雪原の決着
チリン… チリン…
鈴の音が響き渡る。
少女の近くにあった雪が、瞬時に数十のゴーレムへと変わり、彼女を守るように立ちはだかった。
「それなら、勝手に取りにきなさいよ」少女が言う。
―――
「どうしましょう…」ゼラティアが言う。
「サンヤ」チャンドラが言う。
「何?」サンヤが答える。
「その剣、貸してくれ」チャンドラが言う。
「何に使うの? 前もお前はあの剣をまともに扱えなかったわ。私が持ってたほうがいい」サンヤが言う。
「チャンドラ、これを使いなさい」ドロティが言う。
ドロティは錆びた剣をチャンドラに投げた。
「何でこんなガラクタを…」チャンドラが言う。
「受け取りなさい」サンヤが言う。
「何も持たないよりはマシでしょ」ドロティが言う。
「それはそうだけど…俺はかっこよく決めたいんだよ」チャンドラが言う。
「お前はいつもそうだな」トガが言う。
ゼラティアはホワイトを腕輪から解き放ち、トガに手渡した。
「トガさん、ホワイトを使ってください」ゼラティアが言う。
「わかった。やってみる」トガが言う。
ホワイトは瞬時に剣へと姿を変えた。それを見たチャンドラが大声を上げた。
「何だよその魔法の武器は! トガ、俺にも寄越せ!」チャンドラが叫ぶ。
「悪いな、相棒。これは俺専用だ」トガが答える。
一方、少女は遠くから五人の様子を退屈そうに見つめていた。
「なんであいつら、まだ話し込んでるの? いつ攻めてくるつもり?」少女が呟く。
少女は手を上げると、空に雪の玉を一つ作り出し、チャンドラに向けて放った。
雪玉は猛スピードでチャンドラの顔面に直撃し、彼はその場に倒れた。
「いきなり何すんだよ!」チャンドラが叫ぶ。
「あんたたちがずっと雑談してるから飽きちゃったのよ。この小さなフクロウを私から奪いたいんじゃなかったの?」少女が言う。
「だったら、すぐに取り返してやる」チャンドラが言う。
チャンドラは走り出した。サンヤとトガも続き、ゼラティアとドロティは後方から支援する。
「そうこなくちゃ… 私の力を見せてやるわ」少女が言う。
少女はゴーレムたちを指示し、彼らに襲いかからせる。
チャンドラ、トガ、サンヤはゴーレムの群れを突破しようとするが、少女は次々と新しいゴーレムを生み出し続ける。
しばらく戦っても、ゼラティアとドロティの援護もありながら、少女の防御を突破できずにいた。
「もっと頑張りなさいよ! この鳥を助けたいんだろ? 退屈で仕方ないわ」少女が言う。
「ゴーレムの数が減らないぞ」チャンドラが言う。
「このまま戦い続けたら、魔力が尽きるわ」サンヤが言う。
トガは少女に視線を集中させ、ホワイトを投げる構えをとった。
「おい、何をする気だ?」チャンドラが尋ねる。
「見てればわかる」トガが答える。
トガはホワイトを少女に向けて投げた。だが、雪の壁が現れ、それを防いだ。
「剣を投げるなんて、何考えてるの?」少女が言う。
「ホワイト、あの鳥かごを奪え!」トガが叫ぶ。
ホワイトは即座に元の姿に戻り、鳥かごを奪い取ってその場から離れた。
「何よ、あの変なモンスター…」
「早く戻ってきなさい」
「戻らなければ… お前は死ぬわよ!」少女が叫ぶ。
少女が鈴を鳴らすと、複数のゴーレムがホワイトに向かって襲いかかる。
ホワイトは全力で走り、ドロティが近づくゴーレムを次々と撃ち抜く。
ついにホワイトはチャンドラ、サンヤ、トガのところまでたどり着いた。
「あんたたち、間違った選択をしたわね」少女が言う。
鈴の音が再び空気を震わせる。周囲の雪がすべて空へと舞い上がり、一つの巨大なゴーレムを形作った。
ゴーレムは彼らに向かって咆哮を放ち、冷たい風の息吹を浴びせた。
「やばいな」トガが言う。
「みんな、逃げるわよ!」サンヤが叫ぶ。
五人は逃げ出そうとするが、ゴーレムの手が行く手を阻む。
「逃げられると思わないで」少女が言う。
「みんな」ゼラティアが言う。
「どうした?」サンヤが言う。
「言ってみろ」トガが言う。
「私に時間をください。高位魔法を詠唱します」ゼラティアが言う。
「それが作戦か。よし」チャンドラは拳を握りしめた。
「ドロティ、トガ、あの傲慢な女を足止めするぞ」チャンドラが言う。
「もちろんよ」ドロティが言う。
「行くぞ」トガが言う。
