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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
技術交流編
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10 Sランク冒険者

 冒険者たちはユーベルの自分も混ぜてもらえるかという申し出に、すぐに順番を譲った。


 ここまでの試合でガルムはともかく、レオンと善戦出来るような冒険者はいないと分かったからだ。

 もし、この場でいい勝負が出来るとしたらユーベルと、本人は弱いとしか言わないがナナシだけだろう。


「お手柔らかに頼むよ。君の秘めたる闘志は荒々しそうだ」


 ガルムと対峙したユーベルがレイピアを構えてそういった。


 その立ち姿には隙はなく、さすがSランクといったところか。


 ――ピイィィ。


 しんと静まり返った演習場で試合開始の合図だけが鳴り響いた。


 開始の音と同時に駆け出したのはガルムだ。


 獣人の素早さを生かした素早い攻撃を繰り出すが、ユーベルはその場から動かずなんなくガルムの攻撃をいなしていく。


「先程までの者と動きが違うのだな」

「冒険者のトップランクなんだと」


 レベルの違う人間だと言うレオンに、ナナシがさっき知ったユーベルがSランク冒険者と言う情報を伝える。


「そうであったか。ガルムが押されるのも頷けるな」

「運だけでなれるもんじゃねぇかんな」


 ランク昇級試験もあるので実力もなければなれないのは確かだ。


「ならば、アサヒ殿もSランクであるか」


 その場から動かないユーベルを見ながらレオンが尋ねる。


 レオンの感覚で行くならばアサヒはユーベル以上の実力者だ。むしろ、同等と呼ぶのは失礼なほどとは思うが。


「能力だけみりゃSランク確定だろうけどな。あいつは色々やらかしてるみてぇでBランク」

「放置できないと思うとつい動いちゃうんだって」


 本人は多く語らないが、悪徳組織を潰したりと色々とやっている。

 冒険者のルールとしては逸脱することもあるので、ギルドのルールに乗っ取り降格処分などが下されている。


「護衛職ゆえか。民の安寧を思えばと」


 レオンには元同職としてそのアサヒの気持ちが分かるらしい。


「やはりまた酒を酌み交わしたいものであるな」


 そう言いながらレオンは斧を担いだ刹那――ガルムがユーベルの一撃によって吹き飛ばされた。


 さすがにユーベルも1歩も動かずとはいかなかったようだが、まだ涼やかな甘いマスクは崩れていない。


「おー派手に飛んだなー」

「ガルムさん……」

「行くとうるせぇから行かなくていいぞ、ルーグ」


 ガルムにユーベルが勝ったことで冒険者からは歓声があがる。このままレオンにも勝ってくれと。

 自分たちが勝てなかった分、ユーベルに期待している。


 ユーベルはレイピアを天高く掲げパフォーマンスとしてガルムへの勝利を見せたあと、レイピアの先をレオンを向けた。


「受けて立とう。休息は必要であるか」

「不要だよ。彼で身体が温まったところだ」


 休憩は要らないと言うユーベルの前にレオンは出て斧を構える。


 すると向き合っただけだと言うのに緊迫した空気が流れ、対戦開始の合図が鳴った。


 互いに隙がなく武器を構えたまま睨み合いが続き、先に動いたのはレオンだ。

 獣人の素早さを持って一気に距離をつめると大斧をを振るう。


 細いレイピアでは受けきれないと判断したユーベルは頭を低くしてそれをかわし、レオンの背後に回るとレオンの首筋にレイピアを向ける。

 しかし、レオンは斧の柄でそれを防ぐと瞬時にユーベルの方への向き直した。


「人間にも強いのがいるんだな」


 ナナシのそばまで来たガルムがそう言った。

 人間の獣人のような素早さも力もないと言われているだけにガルムは驚きが隠せない。


「冒険者のトップランク。まぁ、人間の中で最強に分類されてるってとこだな。まだ可愛いもんだけど、ユーベル(あいつ)は」

「そんな奴が?」


 信じられないというのがガルムの率直な感想で言葉が出てこない。


「バケモンみたいなやつもいるんだよ」

「アサヒさんとか?前にレオンさんと引き分けてたし」

「詳しく聞かせ――」


 ルーグの言葉にガルムが詰め寄った瞬時――奇声が響いた。


「きぇぇい!」

「な、なに?」

「ユーベル。豹変するやつみたいだな」


 のんきにナナシが言うので少し精神的に余裕が出来たが、何度も聞こえる奇声に恐怖は拭えない。


 淡々とユーベルの攻撃を受け止め、流し、反撃をするレオンとは反対に、ユーベルは鬼のような形相をして奇声を上げながら必死にレイピアを振るう。


 しかし、レオンには届かない。


「なぜだ、なぜ届かないんだ?!」


 滅多にいないに自分よりも強い相手にユーベルは焦りを感じ始める。それでもまだ冷静さが残っているのはさすがSランク冒険者というところだろうか。


 人間代表のユーベルに声援を送る冒険者の声をバックにナナシがつぶやく。


「まー相性が悪いわな」

「どういうこと?」


 ルーグが聞けば、ナナシはそもそもレオンのような少々の攻撃をものともしないタイプに、ユーベルの手数で勝負するような戦法だと相性が悪いという。


「つってもレオン自体が天賦の才持ってんかんな。並大抵の天才じゃ勝てるようなこともねぇだろうけどな」


 素早い動きでレオンの重い攻撃を交わし続けていたユーベルの動きが次第に遅くなっていく。

 獣人の体力、それと単純にユーベルがレオンに動かされすぎた結果である。


「我が国でも貴殿ほどの猛者はそうおらぬ。楽しいひと時であった」

「な――」


 目にも止まらぬ速さで斧を振るったレオンの一撃はユーベルの腹を直撃し、ユーベルは吹っ飛び演習場の壁の一部が壊れる。


 近くの冒険者に上級回復薬をユーベルに渡すようにして、全力でやりすぎたかと反省するレオンのところへナナシは向かった。


「お見事」

「しかし――」

「職人の力なめんなよ。長レベルのはお前の一撃くらい余裕で耐えてみせる」


 回復薬をかけられて立ち上がったユーベルの防具は少し歪んでいるものの、壊れることなく形を保っていた。


 レオンもガルムもそれには驚いていた。


「いい宣伝になったな」

「ナナシのとこはお客さん増えないけどね」

「ま、1人くらいは紹介状持って来るんじゃねぇの」


 レオンがユーベルと握手を交わしているとき、ナナシとルーグはそんな会話をしていた。


ユーベル


世界でも数人しかいないSランク冒険者。


容姿が良く言動から王子様のようだと女性人気が高いが、追い詰められたときなどの豹変した姿を知られるとファンがごっそり減る。



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