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第五話

いよいよ金曜日にすら間に合わなくなった・・・ごめんなさい。

では、どうぞ

 魔導高校というのは基本的に全寮制だ。

 これは魔導競技選手になるのならともかく、魔導師の大半の就職先が国防軍や警察など少なくとも初めの内は寮生活を送る場合が非常に多いという理由から。

 とはいえ、寮と言っても少し狭い学生向けワンルームマンションのようなもので基本的に一人一部屋が与えられる。月に2回ほどの抜き打ち検査があるけと。

 部屋割りとしては1つの学年が一つの寮を使い、下の方の階に男子、上の方の階が女子となり最上階は特例生徒の男女混合階兼予備部屋となっている。

 食事は自炊するか、学食を利用するかになる。多くの生徒はパンなどをストックしておいて基本学食、緊急時はそれらという風にしているらしい。

 僕と天音は第二寮の最上階、天城兄妹を挟むように部屋割りされた。無論偶然ではない。


 「ユキ~これは持ってっていいのか?」

 「うん。それの回りの段ボール5個も天音の部屋に置いとこうか」

 「りょーかいー、んじゃ持ってくぜ」

 「天音だけなら大丈夫だけど、廊下には他の人もいるんだから横着しないで何回かに分けて運びーよ」

 「わかってるって」


 よっこいしょと段ボールを2つ抱えて天音が部屋から出ていく。

 二人で話し合った結果、僕の部屋を生活部屋、天音の部屋を作業部屋兼物置にすることになりこうして荷物を仕分けしている。抜き打ち検査が機密保護のために特例で免除されるからできることだよね。やー役得役得。

 ちなみに天城兄妹の方はまず妹の方を片すことにしたらしく、僕の隣である兄の部屋は誰もいない。うん、この隙に色々やっとこう。


 

 「「「「かんぱーい!」」」」


 色々とやることも終わり、風師さんと香織さんとともに入学パーティーをすることになった。原因は僕たち、発起人は香織さんだ。

 最初は学食で夕飯は済まそうと思っていたけど、天音の「久しぶりに鯖しゃぶを食べたい」との要望で買い出しへ。

 すると本土へ向かう橋の辺りで風師さんたちと遭遇。

 よく会うねと話していると、どうやら香織さんが荷物に詰め忘れたものを買いに行くところだったらしい。

 そこから天音と香織さんで話が弾み、いつしか部屋でパーティーという流れとなった。

 なお、流石に刺身可の鯖は売ってなかったため、豚肉などの普通のしゃぶしゃぶである。


 「それにしても、あのショッピングモール大きいね。あそこだけで何でもそろうじゃん」


 食べ始めて少ししたころ、香織さんが橋向こうのショッピングモールのことを話し出す。

 実際あのショッピングモールはそれなりに大きく、入っているテナントも多種多様だった。食料品から薬局、家電量販店、本屋、ファッション、雑貨と言った定番から、変わったものだとアロマ専門店や水専門店なんかもあった。アロマはわかるけど水って・・・


 「そうね。ちょっと若者受けしそうなのが多かったけれど」

 「まぁこの学校の生徒がメインターゲットだろうから、必然的にそうなったんだろうね」

 「鯖の刺身はなかったけどな」

 「あるわけないでしょ。あれ、相当新鮮じゃないと駄目なんだから。お肉で我慢しなさい。」


 少し不服そうにお椀を渡してくる天音に、ちょうどいい感じの肉と野菜をよそいつつ突っ込むと


 「へーい」


 と気の抜けた返事で受け取り、再び食べはじめた。

 そんなことをしていると香織さんサイドでも一悶着やっていた。


 「ほら香織、お肉ばっかりじゃなくて野菜もきちんと食べなさい。体臭もきつくなるし、ただでさえ貴女はお通じが悪いんだから」

 「さーちゃん、ご飯時にそれは汚いよ。それにずっと野菜食べない訳じゃないし、少しぐらいいいじゃん」

 「そういう油断が命取りなの。別にお肉を食べるなって訳じゃないんだから。ほら、椎茸と人参とねぎ。春菊は無いんだから食べられるでしょう?」

 「うー・・・さーちゃんお母さんみたい」

 「香織が子どもっぽいだけでしょう」


 どこも一緒なようで・・・


 「それに私がお母さんならユキ君はどうなの?」


 なんか話が飛んできた。え?


