2-2
あたしの一日の最初の仕事は、挽きたての豆で淹れた濃いコーヒーをお供に、昨晩のプレゼントを開くことだ。
食べ物はテーブルの上、衣類はソファの背、それ以外のものはまとめてソファの上に分類していく。
リボンをほどき、封を開け、出てくる物に歓声を上げる。
時間をかけて全てのプレゼントを開いたら、部屋を散らかしたままそれらを堪能する。
鏡の前で服やアクセサリーを身にあてがい、マニキュアや香水はドレッサーに並べ、紅茶の茶葉を瓶に詰め替える。
全てをきれいに片付け終わる頃にはすっかりお腹がすいている。
もらったばかりのつばの広い帽子をかぶり、レンズの大きなサングラスをかけ、行きつけのパン屋に向かった。
アパートを出て徒歩百歩圏内にあるパン屋の周辺は、いつもいいにおいが漂っている。
短い煙突からゆらゆら上る煙は、この時期は特に色が濃くていつも以上に美味しそうに見える。
この街に来るまで、冷え切った固いパンしか食べたことがなかったあたしは、その店のふかふかでほんのりと甘いパンを初めて口にした時、涙が出る程感動した。
大急ぎで、けれど一口一口味わって平らげてから店に引き返し、店主を捉まえてあなたの作ったパンがどんなに美味しかったかを熱弁し、店主も「こんなに褒められたことはない」と感激してくれた。
それからというもの、そのパン屋は毎日欠かさず訪れるお気に入りの店になったのだった。
「おはよう。今朝もおいしいパンのためにお腹をすかせてきたわ」
「おはようお嬢さん。ちょうどクロワッサンが焼けたところだよ」
「嬉しい。クロワッサン、大好きなの。中でもとびきり美味しそうなのを二つ包んでもらえる? その間に他のパンを選ぶわね」
バターロールみたいにつやつやした肌の店主は、あたしのことを何も知らない。
あたしもこの朗らかな店主が、店の外ではどんな人間になるのかを知らない。
互いに知らず、知ろうとしないからこそ、円満な関係を続けていられるのかもしれない。
「どうもありがとう。また明日来るわね」
「こちらこそいつもありがとう。明日また待ってるよ」
鼻歌を歌いながら部屋に戻り紙袋を開くと、選んだパンの他に小さなドーナツが三つ入っていた。
気のいい店主は、いつもこっそりとおまけを忍ばせてくれる。
袋の中身を大皿に空け、キャラメル風味の紅茶を濃く淹れて、あたしは昼食と兼用の朝食にありついた。
*




