カナンと子供たち
カナンは温泉から戻ると、すぐにラトに押し倒された。
温泉で一度抱かれていたが、その夜は一晩中寝かせてもらえなかった。
ラトは冬の間中、飽きることなくカナンを抱いて過ごしていた。
その結果として、春にカナンは卵を産んだ。
(竜族は卵で産まれてくるんだ……)
カナンは産むのが楽で良かったと思った。
カナンは難産で、なかなか産まれなくてヒヤヒヤしたと父親に聞いたことがあったからだ。
カナンは卵を抱いて温めようとしたが、ラトに「放っておけば、そのうち孵る」と言われて、竜族は丈夫だからと納得した。
卵は翌年の春に孵ったが、その時にはもう次の卵が産まれていた。
最初に生まれたのは男の子で、次に生まれたのは女の子だった。
竜族の子供は卵から孵ってすぐに普通の食事ができるので、人間の子供のように手がかからず子育ては楽だった。
しかしラトは「放っておいても勝手に育つ」と言って育児に協力しないので、子供たちの世話はカナン一人ですることになった。
それでもカナンは幸せだった。
ラトはカナンには優しいし、子供たちは素直で可愛い。
子供たちは二人ともラトと同じ黒いドラゴンで、人化した時の姿は黒髪と金色の瞳でラトによく似ていた。
子供たちは成体になると洞窟を出て行ってしまったので、それからはラトにあちこちの街に連れて行ってもらったりしながら、カナンはオリオルでの生活を楽しんでいた。
その後もカナンとラトは仲睦まじく暮らし、その長い一生を同時に終えた。
カナンは、大型竜の姿のラトに守られるようにして永遠の眠りについていた。
二人の顔は安らかで、その一生が幸せであったことを物語っていた。