 「ユキ君はお母さんていうよりお嫁さん?なんか甲斐甲斐しく旦那の世話をする新妻って感じ」


 新妻かあ。これでも天音との付き合いは長いから、情報庁じゃ若熟年夫婦て言われてたけどそんな風にも見えるんだ。


 「ユキは渡さねえぞ!」

 「取ったりしないから大丈夫だよ。ユキ君とはお友達としてならいいけど、男女の関係てのはちょっと想像できないもん」


 すかさず反応した天音に苦笑しつつ返す香織さん。

 僕は気にしないけどそのセリフ、世の男子の多くが言われたら心にクリティカルダメージを喰らいそう。


 「僕も正直、天音以外とそんな関係になるのは考えられないかな。ただ、こんな背格好をしてるし僕のこと無意識に異性と認識してないのかもだけど、普通の男子の前でそんなこと言わないようにね?下手したらしばらくふさぎ込むから」


 僕のセリフで香織さんもそのセリフの凶暴性に気付いたらしく、「あっ」みたいな顔をしている。

 ちなみに今の格好は、普段通りの薄ピンクの浴衣で背もそんなに高くない。メイクも落としてないから大分女顔だし髪型もショートポニー、胸は流石にほとんどないけど十分に性別を誤認させられる自信がある。

 風師さんも香織さんも、僕のことを表層意識じゃ異性だと判断してるだろうけど、無意識じゃ多分同性に分類してると思う。じゃないといくら相手がいると言っても、出会って一日の異性がいる前でこんなにオープンな会話には普通ならない。はず。


 「まあ、そんなことより風師さんと香織さんはなんで魔導高校に?僕と天音は知り合いが魔導師だからだけど」


 と、そんなことは脇に置いておいて親睦を深めることにしよう。僕が男女どっちに判断されているかなんてどうでもいいことだし、今は知れる範囲でお互いのことを知ることのほうが先決でしょ。


 「私は元々そんなに魔導高校に興味はなかったのよ。けれど香織が中2の初めのころからだったかしら?毎日のようにここのPVを見せてきて、『私もこんな風に飛べるかな!?』てうるさくてね。まぁそうしているうちに、私も興味が出てきてこれも経験と思って受験したわ」

 「私は小さい頃から蒼穹戦舞デュエル・オブ・スカイが好きだったのと、後はさっきさーちゃんが言った通りこの学校のPV見て、私も飛んでみたいって気持ちが大きくなったのが理由かな」


 ふむふむ。つまり二人とも、どちらかと言えば競技魔導師志望てことか。

 それは良いことなんだけど、正直競技魔導師はキツイところがあるんだよなぁ。とりあえず、八校交流戦で成績を残すことが第一目標だろうけど、この代は僕たちがいる理由なんかのせいで魔境と化してるし。その分、結果を残せれば大成すると思うけど。


 「てなるとまずは交流戦出場が目標になるのか?ユキ?」

 「普通はそうだけど、二人ともそうなの?」


 天音も同じことを考えたらしく、僕に聞く形で二人に確認する。

 が、返ってきたのは意外な返答だった。


 「いや、私はそこまで交流戦には興味がないわ。試しに校内予選には参加するつもりだけど」

 「私もー」

 

 へ?てっきり交流戦で成績を残すのが目標だと思ったのにと、天音と二人して目を白黒させる。


 「交流戦じゃないなら他になんかあったか?二人ともクエストで稼ぐって感じじゃなさそうだが」

 

