第75話 兄弟がいっぱいの件
ヘリポートからヘリが飛び立つのを見送りながら俺は思った。
「─────ホテルがマスコミに包囲されてたってヘリポートはホテルの屋上なんだから全然関係ないじゃん!!」
───やっぱりアイちゃんは本調子じゃないんだな。
状況把握が甘いのか、そこからの思考が甘いのかわからんが、今のアイちゃんの指示は的確とは言えない様だ。
────バスを一台爆破してまでマスコミ追い払う必要はなかったな。
今頃事故現場ではマスコミが大騒ぎしてるんだろうな。
でも、バス爆破は俺の指示じゃないから関係無し!
────俺の責任じゃないからヨシ!
────とりあえず部屋に戻って午前中だがアフタヌーンティーでも飲むか。
───俺は屋上から下に降りる階段を降りた。
階段を降りるとすぐ俺の部屋があるはずだった。
────待ってろ、午後の紅茶!フライングして飲んでやるからな!
「─────あ、アニキ!!お怪我は大丈夫ですか!?」
階段を降りると、突然俺が踏み台にしたあの陽キャがこっちに小走りにかけてくる。
しかもその後ろ、俺の部屋の前の廊下にずら───っとバスに乗ってた自動車学校の生徒が並んでいた。
─────アニキ?
─────俺は後ろを振り返った。
………誰もいない。
────前に視線を戻す。
陽キャと目が合う。
─────俺はまた後ろを振り返った。
「────アニキ、後ろになにかあるんですか?」
───え?俺?
────俺は自分を指差した。
「─────俺達感動したっす!皆でさっき話し合ったんですけど、アニキと呼ばせてください!」
───はぁ?
────お前らVシネの見すぎじゃないか?
俺の脳裏にカブトムシが大好きな例の俳優やディズニーを熱く語る強面俳優の顔が浮かんだ。
「─────アニキは一体何者なんですか!?」
「────何者も何も、少なくともお前らとは血は繋がってないな」
「─────そんな冷たいこと言わないで下さいよ~みんなアニキの帰りを待ってたんですから~」
皆が俺の周りを取り囲む。
────アイちゃん、マスコミじゃなくて知らない間に出来た弟や妹に取り囲まれてるよ。
こっちの方が俺にとっては大問題だ!
もしかして免許取るまで俺はコイツらに付きまとわれるのか?
────これは新手のいじめか?
─────それとも、なんか俺に対する特別なサービスか?
こんなスペシャルなどいらん!
頼む、頼むから俺をそっとしておいてくれ!
────そんな小さい前ならえ位の距離まで寄ってこないでくれ!
────なんかギラギラした熱気をまとった奴らが俺ににじり寄る。
────やめろ!やめてくれ!
本来俺のパーソナルスペースは広大な広さが必要なんだぞ!
東京ドームを縦に並べると三つ分?スカイツリーを升にするとスカスカだから永遠に測れない位の質量が俺とお前らの間にはないといけないんだぞ!
────法律で決まってるんだぞ!
────違反するとひ◯し君人形が置いた時点で没シュートされて、笑点では問題出す前に山田くんが座布団持っていっちゃって週末のお茶の間が阿鼻叫喚に包まれるぞ!!
────意味がわからないって?
今の俺に論理は求めるな!
俺が求めるのは論理じゃなくてロンリーだ。
────人混みも行列も大嫌いだ!
俺はどうしていいかわからず、軽くパニックになっていたのかもしれない。
そんな時、俺を取り囲む集団の向こう────俺の部屋の真向かいの部屋のドアが静かに空き、中から俺に向かってちょいちょいと手招きしたのが見えた。
俺は咄嗟に取り囲む集団をかいくぐり、その部屋に飛び込んだ。
────部屋に飛び込んだ俺は、集団から逃げることが出来たことに安堵して思わずその場にへたりこんでしまった。
他人の部屋とはいえ、あの状況から逃げ出せたことで力が抜けてしまったのだ。
────腰が抜けたんじゃないぞ、力が抜けただけだ!
────その辺ははっきり主張しておくぞ。
────正直、手招きされたとは言え、他人の部屋に飛び込んだのは追い込まれた俺の無意識に近い行動だった。
ゆっくり俺は内鍵をかけた。
「────オートロックだからわざわざ鍵をかけなくても外からは開きませんよー」
─────後ろから聞きなれた声。
「────とりあえず、座ってお茶でもいかがですか?」
────振り返ると、そこには顔面の主がティーセットを二人分並べながらにっこり笑っていた。
もう少しで、自動車学校エピソードが終了いたします。
その後は「最終学歴 自動車学校」のネタを手に入れた主人公の冒険が始まります。
ほ、ホントにはじまるのかなぁ………
いや、はじまりますってば!(自分を鼓舞!)
いや、ホントに。
……よくわかんないけど。




