尾行特有の隠れんぼしている時のようなアレ
遊園地のゲートから数十メートル離れた、一際大きな木の陰。
その場所に身を隠し、入り口側をひょっこりと覗く。
私が前、両肩を掴む天崎さんが後ろ。
はたから見たらこの状況は変だろう。
……実際、横を通り過ぎる人たちから変な視線をくらっている。
痛い視線と、心臓の鼓動が混合して。なんか辛い。
そんな状態で五分くらい待機したのち。
「……見つけた」
私たちの逆方向から歩いてくる見慣れた人影。
楓花と桃杏ちゃんだ。
何かお喋りしながら、チケットセンターへと歩いていく二人。
二人とも笑っていて、その手は繋がれていた。
「……仲は普通にいいんだよね。あの二人」
なんて少し意外に思いつつ。
チケット購入を済ましたらしい二人を、離れたところから追う。
なぜか天崎さんはずっと私の肩を掴んでおり、これじゃまるで電車ごっこをする子供のようだけど、とりあえずそっとしておく。
別に重いわけでもない。
普段なに食ってんだってくらい、重さはさほど感じなかった。
強いて言うなら、そこにあるのは違和感だけ。
「よし。ゆっくりとついてこう」
聞こえるわけでもない言葉を独り言のように吐き、私はゆっくりと体を動かす。
入場券だけは今程に買ったので、とりあえずバレないように背中を見守る。
そろりそろり。
そういう風に追っていくうちに。
身体がなぜか、ゾクゾクと震える。
お手洗いに行きたくなるような、何かがこみ上げてくる、そんな感じだ。
そんな時、その震えとリンクするように、ポケットのスマホも震えた。
気づけば、肩から片方の手が消えている。
これは天崎さんが何か送ってきたな、と。
前方の二人に注意を向けつつ、私はスマホを取り出し見る。
『伊奈さん! 今、身体を震わせてましたよね? それが、尾行特有の隠れんぼしている時のようなアレです!』
なるほど。
と。そう、妙な納得をしてしまう。
そのまま『なるほど』と返信して、ラインを閉じようと──。
「あ……」
気づく。
天崎さんの他にもう一人。
桃杏ちゃんからも何か届いていた。
それが届いていた時刻は現在から三十分ほど前。
それを開いてみると。
『頑張ってきます! 告白できるか分からないですけど……。まぁ、いい感じになったらそうしてみようかなって。健闘を祈っといてください、お姉さん!』
『健闘を祈っといてください』が、上からなのが少し引っかかる。
が、これを送った桃杏ちゃんの心の中は、きっと楓花への重なる想いでいっぱいいっぱいだったのだと思う。
だから、ここは普通に。
応援の意味をたくさんに込めて。
『頑張って!』
……。
いや。
『くれぐれも、変なことはしないように、お願い』
昨日の天崎さんとのやりとりがふと頭をよぎったので。
そう。付け足しておいた。




