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コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたら村を救った話
12/58

12. 魔物が現れた話

「魔物が現れました!」


「えっ!?」


 次の襲来までまだ日にちがあるって話だったよね!? なんで!?


「さあ、これを!」


 奥さんは私の右腕をつかむと、手に冷たい感触のものを無理やり握らせた。

 これは、魔物除けのアミュレット!?


「それを身に着けて、この部屋に隠れていてください」


「えっ!? そんな、部外者の私なんかに!」


 アミュレットを首からかけるのをためらっていると、奥さんが手からアミュレットを奪い取り、私の首に無理やりかけた。


「あなたを守るよう夫から言われています! 早く隠れてください!」


「村長さんは!?」


「夫は広場へ向かいました……。さあ、早く隠れて」


 奥さんは絞り出した声でそう言うと、勢いよく扉を閉めた。



「村長さんっ!」


 私は広場に面した窓から身を乗り出して外を見た。

 村の人たちは全員避難して、誰ひとりいない。

 広場の中心に立っている、村長さん以外は。


 村長さん、本当にひとりで戦う気だ!


 魔物は!?

 村を見渡す――いたっ!!


 広場の先、村の入り口の付近にそれらしき姿が見える。

 熊のような巨体に、猪の頭がくっついているようなおぞましい姿。


 魔物たちはぬかるみに足を取られて、思うように進めていないようだった。


 数は――4匹。

 って、4匹!? 今までは2匹だったって言ってたのに! 倍になってる!


 今のところぬかるみ作戦は成功しているけど、広場のぬかるみは未完成。

 もし魔物が広場に到達したら……。

 嫌な汗が全身を伝う。


 そのとき、風を切るような音とともに、先頭の魔物の頭に一本の矢が突き刺さった。

 魔物の巨体がゆっくりと背後へと倒れる。


 えっ? 何が!?


 矢が飛んできた方を見ると、村長さんが次の矢をつがえていた。

 そうか! 村長さんが矢を放って魔物を仕留めたんだ! すごい!


 村長さんが再び矢を放つ。

 矢は弧を描いて飛び、魔物の肩あたりに刺さった。

 けど、さっきのように魔物は倒れない。矢が当たったところを気にしてはいるものの、構わずぬかるみを進もうともがいている。


 村長さんはさらに矢を放ち、放たれた矢は魔物に向かって飛んでいく。


「当たれ!」


 思わず声が出る。

 って、避けた!?


 なんと、魔物が矢を避けた!

 村長さんの存在に気付いた魔物は、その後も飛んでくる矢を体をひねって器用に避け、ときに手で払いのけた。


 これって、村長さんの攻撃を理解して回避してるってこと!?


「熊や猪なんかじゃない。やっぱり魔物なんだ……」


 はじめから怖かったけど、私の中でさらに恐怖が増した。


 魔物はぬかるみにもがきながらも、時折雄たけびをあげながら、確実に村長さんに向かって進んでいる。

 その後も魔物に向けて矢を放つも、やっぱり当たらない。


 村長さんが弓を放り投げる。

 そして腰の剣を抜くと、魔物へ向かって一直線に駆け出した!


 入り口から広場までの道はそこまで広くない。体が大きい魔物は縦に並んで進んできている。

 そうか! 今なら先頭の1匹だけを相手にできる!


 村長さんと先頭の魔物がぶつかる。


 走った勢いを利用した鋭い一撃で魔物を切りつける村長さん。

 その一撃を左手でなぎ払った魔物、そのまま体勢をひねって右手の爪を村長さんへ振り下ろす。

 魔物の繰り出したカウンター攻撃を、村長さんはバク転のような動きでギリギリで回避。

 魔物の爪が村長さんをかすめ、地面の泥をはね上げる。


 村長さん、しゃがみ込んだ低い姿勢のまま、魔物に向けて突進。

 向かってきた村長さんに魔物は左手を振り下ろす。

 瞬間、その攻撃をかわして魔物の懐へ飛び込んだ!


