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22 いささか問題がありますぞ

 今日はシーナ発案の菓子を各々が持ち寄ってお菓子パーティーなるものを鍛冶屋で開催中だ。


 昨日ルーグと別れたあとロイにもシーナが連絡していたようでロイもやってきた。


 何も言わずずらっと並べてもいいのだが何を持ってきた順番に紹介することにしてシーナから始まる。


「まずはあたしね。梅味のクッキーよ、気になってたけど1人で食べる勇気はなかったよね」

「梅とは珍しい。確か酸味がある食べ物と聞いています」

「へぇ、そんな味なんだ。あとは普通のクッキーとか持ってきたわ」


 シーナは昨日の宣言通り味が未知数なものを持ってきた。

 聞きなれない梅という食べ物なので確かに食べるのに躊躇ってしまうが、シーナが言うにはよくその店で売り切れているという。


「僕はポップコーン。今日なら色んな味を1度に楽しめると思って奮発したよ」

「あ、期間限定もある」


 ガラドは人数がいれば複数の種類が買っても食べ切れると買い込んできたらしい。普段は湿気しまうこともあり1度にひとつの味しか買うことはないようで楽しげだ。


「オレは朝、母さんとカップケーキ焼いてきた。あとロールケーキ。買うって言ったんだけど、今日のこと言ったら張り切っちゃってさ」


 頬をかきながらルーグが恥ずかしそうに言ったて、大きなあくびをする。朝早くから起きて作ったのだろう。

 昨日家に帰って今日のことをルーグが母に伝えると、めったにないことだからと張り切り始めたと言う。時にルーグの遊び相手をしてくれるフィリーたちへのお礼でもあるが、ルーグはそんなこと知る由もない。


「今すぐ食べたい……」

「美味しいのは分かってるけど発表が終わってからね」

「うん。分かってる」


 ルーグの母は料理上手なので確実に美味しいのはシーナたちもよく分かっている。よくルーグの母は家に招いて料理をご馳走してくれるのでその絶品さは知っている。


「私はですね、この街1番と名高いチョコレート職人のチョコレートを持ってきました。皆さんのレベルに合わせて最高級品ではありませんが」

「あんたは一言多いのよ」


 ひと粒ひと粒丁寧に包装されていて、一目見るだけで高級品だと分かる。それが大量に机に置かれている。

 そうだった。このパーティーは普段の様子からはそんなふうに見えないが上位に位置する冒険者パーティーだとルーグは思い出す。このくらいのものならは簡単に手が届く。


「私はね、ラスクとクッキーとドーナツと、ジャガイモチップスとウェハースとゼリーとプリン、あと――」


 フィリーが買ってきたもの次々に机の上に置いていく。机だけは足りないと運んでおいた木箱の上にも置かれていく。種類も多いがとにかく量が多い。


 一通り並べたあとフィリーはラストだと1番自信のある品を自慢気に取り出した。


「パンの耳とジャム!」

「……それも美味しいからね。ロイ君は何を?」


 わずかな沈黙が流れたあとすぐさま動いたのはガラドで、フィリーに優しく笑ってからロイが喋りやすいようにさり気ないフォローを入れる。


「あ、はい。ぼくは宿の方からもらって美味しかったマシュマロムースを、あと飲み物をいくつか」


 控えめに話すロイは、フィリーたちの持ってきたものに引け目を感じている様子だ。


「重かったんじゃない?」

「ガラドさんに手伝ってもらったから」

「そっか」


 全員が持ってお菓子の紹介も終わり、それぞれが気になるものに手を伸ばして食べ始める。そこに鍛冶師が工房から出てくる。


「なにやってんだ、お前らは」

「もう出来たの?」

「んにゃ、一旦休憩。馴染ませにゃならん」


 素材同士が馴染まないと次に進めないとひとまず店側に出てきたらしい。やることがないのに作り途中のものをじっと見つめる必要もない。


 それなら一緒にとフィリーが鍛冶師を誘い、鍛冶師は参加料を探してくるとパンの耳を咥えて1度奥に引っ込んだ。

 10分ほど経つと、鍛冶師は小さなボウルを2つ持ってやってきた。


「待たせたな。なかったから作ってきたわ」


 1つは淡い色をしたカラフルなキューブで、もう1つは丸い形をした砂色と抹茶色のような物体だった。


「これなに?」

「ラムネときな粉の落雁。どっちも簡易版だけど砂糖とレモンがあったからなー」


 聞きなれない食べ物に全員が固まるが、鍛冶師は気にせずにシーナが持ってきたものに手を伸ばした。


「梅ざらめか。せんべい自体久しぶりだし、味はとやかく言うまい」

「それクッキーよ」

「あーこっちじゃそうだったか。材料自体違うけどな、わかりやすさ優先か」


 バリンといい音をさせながら鍛冶師は1枚を食べ切るとルーグが差し出した水を飲み込むと、他の並べられたお菓子もつまみ始め、フィリーたちも食べるのを再開した。


 そこに来訪者が訪れる。


「鍛冶師殿はおりま――おや、何やら楽しそうなことをしておりますな」

「オーウェンか。時間かかんぞ」

「もちろん順番は待ちますぞ」


 お客は鍛冶屋の常連客だった。

 小太りの男で今日は珍しくきちっとした格好をしている。いつもならモンスターに襲われたままの姿で来るのでかなりボロボロだったりする。ちなみにフィリーたちとも顔見知りだ。


「オーウェンさんも参加してってください。今日はみんなでお菓子を持ち寄ってちょっとしたパーティーです」

「そうでしたか。でしたらちょうど良かったですぞ。先程頂いたものがありまして」

「お、タイミングいいな」


 代表として鍛冶師は受け取るとすぐに開けて、その間にルーグが机の中央に作った空きスペースにそれを置く。それは最近職人街に来る貴族の間で話題になっているホールケーキだった。


 ケーキが切り分けられ、それから見慣れない顔のロイの紹介がされるとオーウェンは顎に手を当て1つも疑問を口にした。


「ふむ、ロイ殿の故郷というのはもしかしてマイルズの村では?」

「そうです」

「やはり。鍛冶師殿、これはいささか問題ですぞ」


 ロイの故郷を確認したオーウェンは鍛冶師に向くと不穏な言葉をこぼした。

オーウェン


小太りの男で独特な口調で話す。

鍛冶師が鍛冶師となる前からの客で、フィリーと鍛冶師が出会う前からの知り合い。


世間慣れしていなかった鍛冶師の世話をしてくれたりと親切な人。

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