しく弱気ですね」

「いや、古代の遺産(ロストアイテム)とも違うしな、これ。加工ならできっけど」


 使われている素材はそこそこは分かるのだが、どうやったらこんな風になるのか俺にも理屈はわからんと言って鍛冶師はさっさと服をしまう。

 少々得体の知れないものらしい。


 鍛冶師の服装がただの服装ではないと分かったところで休憩を終え、再び歩き始めた。

鍛冶師の服


かなりの耐衝撃、耐魔法を誇るわりとぶっ飛んだもの。

鍛冶師曰く古代の遺産でもないので再現は不可能。というか人間の作れるものではないとか。


作り出すことが出来ないだけであって布としての加工は出来る。


ウォルバーグが言うにはこれ以上ないほどの防具とのこと。

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