 ならなんかあったか?という天音の問いに、二人はうーん?と悩みだした。


 「私はさっき言った通り、そこまで目的がある訳ではないのよね。交流戦だって、正直今日の自己紹介の時点で敵いそうにない人が何人かいたし・・・どうしようかしら。というか、香織は交流戦にバリバリ挑む気だったじゃない。一体どうしたの?」

 「いやね?よく考えたら交流戦って基本的に術戦闘技(マギクス・アーツ)であんまりそそられないんだよね。そりゃ、蒼穹戦舞デュエル・オブ・スカイ術戦闘技(マギクス・アーツ)出身の選手がほとんどだし、私もまずは交流戦だー!って思ってたんだけど・・・さーちゃんが言ったみたいに1-Dだけでも凄そうな人が何人もいて、なんか気持ちが萎えちゃった。やる前から諦めるなんてダメだってことはわかってるけど・・・」


 あー、はじめる前に主にリストの連中に萎縮してる訳か。

 確かに一般の人間が(本来はグレーゾーンだけど)英才教育を受けてきた人間に敵う可能性は、天城 快人(護衛対象)のような例外かよっぽど才能と努力がなければほぼ無いに等しい。それがあるから今代は魔境と評した訳だし。

 けれど、僕たちにとっては好都合なところもある。まずはそれを確認しよう。


 「てことは風師さんも香織さんも入学したはいいけど、現在目標を失ってるってことでOK?」

 「その通りだけど、随分とバッサリ言うわね・・・」

 「大体そんな感じー」


よし、それじゃあこっちに引き込もう。もちろん、僕たちのことは明かさず二人も一般の範疇に収まるように。

 まずはざっとした概要を仮想端末で天音に送る。

 直ぐに反応してくれて、内容を見た後「OK」のアイコンタクトを返してくれた。

 二人には少し悪い気もするけど、大部分は朝と同じだしお互いwin-winの関係に持っていけるはずだからそこは割りきろう。

 ていうか今更か。


 「じゃあ俺たちと()()()()()()しねぇか?」

 「「トレーニング?」」

 「うん。僕と天音はさっき言った知り合いに『どうせ魔境高校に行くなら』ていくつか課題を課されたんだ。」

 「けど、そいつのいくつかが絶対二人じゃ達成できねぇんだわ。多分、コミュ力を鍛えろてことなんだろうが。で、言い方は悪いがちょうど仲良くなって目標もない二人がいるから、それに一緒に挑戦アンド挑戦のためのトレーニングをしようぜってお誘いなんだが」


 この言葉に香織さんはキョトンとし、風師さんは困惑しているみたい。

 まぁ、唐突な話だし上手く飲み込めないのもわかる。

 ただ、全部が全部ウソというわけじゃない。これからあるだろう色々のために隠れ蓑用の人手が僕たちは欲しい。

 けど、その隠れ蓑自体もそれなりの力を持ってないといけない。最初はリストの適当な人にしようかと思ったけど、どうせならその隠れ蓑と親しい方がいい。なら風師さんと香織さんの二人を僕たちで隠れ蓑にできるまで育てようと思ったわけだ。

 こっちは隠れ蓑ができる。風師さんたちはそれなりの技術なんかが身に付く、お互いに益のある話になってると思うんだけど。


 「・・・その課題というのは一体どんなものがあるのかしら?」


 食いついた!


 「僕と天音だけで達成できないものを挙げるなら、クエストランクが小隊でB以上になるとか学年小隊総演で二回以上ベスト5に入るとかかな。あっ後は()()()()()()()()()()()()()()()()()8()()()()っていうのもあるね」


 言ってしまえば、これくらいの実績のある人間の近くにいれば何かあっても周囲の納得を得やすいというのが本当だ。別に他のことでもいいんだけど、やっぱり戦闘系の実績は何かと融通を利かせやすい。


