第一章-④
三時間後…
「ふわぁぁ、おはようフレイヤ、アルテミス って何してるの…?」
目を覚ますと、フレイヤとアルテミスが何やらゴソゴソしていた。
「あら、目を覚まされたのですね。少々お待ちください、この金髪を飛ばしますので」
「はぁ~!?そんな簡単に負けないわよ! って、待って、それはやめて!タイムタイム!」
「終わりです!吹っ飛びなさい!」ドォーン!KO!
テレビ画面には、デカデカとKOの二文字が出ていた。
「あぁぁ・・・また負けた・・・」
「やりました・・・」
そこには頭を垂れたフレイヤと、何故か腕を上にあげて達成感あふれるアルテミスがいた。いったいどれだけ白熱して、ゲームをしていたのだろうか。気になるところだが・・・
「フレイヤ~、そろそろ時間だよ。家でないと遅れちゃうよ」
それより、バイトに遅れてしまうので、そんなことを気にせずフレイヤに声をかける。
「はっ、そうだった。アルテミス覚えてなさい!帰ってきたらギッタギッタにしてあげるわ!!」
ゲームのコントローラーを話して、服を着替えるために自分の部屋に行く。
嫌なに、その最近悪役が絶対使わなそうな捨て台詞・・・
「はいはい、覚えておきますよ。フレイヤ」
いつものことなのでアルテミスは「またか」といった感じで対応している。そんな二人のやり取りを耳にしながらフレイヤの準備が終了したので一緒に家を出る。
「それじゃあ、行ってくるね。また何かあれば連絡するから」
「わかりました、お気を付けて翠波様」
古具屋『HEAVEN』内、女性二人が何やら話していた。
「ふわぁぁ~ 今日もなかなか客が来ないね~」
「それは、其方の目利きがあまりよくないからではないか?」
「そんなこと言わないでくださいよ、これでもしっかり商品は選んでるんですよ。例えばこれ!あの、木曾義仲が使っていたという太刀なんですよ。普通に武器として使うもよし!戦神に使わせて、開放するもよしですよ」
「またそんなもの仕入れおって‼妾は騙されんぞ!そんなものただの偽物じゃ!しかもそれは太刀ではなくただの張りぼて。こんなもの売りに出したら、さらに経営は悪化してしまうぞ!今はあやつらのおかげで何とか成り立っておるが、もしあやつらがおらなかったらと思うと…」
「そんな~あまり怒らないでくださいよ~」
カランカラン
「こんにちは~来ましたよ黎芭さん、メティスさんって何言い争ってるんですか二人とも?」
「やっほ~来たよ~メティスって何してるの?」
この二人はこの古具屋『HEAVEN』を開いている『神約者』恵導黎芭と契約神メティスさんで、いつも黎芭さんが変な古具を仕入れてはそれを見抜けるメティスさんが叱っている。
「おお、ちょうどよいところに来た。おぬしらもこやつを叱ってくれ!また変なものをつかまされおった!」
「変なものって言わないでくださいよメティス。それにこれは張りぼてではなくてれっきとした古具なんですから!」
「えっ本当ですか?黎芭さん少し見せてもらっていいですか?」
「うん別にいいけど…」
そう言って黎芭さんからその太刀を受け取ると、手に何か変な感触があった。「これ、なんか変な感触するんですけど…」見てみると、持ち手にセロハンテープが張ってあった。「あっ、これメティスの言う通り張りぼてね」フレイヤが気づいて、はがそうとする。
「えっ本当なの⁉」
結構驚いている様子を見るに、本当にわからなかったようだ。
「ええ、ほらこの部分テープを隠すようにしてあるんですよ。そして、隠してあるものところからそのテープを外してみると、ほら」
そう言ってテープを完全にはがすと中から普通の木刀の持ち手が現れた。ということは、きっと刀身もアルミテープが張ってあるものだろう。
「うわぁぁ~ん、また騙された~」
「はぁ~おぬしの人のよさは妾がよく知っておるが、このようなものを仕入れてしまうのは、癖なのかはたまた人の性なのか…」
黎芭さんは古具屋を営んでいるが、このように何でもかんでも古具らしきものを仕入れてしまう癖があり、たまには当たりの古具があり、古具を見る目は確かなんだが収集癖がすごく、ほとんどがこのような偽物をつかまされても、仕入れてしまう。
「そんなものを人の性にしないでください。お願いですから」
「む?何故じゃ?こやつはよく『これを仕入れてしまうのも人の性だから』と言って、よく仕入れよるぞ」
「それは、黎芭さんだけですから。それに、僕も一応古具を扱いますからすぐわかるんですけど、何でもかんでも古具らしきものを仕入れようとは思いませんよ。それに店番をしに来たんですよ」
そう僕もバイトはこの古具屋の店番である。店番というか、来店客に対応する博物館の職員みたいなものだ。
