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33 そろそろかと思ってね

 ただ待つだけと言うのも意外と疲れてしまうもので、ロイたちがグリフォン討伐に向かってもうすぐ3ヶ月――。


 鍛冶師はもとよりルーグもソファの上に横になり完全にだらけていた。

 その間客が来る訳でもなく、町の人たちからお願いごとをされることもなく平和すぎる時間を過ごしていたからだ。


「もうすぐ着くんだよね」

「予定だとな。ま、フィーたちがいるからあいつ1人よか早く着くだろ」


 かといって、ロイたちのことを忘れているわけでもないが道中の時間がかかるために結果が出るにも時間がかかかり、やることもなさすぎて気がぬけるという結果になりだらけてしまっているのだ。


 ロイたちが出発してすぐに鍛冶師が色々と作って遊んでいたことも大きい。

 ロイの剣の素材当ても鍛冶師に言われた分は当て終わって、そこから先はルーグも力尽きてあまりやる気が起きないようで進んでいない。まだルーグにはヒントなしでは難しすぎた。


 と、完全にだらけてしまっていると書いたが半通常状態なのであり、鍛冶師もルーグもやること(やりたいこと)がなければこんなものである。怠惰の極みとも言える。


「失礼をするよ。――おや、随分と気が抜けているようではないかい?」

「あー、ギルか」


 突然扉が開いて、急な来客(ギルベルト)がやってきた。

 鍛冶師を見て一瞬だけ驚きに目を開いたが、それ以上はなく淡々と彼らの状態を口にする。

 実家に鍛冶師が客人といた頃も鍛冶師はこんな感じだったので見慣れていたし、ルーグに関しては鍛冶師の手伝いで疲れたのだろうと気にしない。


「え、あ、ギルベルトさん?」


 客人がが来たことでルーグはだらしのない姿でいたことで赤面しながら立ち上がり、冷ややかな目でソファに寝転がったままの鍛冶師を見る。まるでお前が唆すからとでも言いたげだ。


「すぐ、すぐにお茶淹れてきます!」

「ゆっくりで構わないよ。もう聞こえていないか」


 慌てるルーグを見送ってからギルベルトは先程までルーグがいた、鍛冶師の対面の席に座ると荷物を置きながら今回の来訪理由を語り出した。


「そろそろかと思ってね」

「よくお分かりで」


 ギルベルトはグリフォン討伐の結果を知るために鍛冶屋まで来たようだ。おそらく真っ先に連絡がここにくると予測をして。


「種明かしをするとオーウェンに会ったのでね。こうして仕事の予定を調整して来たというわけさ」

「そーかよ」


 真面目な振りしてギルベルトは言うが、半分はきっと遊びに来たというのが正しいと鍛冶師は察した。しばらく居候する気なのだろうから間違いとも言いきれないが、何よりの証拠は手荷物のカバンからはみ出したボードゲームの盤だ。


「お待たせしました」

「いつも済まないね」


 お茶を運んできたルーグは鍛冶師を起き上がらせて隣に座る。客人がいる時の定位置だ。


「ルーグ、こいつしばらく居候するってよ。金は払わせるから母ちゃんに伝えといてくれ」

「あ、うん。分かった」

「荷物が重いようならリングは毎日使っていいぞ」


 鍛冶師(3食分)とルーグ(自分)(昼食だけ)の食事だけでも意外と容器の重さもあるので重い。そこにもう1人分だと、鍛冶屋(ここ)まで運ぶのは大変だろうと、鍛冶師は店まで瞬間移動出来る道具を毎日使っていいと許可を出す。

 いつもは5回に1度は歩くと約束してある。


「ま、ギルに取りに行かせてもいいけどな」

「取りに行くべきなのって――」

「君だと思うがね」


 ルーグとギルベルトの視線が鍛冶師の方を向く。


「この店は使えるもんは使う方針だ。それがたとえ一国の王だとしてもな」

「それでは私も文句は言えまい」


 ギルベルトは肩をすくめて笑った。


 それから1週間程が過ぎ、昼近くにオーウェンから手紙が届いた。


『討伐は無事に成功。大きな被害はなく、軽傷者と一部建物の損壊のみ』


 届いた手紙を鍛冶師が読み上げる。

 ロイやフィリー、兵たちについては傷を負うのは当たり前なので省略して書かれていない。それに書かれいないということは動けないほどの重症ではないということだ。


「だってよ」

「良かった。無事なんだ」

「ふむ、陛下にお伝えせねば。これは大きな案件になるだろう」


 無事にネームドグリフォンの討伐がすんだことでそれぞれに安堵をした。みんな無事であることが嬉しい。


 何はともあれと鍛冶師は街の方へ知らせる必要があると鍛冶屋を出ていった。ウォルバークに伝えればすぐに全体に届くだろう。


 ギルベルトは持ってきた荷物から便箋を取り出すと陛下宛にとサラサラと手紙を書いていく。今回の件を踏まえなかなか手の回らない地域への改革、いわば国家プロジェクトとしての話らしい。


「ロイ君たちを実験台にしてしまったのはいささか良心の呵責も否めないが、成功例がなければ国家として動いてはもらえないのでね」


 これで陛下の理想に1歩近づくはずだとギルベルトは優雅に笑うと、書き終えた手紙を折りたたんで封筒に入れると速達として鳥に運ばせた。

 ギルベルトは鳥に持たせる対価をケチることはなく、運び賃として1枚の銀貨を持たせた。


 それからルーグを呼ぶとお決まりの言葉を残した。明日には帰るつもりのようだ。


「これからしばらく休みも難しいかもしれないな。ルーグ君、鍛冶師()のことをよろしく頼むよ」

「あ、はい」


 ルーグが頷き、ギルベルトが満足そうに笑ったところで鍛冶師が帰ってきた。店まで行ってすぐに戻って来るには早いので途中で会ったのだろう。


 あとはロイたちが戻ってくるのを待つだけだ。

ギルベルトの持ってきたボードゲーム


持ち運び用に作られた折りたたみ式。

ちなみにギルベルトが持ってきたのはチェス。


鍛冶師はギルベルトとオーウェンに付き合わさせて出来るが、ルーグはルールをよく知らないため鍛冶師により五目並べに変更されることも。

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