 「・・・なんていうか、そのユキちゃんたちの知り合いってどんな人なの?それがどれだけ難しいか分かってる?伊樹島さんとか私絶対敵わないって自己紹介の時思ったし、水流さんとか私お父さんのファンだから、インタビューで『娘はすごい』て言ってたのを見たことあるよ?他にも凄そうな人いっぱいいたし、他のクラスもいるんだよ?そんな人たちと団体だとしても張り合わなきゃいけないなんて・・・それにユキちゃんたちもどうしてそれをやろうとするの?無理だよ・・・」

 「香織がここまで弱音を吐くのも珍しいけど、大筋私も同じ意見よ。そもそも、その課題って達成しなくちゃいけないものなの?」


 まあ確かに1-Dは粒ぞろい(リスト者が多い)だろうけど、それはこの二人にも言えると思う。

 それが本人が望んでいるものとは違っていたとしても。


 「まあ、あのおっさんとはそれなりの付き合いだけど今まで何しても敵ったことがないから、この課題を達成して驚いた顔をさせたいっていうのがやる理由だな。要は意地だ。それにやってやれないことはないと思ってるからな。確かに伊樹島も水流も多分一年じゃトップクラスだろうな。けど、勝てねえことはないと思うぜ?というよりタイマンでやりあうなら山葵以外なら負ける気がしねえ。山葵は俺が思ってる通りなら勝つのは難しいが」

 「どう?どうせこれは僕と天音の問題だから、風師さんと香織さんが何か責任を負うわけじゃないしトレーニングだけでも付き合ってみない?僕は二人には、特に香織さんには伊樹島さんを超える才能があると思ってるんだけど」


 課題以外、噓は言ってない。色々ぼかしてるだけで。

 さて、二人のどちらかが乗ってくれれば多分もう一人も乗ってくれるとは思うけど。


 「・・・時間が合うときだけでも良いかしら?」


 お!風師さんが乗ってくれた。


 「もちろん。別に強制するものじゃないしね」

 「そりゃ、毎日の方が成果が出るのは早いだろうけど都合ってものもあるだろうしな。いつでも歓迎するぜ?」

 「じゃあよろしくお願いするわ。香織はどうするの?いつもの貴女ならすぐに飛びつきそうなのに」

 

 風師さんの問いかけに風師さんは俯いて答えた。


 「怖いの・・・」

 「怖い?」

 「うん・・・なんて言えばいいのかわからないけど、このままだといけないって気持ちと()()()()()()()()()()って気持ちがぐるぐるして・・・なんかこんがらがってきて・・・うぅ・・・なんなの・・・これ・・・」


 そして香織さんが泣き出し、頭を掻きむしりだした・・・ってなんかヤバい!?


 「天音!」

 「特に異常なし!受け持つからやってやれ!」

 

 天音のその言葉を受けて、霊機を起動。限定霊機を展開して香織さんに触れる。

 流れ込んでくるのは恐怖のみ。けれど、その色は複数あって・・・

 とりあえず『鎮静』の術式をかけて香織さんの心を穏やかにしてから、『身体走査』と『同調』の術式を使って身心に異常がないか確認していく。

 体の方は特に異常なし。心の方は・・・ああ、これが原因か。けど、天音も似たようなものだけど生まれつきこれって凄いな。下手したら(エルフ)の2~3歩手前だよ。けど、これだと僕と天音にも結果だけ見れば落ち度があるね。わかるはずもなかったからどうしようもないし、これを伝えるわけにはいかないけどアフターフォローはしっかりしよう。


 「落ち着いた?香織さん」

 「う、うん・・・落ち着いたけど何したの?それ、霊機・・・だよね?」

 「ただ『鎮静』と念のために『身体走査』の術を使っただけだから大丈夫。勝手にしたのは謝るけど」

 「それはいいんだけど、昔された『鎮静』の術とは感じが違ったような・・・」


 とりあえず落ち着いたみたいだから霊機を納めて天音の隣に戻る。


 「どうだった?」

 「今から言うけど、その前に風師さんが何か言いたそう」


 僕が離れた後、入れ替わるように香織さんの手を握っていた風師さんが、どこか納得のいかない顔でこちらを見ていた。


 「香織を落ち着かせてくれたのはありがとう。この子、昔から偶にこういうことがあって・・・けど、随分と手馴れていたわね。それに今の霊機・・・ユキ、貴方サポートスーツは着てないし制御輪も補助インターフェースもなかったわよね?どういうこと?」

