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27 最後の遠征

 数ヶ月の遠征からロイたちは無事に帰ってきた。


 その姿を見たルーグは心底安心したように胸を撫で下ろした。鍛冶師やギルベルトからロイたちが向かった先が危険だと知って心配していた。


 どんなに強いベテランだとしても一瞬の気の緩みが生死に直結するのが冒険家業なわけで、フィリーたちの無事もだが実力が明らかに足りていないロイのことは特に心配だったのだ。


「お、おかえり〜」

「おかえりなさい。今回も無事で良かった」

「うん。ただいま」


 やることがなさすぎて鍛冶師とだらけきっていたルーグだが、フィリーたち(客人)の来訪にシャキッとしてお茶を淹れるために奥に引っ込んだ。


「ルーグ君、やけに張り切ってない?」

「ギルのやつが行先教えたから心配してたぞ。ま、俺も加担したけど」

「そういうことね」


 ルーグの張り切り具合の理由が分かったところでフィリーたちは荷物を置いて中央に置かれたソファに腰掛ける。

 強くなるほど心配されることが減っていくので、ルーグのように純粋に心配してくれるのは嬉しいものである。


「さてと、まずは素材の確認といくか。あと今回の土産話でも聞かせてくれ」

「うん!えっと――」

「お願いします」


 今回の遠征であったことを話すのにフィリーは張り切り、ロイは控えめに今回の成果を鍛冶師に渡した。


 大量の素材が入った袋をロイから受け取った鍛冶師はそれを床に広げると、まず対グリフォン用に使える素材だけを抜き取っていく。


「――ちょっと、置きに行けないじゃん」


 お茶を淹れて部屋から出てきたルーグを待っていたのは床に散らばった大量の素材で、安全に向こう側に行くには()()足場が悪すぎる。

 足で素材をどかして歩く訳にもいかずどうするか考えるルーグにガラドが救いの手を差し伸べて、ルーグの持つトレーを向こう側から受け取った。


「ルーグ君、受け取るよ」

「ありがとうございます」


 身軽になったルーグはしゃがみこんで床に転がっている素材を眺める。


「これ、全部ロイが取って来た素材?」

「うん。何が必要になるか分からないから全部持ってきたんだ」


 フィリーたちに手伝ってもらいながらとはいえかなりの量であることは確かだ。これならいい装備も確実に作ることが出来るだろう。


「フィー、ちょいストップ。これから大事な話」


 フィリーの冒険語りを1度止めた鍛冶師は素材を拾いながらギルベルトが言っていた国からの支援の話についてロイに教える。


 ギルベルトからの情報であれば取りやめになることもないからだ。元貴族ということもあるが、曲者で通ってきたギルベルトが噛んでいるのに国側も反故にしようと思わないだろう。


「少しは希望が見えてきたわね」

「うん。ロイ?」


 ロイは驚きに固まってしまっていて、復帰にはしばらくかかりそうだ。見放されているわけでもないが、そう考えてもいいような場所だけに信じられないのも無理はない。


「では総勢8人ですか。心もとないですが力量でみれば――」

「俺は行かねぇよ」


 鍛冶師も参加すると思っていたフィリーたちは予想外の言葉に戸惑いその様子に鍛冶師は頭をかいた。


「こっちも色々面倒があんだよ。ま、やるだけのことはすっから心配すんな」

「……うん」


 フィリーがしょげたように返事をする。

 かっこいい鍛冶師の姿がまた見られると思っていただけにショックがあるらしい。


 他のメンバーにしてもネームドを倒すのに自分たちの力だけはかなり厳しいことは理解していて、自分たちよりも強い鍛冶師の参加がないとなると不安が残る。


「で、お前ら。時間的に次が最後の遠征になるだろうけど、どこ行くんだ?強化の指針のためにも教えといてくれ」

「わかった」

「ちなみに対グリフォンとして相性の良いものはなんでしょうか」


 ロイを我に返して最後の遠征についての相談が始まる。

 目的地の候補はいくつかあるが、モンスターの強さも違うし何より素材によって装備の強化内容が変わってくる。できるだけロイが使いやすくなる選択が望ましい。


 フィリーたちはここの貸倉庫に入れてある素材で作れるだろうし、素材を買って作ったところで痛むような懐はしてないので問題ない。


 フィリーたちが相談している間に鍛冶師とルーグでフィリーやロイたちの装備を回収して工房に運ぶ。メンテナンスは必要だ。特にフィリーの武器は手入れはしっかりされているが脳筋な部分もあるだけに傷も多い。


「まーた派手にやりやがったな。つっても今回は全員か」

「それだけ大変だったってことだよね」

「数は多い気配は読めないじゃ後手後手にまわっからな。ルーグ、これはちょっとお前に任せる」


 鍛冶師がルーグに渡してきたのはガラドの装備で、ルーグは突然のことに戸惑いを隠せない。


「え、ちょっと」

「最終メンテは俺がやるけど時間短縮。あとロイと……シーナのもいけんな」


 使えるのもは使うがこの店の方針なのだと鍛冶師は堂々と言ってのけて願掛けの1種だと流すように言った。そう言われるとルーグもやらない訳にもいかないとメンテナンスに使う道具を運んでくる。


 才能がないやつに割く時間はないと途中から父は教えてくれなくなったが、この鍛冶師からは手入れの仕方など出来ないからって学んじゃいけない理由もないと教えてくれた。


「失敗しても気にすんなよ。ルーグ(お前)ごときの失敗で壊れるようなもんはねぇかんな」

「確かにそうなんだけどさ」


 もっと言い方ってものがあると思うけどとルーグは鍛冶師に言い返すとメンテナンスのための道具を手に取った。

フィリーの装備


武器は杖の機能がつけられた短剣。

軽装であるが機能を見るとかなりの高性能となっている。


フィリーの性格を考えて鍛冶師が作ったもの。

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