妹とその友達はお似合い。だと思う
そんなこんなで、天崎さんと桃杏ちゃんはライン交換をしましたと。
『私、伊奈さん以外とラインの交換なんてしたくない!』なんて、謎なことを伝えられたけれど、それでも渋々交換をした天崎さんであった……。
そんなモノローグをする、部室外の廊下。
そう。私は今、部室にいない。
なぜか。本当になぜか、私は追い出されてしまった。
……何も心当たりがない。
ただ桃杏ちゃんに、思い出したかのように「お姉さんは出てもらっていいですか? ラインを覗かれたくないので」と言われただけで。
何も悪いことしていないのに……。
まぁ。後で天崎さんにどんな話をしたか聞けばいいか。
と、そんなことを考えていた時。
「あ、お姉! 何してるの?」
そう私の耳に、明るい声が入り込む。
「部室の前で哀愁漂う感じで座っちゃって。追い出された?」
目を向ける。
片手にトランペットを持った妹。
しゃがみこんでいる私を、哀れむように見下ろしている。
今は部活の途中だと思うけど。何をしに来たのだろうか。
「楓花? 何しに来たの? 私は追い出されてここにいるけど」
「私は個人練。桃杏ちゃんどうしているかなと。ここまで音楽室からまっすぐ歩くだけだし、ついでにと思ってね。入っていい?」
「い、今は! ダメ!」
今は。
おそらく、桃杏ちゃんが楓花に抱くあーだこーだを、天崎さんと話し合っているはずだから。
幸い話し声は聞こえないが、楓花が侵入してラインのやり取りを覗かれたら、それはまずい。
「……まぁ、悩みを打ち明けるって結構プライベートなことだもんね」
「おぉ。我が妹ながら中々人のことを理解する気持ちを持っている。さすが」
「もう。お姉は、私のことなんだと思ってるの? まぁいいや。もう少しかかりそうなら私もう行くね」
「はーい。練習がんば〜」
「頑張る〜」
歩きながら、顔をこっちに向け手を振る楓花。
私も振り返すと、満足げな顔で前を向いた。
だが、その時。
──バン!
勢いのある音を立て、私のすぐ横のドアが開かれる。
その音に反応した私と、前を向いたはずの楓花の視線がその場所に集中した。
桃杏ちゃん。その子が焦った様子でそこにいた。
「ま、待って!」
張り上げた声。
よく見れば、顔は少し赤に色づいていた。
彼女は息を少し吸った。
そして──
「わ、私も一緒行く!」
どこか緊張したように。
されど恋する乙女のように。
快活に、私の視線なんて気にせず言い放つ。
「いいよー。もう相談は終わった?」
やはり妹は鈍感系というか。
きっと桃杏ちゃんが今、抱いているであろう複雑な感情について何も理解をしていないんだろうな。
それを思わせる、穏やかな表情だった。
「う、うん!」
「そっかー。じゃあ練習いこ!」
その二人の背中を見送り、中々にお似合いの二人じゃないかと。
そう思った。