 

 まあ常識に照らし合わせれば当然の疑問だよね。


 「朝に言ったけど、天音はある種の持病持ちでね?そのサポートというか緊急時の看護師みたいな立ち位置なのが僕なんだ。手馴れていたのはそのせいで、霊機に関しても一般には非公開の簡易霊機なんだ。この仮想端末の指輪が制御輪も兼ねていて、使える術式も『鎮静』と『身体走査』、『誘眠』だけで今の順にしか使えない代わりに即応性を取ったものなんだ。あ、これはオフレコでお願い。ばれるといろいろ面倒だから」


 噓だけど。

 ただ、本当のことは言えないし言っても信じてもらえないと思うので、今はこれで押し通す。


 「そう・・・なの・・・わかったわ。ごめんなさい。本当は話したら駄目だったんでしょう?」

 「いいのいいの。それより、やっぱりこうなるの初めてじゃなかったんだ。」

 「ええ、一種のパニック障害じゃないかって言われてるんだけど・・・」


 それは間違ってはいないけど正しくもない。

 それに僕たちが近くにいる以上、きちんと制御しないと今までよりもこの状態に陥りやすくなる。


 「じゃあ香織さんはトレーニングに参加するべきだろうね。良かったね、天音。香織さんは先天性っぽいけど同類だよ」

 「先天性の同類ってゆーと・・・まさか、生まれながらの超直感か?」

 「多分ね」

 「マジか、渡辺の姉貴以外にもいたのか」

 「イギリスとアメリカ、オーストラリアにもいるって話だったけどね」

 「あの~、二人で納得せずに説明してくれると嬉しいんだけど。私のコレ、何かわかるの?」

 「私も同じく説明を求めるわ」


 っといけない。風師さんと香織さんから説明を要求された。

 まあ今までわからなかった自分や友達のことがわかるなら、早く知りたいよね。

 つい珍しいから天音と盛り上がちゃった。


 「すまねえ、つい珍しくてな。香織のそれは多分『超直感』てやつだな。さっきのセリフから察するに、おそらく無意識に今のまま諦める未来と俺たちとトレーニングして過ごす未来を感じたんだろうな。そして、そのどちらも今の香織にとって受け入れられるものじゃなかった。結果、それが恐怖という感情になり未来を感じた負荷も合わさって、情緒が著しく不安定になったって感じだと思うんだが、ユキ、どうだ?」

 「僕の見立ても大体同じ。いやーホント珍しい」

 「なんとなく言ってることはわかるのだけど、肝心な説明が抜けてるわ」

 「超直感ってなに?」


 あーそこが確かに肝心だ。この辺り感覚のずれなのかな?


 「ごめん。超直感っていうのは、要は異能の一つでね?普通の直感ていうのは基本的に今まで経験してきたことや、その時の状況を鑑みて無意識に行う経験則と推測が合わさった根拠の説明できない予測のことを言う訳だけど、超直感っていうのはその経験則や推測すらない、身も蓋もない言い方をするなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ちょっとカッコよく言うなら未来を感じることを言うんだ」

 「例えば空を見て「明日雨が降りそう」っていうのは大抵の場合、「なんとなく」と口では言っても無意識にその時五感が感じた情報が過去に翌日雨が降った時の情報に似ているからだったりするわけだ。無論、無意識な願望のこともあるけどな。これに対して超直感の場合は、例えば鼻歌を歌いながらシャワーを浴びている時に突然「明日雨が降る」と感じる訳だ。そして絶対に雨が降る。これくらいの超直感の持ち主は実はそれなりにいるって言われてんだけど、香織の場合ほぼ最高レベルだろうな。そこまで強い超直感は珍しいもんでな。少なくとも俺は実際にあったのは香織で二人目だ。制御できれば確定未来視のようなもんになると思うぜ?」