 村長さんと魔物の動きが止まる。


 一瞬の静けさのあと、ゆっくりと後ろへと倒れる魔物。

 その胸には深く剣が突き立てられていた。



「倒した……すごい……」


 息を止めて戦いを見守っていた私から、呼吸と同時に言葉が漏れた。


「あの男、かなり戦い慣れているな」


 一緒に戦闘を見守っていたステッキが(うな)った。



 けど、まだ戦闘は終わっていない。

 魔物はあと2匹。

 矢が刺さっている1匹と、無傷のもう1匹。



 村長さんが魔物から剣を引き抜こうとするも、魔物に深く突き刺さっていてなかなか抜けない。

 倒れた魔物の後ろに次の魔物が迫る。


 剣を諦めて広場まで下がった村長さんが、腰のあたりからもう一本の剣を取り出す。

 けど、明らかにさっきの剣よりも短い。


 その間に、後ろにいた魔物が倒れた魔物を乗り超えた。

 広場のぬかるみは不完全で、魔物の足止めにはなっていない。


 そして――村長さんと2匹の魔物が広場で対峙する状態となった。



    ◇



 にらみ合いの状態が続いていた。

 時折雄たけびをあげる魔物。

 剣を構え、微動だにしない村長。


 お互い、相手の出方を探っているみたいだった。



 膠着(こうちゃく)状態を打ち破ったのは、矢が刺さっている魔物だった。

 雄たけびとともに村長さんへ向けて突進を開始、もう1匹もそれに続いた。


 村長さんが冷静に先頭の魔物の体当たりをかわす。

 そこへ、後ろにいたもう1匹がタイミングを合わせて爪を振り下ろした。

 素早くかがみ、その爪をギリギリで回避する村長さん。


「魔物たち……連携してる、よね?」


「おそらくな。ただやみくもに攻撃しているわけではなさそうだ」


 魔物と戦ったことがない私でも見ていればわかる。

 間違いなく2匹がタイミングを合わせて攻撃している。


 数的に不利なのに、連携までするなんて。



 魔物の攻撃を受け流し、ときに弾き返す。

 防御に徹している村長さんが隙を見て反撃に出るも、連携した魔物の攻撃をかわしながらでは攻撃は当たらない。



 お互いの距離が離れ、再びの膠着状態。


 少しの沈黙のあと、今度は村長さんが魔物に向けて駆け出す。

 そして、矢が刺さった魔物の顔に向けて左手に握っていた土を投げつけた。

 土の塊を顔面にもろに受けた魔物が両手で顔を覆う。

 その腕に、村長さんが短剣を突き立てた!


 入った!!

 けど、魔物はそのまま顔の泥をぬぐっている。


 効いてない!?


 魔物は泥を拭う手を止めると、短剣を握りしめている村長さんをなぎ払った!

 吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる村長さん。


「村長さん!!」


 転がりながらなんとか受け身をとった村長さん、ゆっくりと立ち上がり、体勢を整える。

 けど表情がかなり険しい。

 右手で短剣を構えてはいるものの、左手で腰のあたりを押さえ、肩で大きく息をしている。


 魔物の方は!

 見ると、短剣が抜けた腕からは血がしたたっている。

 けど、あまり気にしている様子はない。


「剣が短すぎて、ダメージを与えられてないんだ……」


 やがて、短剣を構える村長さんの前に、2匹の魔物がゆっくりと立ちふさがった。

 矢と短剣の攻撃を受けたのにあまりダメージになっていない魔物と、無傷の魔物。

 かたや、なぎ払いの直撃を受けた村長さん。


 まずいよ!

 このままじゃ村長さんが!!


「ねえ! なんとかできないの! 私が魔力を込めたらさ! 炎とか! 雷とか! 転送のときみたいに! 私の魔力を使ってどうのこうのってやつ!!」


 私はステッキをぶんぶん振りながら叫んだ。


「転送魔法は元から俺に備わっているから使えるんだ。俺は魔道具だからな。だが、それ以外の魔法は術者の能力次第だ」


 私に振り回されながらも、冷静に答えるステッキ。


 レベルゼロってやつ。

 知ってる。

 前に聞いた。


 ……けど……だけどっ!!


 ステッキを両手で握り直し、魔物に向ける。

 そして、渾身の力を込めて思いっきり叫んだ!


「ファイアッ!!」


 私の呪文に反応したステッキの先端が赤色に輝きだす。

 やがてその光が巨大な火球へと姿を変え、魔物へ向けて勢いよく放たれた。

 火球は一直線に飛び、魔物を直撃!

 魔物は炎につつまれた!!

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