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25 祭り

「ったく、なーんで俺が」


 まぁ暇だからやるけどと鍛冶師は言われた作業を淡々とこなしていた。


 もうすぐ職人街の1年に1度の祭りの日で街はその準備に追われている。

 祭りのメインは各部門の長が作ったものを神様に奉納することなのであるが、やはり祭りとなれば大通りは出店で賑わう。


 特にここ職人街では祭りの飾りも見もので、新米から熟練まで職人たちが作り出した手の凝った作品が通りを彩る。使われるのが一瞬だとしても職人たちは手を一切抜くことなく作っている。


 出店に関しても同じことで他の地域から香具師も呼びはするが、若い職人たちの腕試しの場でもある祭りはとにかく賑わう。


 毎年、祭りが近くなると雑用をこなしてくれていた新米たちの方が忙しくなる。毎年この時期は冒険者の手も借りて準備をしていたのだが今年はモンスターが大量発生しているために、確実に手が空いているであろう鍛冶師にこうして声がかかったというわけだ。


「99年ぶりだって。祭りの時期と大量発生が重なったの」

「キリが悪ぃな」


 鍛冶師のすぐそばではルーグが鍛冶師を手伝っていて、いつもながら雑談をしながらの作業をする。


「でも幸いなことに冒険者の集まる時期で助かったってやつだよな。あと少し遅けりゃ高貴な方々が餌食にってな」

「うん、危なかったよね。護衛はいるんだろうけど、数が数だから……」


 職人街の周りは比較的弱いモンスターしか出現しないものの、弱いモンスターほど大量発生した際に数が多くなる。そのためこの辺りで大量発生となると尋常ではない数のモンスターが発生する。

 なのでいつも通りの護衛の人数ではルーグが言うように対応しきれないだろう。


「数の暴力も意外と恐ろしいかんな。ま、職人街(中に)入っちまえば比較的安全なんだけど」

「あー、対策されてるんだっけ?」

「しっかりとな。対地上ならそうそう破れないと思うぞ」


 どこへ行っても重宝されるだけ技術を持った人間たちが集まる場所だけあって、この場所の防御は磐石だ。国もそのための支援は惜しまない。

 ただ、上空からの対策については研究開発が行われているがしっかりとした成果は出ていないため、飛行するモンスターは脅威になる。


「おー、いたいた。探したぞ」

「父さん」

「大将か」


 雑談多めで祭りの準備を手伝う2人のところへルーグの父親ウォルバーグがやってくる。どうやら鍛冶師のことを探していたらしい。


「材料が足りなくなっちまってよ。用意出来るか」

「ものによる」


 鍛冶師の返答にスノーリザードの皮が大量に欲しいと伝える。祭りに使うもので事前に他所から取り寄せていたのだが職人街にくる途中で事故にあい、届かなくなったのだと言う。その数数千枚に及ぶと言う。


「ちょいと時間はかかっけどな。あと素材くれ」

「持ってきてる」

「さーてと、さっさとやらねぇとな。ルーグ、手伝え」

「あ、うん」


 スノーリザードの皮を受け取った鍛冶師は、自分の持っていた街の飾り付けセットをウォルバーグの手の上に置くとルーグに連れて工房に戻っていく。ついでに仕事が終わり次第ルーグを迎えに来るように残しておく。


 工房に帰ると鍛冶師はすぐにローラーのついた空の箱をを用意して、1箇所に穴を開けるとそこにホースを取り付けてから中に先程スノーリザードの皮を箱に入れて洞窟の前まで運んだ。


「ルーグ。倒し終えたらこれを外に出すから、洞窟の中にそのまま突っ込んでくれ」

「分かった。無茶はしないでよ」

「さすがにそこまでやる気はねぇよ」


 それだけ伝えると鍛冶師は箱を洞窟に向かって転がして自分も洞窟の中に入った。

 待つこと10分ガラガラと大きな音を響かせながら箱が出てくる。ルーグは箱を掴むと洞窟の入口まで引っ張り中に押し込む。


 ウォルバーグからもらったスノーリザードの皮を元手にして、数を増やしていく作戦のようだ。

 皮を落とさない個体もいるかもしれないが、何も落とす素材は皮だけじゃないので増え方はランダムでも減ることは少ないはずだ。それにそこまで強いモンスターでもなければ核と呼ばれる石のようなものを壊せば素材だけ残して消えてしまうため、解体の手間を省ける。


「おもっ。ぐ、動け〜」


 洞窟から出てきた箱をまた洞窟に押し戻すのを繰り返し何度目だろうか、もうすぐ完全に夜になる。だんだん量が増えて重くなっていく素材の入った箱はまだまだ子供のルーグには重すぎて動かせなくなってきた。


 頑張って洞窟まで箱を転がしたルーグは、洞窟の中にいる鍛冶師に向けて叫んだ。もうこれ以上は重すぎて動かせないと。


 ルーグのSOSを聞いた鍛冶師はひとまず今回出したスノーリザードを倒してから出てきた。そこにはルーグを迎えに来たウォルバーグも立っていた。


 鍛冶師はウォルバーグにスノーリザードの素材の入った箱を叩いてみせる。皮以外もあるがおおよその量は判断できるはずだ。


「お、大将。これじゃまだ足んねぇだろ?」

「ああ」

「んじゃ明日もやりますか」


 ルーグがウォルバーグと帰ったあと、鍛冶師はルーグでも簡単に運べるようにと線路を作り始める。

 これならスイッチひとつで動くのでルーグも楽だろう。ついでに待ち時間が長くなって退屈になると思い鍛冶屋の中で待機できるようも軽快な音楽(ブザー)がなるようにしておいた。


 翌日、ルーグに手伝ってもらいながら鍛冶師はウォルバーグの求めるだけの量を集め切った。

 いささか量が多くなってしまったが、ウォルバーグは呆れただけで何も言わなかった。鍛冶師については本人から色々聞いているだけにツッコミをいれるつもりはないようだ。


 ――祭り当日、全屋台(飲食、遊びに限る)制覇と言い出した鍛冶師に対し、巻き込まれる側のルーグは学習能力持ってないのと鍛冶師を必死に止めていたと追記しておく。

スノーリザード


雪のように真っ白なトカゲで、トカゲだが寒い場所を住処としている。

素材は主に装飾に使用されるのだが、スノーリザードは小さく一体から取れる素材の量は少ない。



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