 「けれど、今は制御できていないからいつ未来を感じるのかわからないし、得た未来の情報を¥も処理しきれていない状態になってる。だから、ある時ふと未来を感じてそれが香織さんにとって受け入れられるものなら表層意識には「何かいいことがありそう」ぐらいなものが浮かび上がるんだけど、逆に受け入れられないものだとさっきみたいに一見脈絡のない恐怖感にかられる。更にどれだけ未来を感じたかにもよるけど、当然負荷はある訳でそういうのが重なるとさっきみたいな情緒不安定に陥るてこと。ここまでは大丈夫?」


 天音と分担して説明したとはいえ、少し長い説明になってしまったから一旦ここで確認ついでに水を飲む。ついでにドタバタで煮えすぎた野菜を回収しておこうっと。肉は煮えすぎても普通においしいから放置でいっか。

 野菜の処理の間の対応は天音、任せた!


 「私のこれってそんなものだったんだ・・・言われてみれば結構思い当たることがあるかも」

 「香織、感心は後でもできるでしょう。今は情報の整理が先よ。えーとつまり、香織が今まであんなふうになってた理由は、その超直感を制御できていないがための暴走のようなものだったということでいいのかしら?」

 「ああ、それで合ってるぜ」

 「超直感は香織くらい強いのは珍しいもので、だから今まで原因がわからなかったと」

 「だろうな。ついでに言えば、異能系があまり認知されてないのも要因の一つだと思う。研究は結構されてるんだが」

 

 うーん。結構煮えちゃってるし、良さそうなのはこっちの鍋に移してもうおじやにしちゃおうか。卵、卵・・・


 「なら、何故トレーニングに参加した方がいいのかしら?暴走したということは、香織にとって受け入れられない未来を感じたということでしょう?」

 「確かにそうだが、トレーニングに参加しない未来も受け入れられなかったということも忘れないでくれよ?普通一つの未来しか感じていなければ、暴走なんて滅多にしない筈なんだからな?で、トレーニングに参加した方がいい理由なんて、んなもんそっちも分かってるだろ」

 「整理だもの。一応ね。」

 「天音ちゃんも超直感の持ち主だから、だよね?」

 「正解。異能系は魔力の多い環境じゃ活性化して暴発することが何故か多い。魔導高校に通う以上、嫌でも魔力の多い環境にいることになるし、いつまた暴走するかわかったもんじゃない。それにあの感覚は香織も嫌だろ?他の異能系ならともかく超直感なら制御を教えられるし、そう悪い話じゃないと思うけどな?」

 

ご飯は・・・ちょっと少ないかな?チンするご飯を足せばいいか。よいしょっと、須藤のご飯はもっちもち~ってあれ?切り餅だったっけ?


 「そうね。悪い話じゃないわ。けれど、『トレーニングに参加した未来を受け入れられなかった』この事実が私を不安にさせるのよ。私は香織の保護者じゃないし最終的に決めるのは香織だけれど、香織の友達としてやっぱり香織の苦しむ姿は見たくないのよ」

 「さーちゃん・・・」

 「同じ超直感持ちとはいえ香織がどんな未来を感じたのか、そこは俺もわからねえ。けどな、その未来はそのままなら、だ。さっき香織が感じたみたいに、未来ってのは選択次第で変わるもんだ。なら、香織が受け入れられるような未来に行きつくようにこれから選択すればいいと思うけどな。それに、今の香織が受け入れられないからと言って、未来の香織もその現状に不満があるとは限らねえだろ」

