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女神と共に、相談を!  作者: 沢谷 暖日
仲良し少女の恋愛相談

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36/83

好きの大きさは星くらい

改稿して投稿し直しました

「ちょっ……。こ、心音」


 ロッカーの中で、一分以上合わせた唇。それが離れ。

 少しだけ冷静になった私は、名前を呼んだ。

 その名前を呼ぶのに、少しだけ躊躇った。


「どうしたんですか? 伊奈さん」

「どうしたんですか、じゃなくて。急にどうしたの? こんな、キツキツな場所に押し込んで……」


「それはですね。今、ここを訪れた人に見られたら色々危なそうじゃないですか……。それに、まだ、キスもし足りないですし……」

「……心音って、どスケベさんなんだぁ」


「……嫌でしたか? 伊奈さん、私がキスした時、なんだかノリノリだったじゃないですか……」

「……そ、そうですか、ね?」


「そうです。とても凄かったですよ……。ごちそうさまでした……」

「どういたしまして? ん?」


「もう一回しますか? キス。……というか、したいです。させてください」

「──だ、ダメ! もう下校時間だから! おわりおわり!」


 狭い空間に響く私の声。

 言ったはいいが、心音が障壁となっていて中から出れない。

 というか、狭すぎるんだよここ。

 ハウスダストみたいなのも舞っててなんか気持ち悪いし。

 待って、ここは学校だからスクールダスト?

 いや、更に待て。今はそんなこと気にしても仕方ない。


 キスも、せめてここじゃないどこかでして欲しい。

 にしても心音って、本当に変態なんじゃないかって思う。

 わざわざ、こんな場所に隠れて。それもキスをするためだけに。

 こういうのって……欲求不満って言うのかな。


「……伊奈さん。私のこと、欲求不満おばけだと思いましたか……?」

「なっ──!」


 まるで心の内を見透かされているようで怖い。

 驚きを隠せないでいると、心音の溜息が私の背筋を撫でた。


「……ほら図星。……いいですか? 私は欲求不満です」

「んんんんんん⁇」


 まさかの回答が心音から飛び出る。


「正確に言うと。……私って、伊奈さんに対する想いを、ずっと、ずっと、秘めてきたわけじゃないですか?」

「う、うん」


「……そして、一昨日。その想いが、伊奈さんに伝わって、今は私は幸せの絶頂にいるわけなんですよ……」

「ど、どうもしちゃうね……」


「伊奈さん……。私の好き度は、どれくらいの大きさか分かりますか?」

「んー。……すごく……かな?」


「いいえ。私の好きの大きさは、星くらい大きいですよ……」

「確かに、大きいけど……」


 なんか例えが分かりづらい。


「星って、小さいように見えて……大きいんです。そういうことです」

「けど、星ってたまに、流れて消えちゃわない?」


「た、確かに……。……じゃあ、天王星くらいですか、ね」

「小さいように見えて大きい星じゃん、それ」


「そうなんです。ともかく、それくらい好きなんです……」

「す、ストレートですねー」


「……だから、キスとか、たくさんしたいんです」

「そ、そーなんだー」


 私は照れつつも返事をした。というか、この話の間。ずっと照れていた。

 心音は、めっちゃ私のことが好きなんだって。

 そんなにも、私のことを求めているんだって。


 この崩れまくった顔を見られないで済んで、狭くて暗いこの空間を初めてありがたく思った。


「……」


 なんとなく気まずくなって。


「……出よっか」

「はい……」


 そんな風に、すんなりと掃除用具入れから脱出した。

 埃をパンパンと払って、見えない教室の中で自分のカバンを探し。

 そういえば、と。スマホを取り出して現在時刻を確認した。


「七時……三十分」


 結構まずかった。

 もう。正門が閉まる時間だ。


「こ、心音! 急がないとヤバイ!」


 返事をしない心音の手を取って、私たちはダッシュで教室を後にした。


 結論から言うと、私たちは無事学校を脱出した。

 思えば、見回りの先生に見つかる可能性もあったけど、まぁ無事だった。

 心音も、学校の外に止めてあった母親の車に乗り込んで、そこでバイバイをした。


 私は家への帰り道。

 そして急に訪れる孤独感。

 けれど。今日あったことを思い返すだけでも、幸せな気分になれるものだ。


 住宅街を歩く。

 そこで、ふと。気になった。

 いつもその横を通るはずなのに、大して気にもしていなかったが。

 私の通学路の途中には、美結ちゃんの家があった。

 と言うより、今、そこにある。

 割と普通の大きさの家。電気は付いていた。

 表札に刻まれた名は白河。美結ちゃんの姓だ。

 車は二台停まっている。多分、父親と母親の車。

 美結ちゃんは、中学生の頃引越しをし、高校生になった今、この辺りに戻ってきたと、そう言ってた。

 それが恐らく、元々住んでいたこの家なのだろう。


 そこで一つ、疑問に思った。

 なぜ今まで美結ちゃんを目撃しなかったのか。

 こんなに近所なら、四月から数えてこの五ヶ月間、一度は目にしていいものではないのだろうか。登校中、ないし、下校中。

 だけど。一度も見かけなかった。


 気にしすぎ?

 だよね。

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