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女神と共に、相談を!  作者: 沢谷 暖日
恋する乙女の恋愛相談

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16/83

聞こえる親、聞こえない子

 尾行をするので、大したおめかしはしていない。

 白のシャツに、普通のパンツ。

 それらを着衣し、家の前で天崎さんの到着を待つ。


 もう九月も中頃。

 夏のあの暑さから解放される思っていたが、意外とそうでもなく。

 その暑さを紛らわすため、私は天崎さんと楽しく(?)ラインのやり取りをしている。


『ねね。天崎さん。今日の作戦会議しよーよ』

『いいですね! どういう作戦でいきましょう』


『尾行をします! ばれそうになったら逃げる! 以上!』

『あれ? それだけですか?』


『それだけです! あ、でも不審に思われないように行動することも大事です!』

『はい! あ、あと。思ったんですが、何に乗りましょうか! 乗り物!』


『いやいや、あくまで尾行だよー。楽しみに行く訳じゃないない』

『そうですか……。あ、でも尾行って凄くアドレナリン出ますよね! 隠れんぼしてる時のあれです!』


 ……。

 こ わ い。


『それは、ちょっとよく分かんないかなー』

『残念です。……あ、あと三秒で着くと思います』


 「え……」と漏らすと、同時に顔あげると。

 白い軽自動車がそこに止まっていてた。


 後部座席のウィンドウが下がり、その場所には天崎さんがいた。心音の方の。

 白いワンピースを着ていた。

 尾行向きの格好ではないとは思うけど、それよりも先に可愛いと思ってしまった。

 制服の彼女しか見たことなかったので、私服というのはすごく新鮮だ。

 女神なだけあってやはり何着ても似合うなと、羨ましく思ってしまう。


「「……」」


 そんな彼女と。

 目は合っている。

 けれど言葉じゃ伝わらないし、沈黙が訪れる。

 向こうは向こうでいつもの真顔だし。

 ……気まずい。


 とりあえず。

 ラインで聞いてみよう。

 右手に持ってたスマホを私の目線に持っていく。


『乗っていいですよー!』


 と。気づかぬうちに、そうメッセージが届いていた。


『じゃあ、お願いします』


 窓から顔を覗かせてる彼女に会釈し、私はそこに向かう。

 律儀に後部座席のドアを開いてくれて。

 そのまま、よいしょよいしょと、私が座るスペースを空けてくれた。

 ……優しい。


 ありがとう、と小さく呟いて、運転席に座っている天崎ママへと一言。


「よろしくお願いします!」



※※※※※※



「君が噂の伊奈ちゃん?」


 車に乗って約一分。

 前の席から聞こえてくる、明るい声。

 天崎ママの第一声がそれだった。


「え! 噂……ですか?」

「そうそう。心音がいつも好き好き言ってるからさー」


 天崎ママの声は、明るいだけでなく、大きい。

 うるさいくらいによく聞こえている。

 ミラーから見えるその顔は、さすが女神の生みの親。

 神の親ってなんだよって感じだけど、とにかく美人だった。


 にしても。

 いつも好き好き言ってるんすか、天崎さん。

 言う……というか、ラインとか、ホワイトボードで伝えるってことだろうけど。


 改めて、好き好きって。

 ……はっず。


「そ、そうなんですね。……恥ずかしい」

「そうなのよ。最近もさ、伊奈ちゃんとコミュニケーション取れてすっごく喜んでたんだよー。これからもよろしくしてあげてね。この子、友達全然いないからさ」

「どうも。よろしくされちゃいます」


「ありがとうね。……それで、お二人はお付き合いしているの? それ、私きになるかなー」

「あーでも。告白は──ぎょっ!」


 「告白はされました」と言いかけたところで、私の脇腹に天崎さんの手が刺さり、発言が中断されてしまう。

 彼女の方に目をやると、細く綺麗な人さし指で私のスマホを差していた。

 下に向けていたスマホを上に向ける。


『母さんと何話してるんですか?』


 送られてきていたそのメッセ。

 まるで私たちの会話が聞こえているようだ。


 ……って。天崎ママは耳が悪くないのかな?


 んー。どうなんだろ。

 質問するにも結構デリケートな内容だし。

 ……ま、いっか。


 ぼやけた焦点を画面に合わし、返信する。


『えっとね。天崎さんが、私のことを好き好きって話をしていまして』

『やめてください』

『すみません』


 横からの殺気を感じ取り、流れるように謝罪した。

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