 「天音ちゃん・・・うん!決めた!私もそのトレーニングに参加する!」

 「それでいいの?香織。なんか今、答えを出さなくちゃいけないみたいな雰囲気にはしちゃったけれど、別に今は保留して後で決めてもいいんじゃない?」

 「そうだぜ?別にこっちは強制はしねえ。超直感のせいでややこしくなってるけど、元々は俺とユキのわがままみたいなもんだし今日はこのままメシ食べて帰って、また明日とか明後日とかに決めてくれても「いいの!私、今日いろんなことがあって小さい頃さーちゃんと約束したこと忘れてた。私馬鹿で一度悩むと長いから、とにかくやらないで後悔するよりやって後悔すること。代わりにさーちゃんが色々考えて私をフォローすること。へへっそうだよ!最初っから悩む必要なんてなかったよ!ごめんね!さーちゃん、天音ちゃん、ユキちゃ・・・ん?あれ?ユキちゃんは?」ん?気付いてなかったのか?まあすぐ「♪♪♪」戻ってくるさ」

 「そんな昔のことよく覚えていたわねって思っていたのに何かしら。このそうじゃないという感覚は・・・」


 温まったご飯を持って戻ってみると、風師さんと香織さんから視線を向けられた。なんで?


 「天音、お疲れ。すぐにおじやにするから待ってね。風師さんと香織さんもおじやでいい?うどん派だったりしない?」

 「別にいいけれど、それよりユキ?あえて無視してたけれど、貴方途中から鍋の整理を始めるんじゃないわよ・・・まあ有難かったけれども・・・」

 「あ!お肉がお皿によそられてる!ユキちゃんありがとう!」

 「最初は煮えすぎた野菜を整理するだけのつもりだったんだけどね?どうせなら波長が合う天音に任せちゃおうと思って」


 了承も得られたので、スープの中にご飯を投入。ほぐしたら溶き卵を入れて少しかき混ぜ1分くらい蓋をする。


 「ねえユキ?少し作りすぎじゃないかしら?私そんなに食べられないわよ?」

 「私も正直・・・」

 「どうせ天音が食べるから大丈夫。とりあえず話は聞いていたけど、二人ともトレーニングに参加するってことでいいんだよね?」

 「うん!」

 「ええ。ってそんなに食べるの?天音って」

 

 何故か風師さんが少し引いてるけど、鍋一つ分ぐらいなら天音にとって本当に〆に軽くレベルなんだよね。


 「?それぐらい普通だろ?ユキはともかく風師も香織も少食だなぁ」

 「天音が健啖家なだけだと思うわよ」

 「すごいねー」

 「そうか?知り合いは皆これくらい普通なんだけどな・・・」

 

 まあ、魔導師は皆よく食べるようになるからね。

 多分風師さんも香織さんも、卒業する頃には今の数倍は食べるようになると思う。

 っと、そろそろいいかな?・・・うん!いい感じの卵の固まり具合。全員の椀によそって渡していく。


 「足りなかったら各自でお代わりしてね。とりあえずトレーニングは明日の放課後からやろうと思ってるけど、学校のクラブ活動とかでどの場所がいいかわからないからまずは場所探しにうろつこうと思うけど大丈夫?」

 「わかったわ」

 「問題ないよ!」


 良かった。ここで「ごめんなさい。ちょっと用事が・・・」とか言われるとダメージ大きかったからね。


 「それじゃ、そういうことで。風師さん、香織さん改めてわがまま聞いてくれてありがとう」

 「これからよろしくな」

 「「こちらこそ」」


 この後一時間ぐらい騒いでからお開きになった。

なんだろう。学校のガイダンスまで終わらせるつもりだったのに、キャラが勝手に動いて気付けば入学初日が終わっただけだった・・・明日にでもガイダンス編は上げます。

この回は最初の方はすぐ終わるつもりだったので、違和感を感じるかもしれません。ですのでそのうち修正するかもしれません。

その場合は、修正したことを最新話の後書きに書いておこうと思います。

今回、盛大な遅刻をしたので前回の宣言の通り、毎週金曜日の17時から19時に変更し遅刻した場合は書きあがり次第あげようと思います。

では、読んでくれている皆様、また明日!


作者の今週の一幕

初めて仕事を任せてもらえて、褒められてうれしかったけど疲れました。


感想、誤字報告などお気軽にどうぞ


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