「おお、そうじゃったな。すまぬすまぬ、こやつを説教するのに夢中で忘れておったわ。それに、今日は『表だけでなくてな。『裏』の方の仕事が急に入りおった、頼めるか?」メティスさんの言った『裏』つまり、【執行者】としての仕事も入っているということだ。
「わかりました。アルテミスにも後ほど伝えておきます、フレイヤ仕事に入るよ」
「わかったわ~、翠波君。」そう言って、僕らは仕事着に着替えて店番に入った。
「ご来店ありがとうございました~」
最後のお客さんが出ていった。外は、すっかり暗くなっている。
「お疲れ様、翠波君・フレイヤさん。ご飯家で食べてく?」
台所から、顔を出しながら黎芭さんが聞いてくる。
「食べていくわ~ いいでしょう?翠波君」
「一応アリスにはご飯を食べてくると連絡はしてあるから、お言葉に甘えようか」
「わかったよ。それじゃあ今から作ってくるね」黎芭さんは【執行者】の仕事と店番の仕事が重なると、夕食をご馳走してくれる。情報屋兼仲介役としてだけでなく、同じ学園の後輩として組んでくれている本当に頼りになる人だ。
「ほんと、いい人だよなぁ」
「浮気かな?翠波君」「フレイヤ?」まさか今の独り言聞かれていた、聞かれたな。
「浮気じゃないって、ただ人物的に好感の持てる人物だなぁって思っただけ」
「そうなんだ、良かった。アルテミスや私がいるのに他の人になびかないもんね」
良かった、機嫌を損ねなくて。迂闊な発言をすると、フレイヤは機嫌を損ねる、特に嫉妬の感情が大きくなる。この時のフレイヤは本当に怖いし、対処が難しい。しかも権能を使ってくると、確実にこっちが負けるので機嫌を損ねる前に抑える。
「夕飯できたよ~」どうやら、夕飯が出来たみたいだ。香ばしい匂いがこちらに漂ってくる。
「飲み物はどうする?今うちにあるのは水と紅茶があるが・・・」
「私は紅茶、翠波君は水だよね?」
「うん、そうだよ」今日の夕飯は黎芭さん特製のパングラタンだ。さすがは黎芭さん、料理の腕も確かだ。
「「「「いただきます」」」」
「う~ん、相変わらずおいしいわね黎芭」
フレイヤが絶賛している。フレイヤは結構グルメな一面もあるので、その舌に合うということは料理の腕は高いことを表している。
「ありがとう、フレイヤさん」物凄くいい笑顔だ。
夕飯を食べ終わると、メティスさんが切り出してきた。
「それはそうと、わが契約者よ。急に入った『裏』の依頼内容をこやつらに聞かせてやらなくてもよいのか?」そう言われた黎芭さんはハッとして、説明し始めた。
「そうだったね。今回の依頼内容は、ある契天者の無力化と捕縛」
たった一人契天者の捕縛なら、『機関』が動くはずだけど・・・?何で僕たちに依頼してきた?何かあったのか?
「何で依頼してきたって顔してるよ、翠波君」
やっぱり黎芭さんに気付かれていたか。
「ええ、実際おかしくないですか。契天者一人を捕縛するだけなら、【執行者】として名が売れている僕たちではなく、『機関』の捕鎖官が向かえばいい話でしょう?」そう。捕鎖官なら、すぐに捕まえられるはずなのだ。
「それが、一度は捕縛できたんだけど急に力を増してクラスが上がったみたいだって」
「そんな馬鹿な‼一度決まってしまったそう簡単にクラスは上がるはずがない!」
クラスとは、『契約魂』の総量のことであり、これは生まれた瞬間から決められたものである。上げる方法は、地道に知識を蓄え自らのものにする、契約したものとの結びつきをより強くするなどの方法はあるが、急にクラスが上がることなど聞いたことがない。
「だけど、実際に上がって手に負えず逃げられてしまった。だから無力化と捕縛をしてほしいと依頼してきたみたい。」
「…わかりました。今回は、万全を期して依頼に臨みます。フレイヤ、アルテミスに連絡した後に出るよ! アルテミスとは現地で合流って伝えておいて」
「わかったわ」そう言って、フレイヤはアルテミスにスマホを使って連絡する。
「今回の依頼、蓮は呼びますか?」
蓮も共に【執行者】をやっているので、依頼が入ったことを伝えた方がいいだろう。
「今回の依頼は急だったから、翠波君一人でお願い。それに翠波君なら、大丈夫だよね?それに情報は後で蓮ちゃんにも共有しておくから」
「わかりました」
話しながら、僕らは準備を進めていく。
「翠波君、いつものインカム渡しておくね」
このインカム黎芭さんお手製のインカムで、これを使って依頼中黎芭さんと通信している。
「今回は、さすがに妾も出るぞ。クラスが上がるなどあり得ぬことだ」メティスさんは知恵の女神ではあるが、『あの』アテナの母でもあるので、戦闘力は高い。これほど心強いものはない。
「わかりました。フレイヤ!」「アルテミスも準備完了したみたいよ。今から、家を出るみたい」「よし、これより依頼を開始します!」「「「了解」」」




