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カナンと大型竜
日が沈み、暗くなってから、カナンは大型の竜に変化したラトに荷物を括り付け始めた。
準備が終わってホッとしていると、ラトが囁くような声でカナンに言った。
「すぐに出立しよう。人間に気付かれたようだ。こっちに向かって来ている」
「分かった」
カナンはラトの背中によじ登った。
カナンがしっかり掴まっているのを確認すると、ラトは空へと飛び立った。
カナンはラトの背中から下を見ようとして、止めた。
もう村を出たのだ。
いくら噂されようと関係ない。
(きっと私は竜に食べられたと思われるんだろうな)
そう思われても構わない。
きっと悲しんでくれる人なんて一人もいないから。
――カナンの死を嘆く者が少なからずいたことに、彼女が気付くことはなかった。
カナンはこれから向かうオリオルに思いを馳せた。
これからは険しい山に住むことになるのだと、気持ちを引き締めた。
ラトの『快適だ』という言葉は信じていなかった。