チャンドラ、トガ、ドロティは少女に向かって走り出した。一方、サンヤ、ホワイト、ゼラティアは静かにその場を離れる。
チャンドラは剣を木のほうへ投げ捨てた。
「なんで剣を捨てたんだ?」ドロティが尋ねる。
「女の子に剣を向けるわけにはいかないだろ」チャンドラが答える。
「容赦なく行けよ、チャンドラ」トガが言う。
チャンドラはものすごい速さで走り出した。少女はすぐに雪のゴーレムで壁を作る。
チャンドラはその壁を跳び越えた。
「同じ手は通じないぞ」チャンドラが言う。
「そんな…!」少女が驚く。
チャンドラは少女が握る鈴を蹴り飛ばした。トガがそれを受け止め、ドロティが少女に銃口を向ける。
チャンドラは彼らの背後に着地した。
「鈴を奪ったくらいで、私を倒せると思ってるの?」少女が言う。
「動くな」ドロティが警戒しながら言う。
「無駄よ。ゴーレムたちは私の命令を聞き続けるから」少女が言う。
その時、遠くから眩い光が放たれた。それはゼラティアが詠唱している魔法の光だった。
「暁の前に生まれし最初の光よ、
手のひらに隠されし星々よ、
天と地の果てを超える光を集めよ。
その輝きを一つの点に凝縮せよ。
世界に、一つの光の中に閉じ込められた力を示せ。
我が前に立つ全てのものを粉砕せよ――
ノヴァ・スフィア!」
彼女の手のひらに、一粒の光が生まれ、次々と他の光が集まり、小さな光の玉となった。
その光の玉が巨大ゴーレムに向かって一直線に飛んでいく。
………
瞬間、魔法の爆発が雪のゴーレムを粉々に粉砕し、雪をあらゆる方向へ吹き飛ばした。
ゼラティアはその場に崩れ落ちたが、サンヤが素早く受け止めた。
「大丈夫?」サンヤが尋ねる。
「はい…ただ魔力を使い果たしただけです」ゼラティアが答える。
一方、チャンドラは少女に向かって手を差し出した。
「見たか? 一人じゃ何もできなかったな」チャンドラが言う。
「まさか…こんなに簡単に負けるなんて」少女が言う。
「お前はどの王国から来たんだ?」トガが尋ねる。
「魔力も持たない奴に答える義理はないわ」少女が言う。
突然、蔦がチャンドラ、ドロティ、トガを絡め取った。
「またお前が邪魔をするのか、リュウ」少女が言う。
木陰から一人の少年が姿を現す。
「感謝しろよ、ナオミ」リュウが言う。
ナオミはトガから鈴を受け取った。
「お前たちは何者だ? 目的は何だ?」チャンドラが尋ねる。
「ふん…俺たちはただの王の使いだ」リュウが言う。
「使いじゃないわ。強くて美しい存在よ」ナオミが言う。
「本当か?」リュウが言う。
「もういいわ。帰る。疲れた」ナオミが言う。
「でも任務は…」リュウが言う。
「『町から邪魔者が来た』って報告しておけばいいでしょ」ナオミが言う。
二人は瞬く間に姿を消した。蔦も同時に崩れ落ちる。
「あの王の目的が気になるな」チャンドラが言う。
「きっと世界征服だろうな」トガが言う。
「今度ギルドで聞いてみよう。どの王国が異世界人を召喚してるのか」ドロティが言う。
「いいアイデアだ」チャンドラが言う。
「まずはあの二人の様子を見に行こう」トガが言う。
三人はサンヤとゼラティアが休んでいるところへ向かった。
「ゼラ、お前のあの魔法、すごかったぞ」チャンドラが言う。
「本当に強力な魔法だった」トガが言う。
「ありがとうございます。おばあちゃんの家にあった本で覚えたんです」ゼラティアが言う。
「さて、ニヴォラを解放しましょう」サンヤが言う。
鳥かごを開けると、ニヴォラはゆっくりと外へ出た。
外へ出ると、ニヴォラは一度だけ頭を下げ、そして飛び去っていった。
「それだけかよ、大陸の守護者って」チャンドラが言う。
「今は力が弱まっている時期なんでしょう」ドロティが言う。
「話せると思ってたんだけどな」トガが言う。
「さあ、みんな。町に戻ろう」サンヤが言う。
チャンドラはゼラティアの前にしゃがみ込んだ。
「さあ、ゼラ。すごい魔法使いにはご褒美だ」
「ありがとう、チャンドラ」ゼラティアが言う。
五人(と一匹)が帰ろうとしたとき、ホワイトがその場に立ち尽くしていた。何かを待っているように。
「ホワイト、また今度来るからね!」ゼラティアが手を振りながら叫ぶ。
ホワイトも手を挙げて応え、そして雪の奥へと消えていった。五人は町へと帰っていった。




