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あたしの寝室には目覚まし時計がない。
それでもいつも決まった時間になると、自然と目が覚める。
真っ暗な部屋の中で、触り心地のいい毛布をかき分け、手探りで布団の山から這い出して、分厚いカーテンを一息に開ける。
四階にあるあたしの部屋は眺めがいいとは言えないけれど、建物の隙間からかろうじてホワイトナイトの街並みを望むことができる。
薄く窓を開くと、冬の乾いた風に乗って街の雑踏が流れ込んでくる。
騒々しいクラクションや行き交う人々の楽しげな声など、健康的な喧騒をBGMに、あたしの一日は始まる。
あたしが借りているアパートは、ポーラーナイトに限りなく近い、ホワイトナイトの端っこにあった。
かろうじて引っかかっているだけのような場所でもそこは確かにホワイトナイトで、猥雑なエリアではあるけれど物騒ではない。
賃料がそれなりに高く、まずまずの安全が確保された物件だった。
広めの部屋が二つとバスルーム、猫のひたい程のキッチン、それにウォークインクローゼットがある。
唯一の不満はエレベーターがついていないことで、出入りの度に螺旋階段をくるくる回る羽目になる。
今日のスケジュールを思い浮かべ、どんよりと気が重くなる。
週の始めに行われたミーティング通りであれば、今夜はあまり気乗りしない演目をやらなくてはならない日だった。
ステージに上がるのは好きだけれど、中には苦手な演目もある。
たとえ嫌いなものであってもご機嫌な顔をしていなければならないから余計に億劫だった。
ともあれ、いやだいやだと考えてもそれがなくなるわけじゃない。
あたしは、自分をブランド品だとは思っていなかった。
この街で一人でやっていける程の技量も度胸もない。
あくまでマクレーで生かしてもらっているのだという意識を切り離さず、歌えと言われれば歌い、踊れと言われれば踊るだけのことだった。
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