第46話 警戒レベルの件
「一人で免許を取りに来たのでちょっと心細かったのですけど、あなたみたいな方がいて良かったです」
顔面の主は上半身をこちらに向けてニッコリ微笑みながら話しかけてきた。
…………もしかして俺に話しかけてるんじゃなくて俺の後ろに誰かいて、そいつに話しかけてるんじゃ…………?
────よくあるやつ。
自分に手を振ってると思って手を振ったら違った………ってバージョンも有ったりなんかする、後で思い返すと恥ずかしくてたまらなくなる奴だ。
─────後ろを振り向く俺。
──────誰もいない。
───────視線を顔面の主の方にまた戻す。
「?」
俺の挙動不審さを不審に思ったのか、顔面の主が少し上目遣いで小首を傾げる。
────なんだ!?このかわいい仕草は!?
壺か!?教材か!?それとも貴金属か!?
────俺に何を売り付けるつもりなんだ!?
こりゃ、常時警戒レベル2の俺でも思わず買わされてしまうかもしれない危険度だ!
ちなみに、警戒レベル1は「心構えを高める」
警戒レベル2は「近付かない」
警戒レベル3は「避難行動の確認」
警戒レベル4は「安全な場所へ避難」
警戒レベル5「既に騙されている状況」
今は警戒レベル4の「安全な場所へ避難する」を実行して一つ座席を移動したものの、追いかけてこられた状況だ。
───────と言うことは、今は警戒レベル5の「既に騙されている状況」なのか!?
昔テレビでみた「怒ると服が破ける拳法の達人」が指差して死の宣告をしてくるシーンが、俺の脳裏に浮かぶ。
──────俺は既に死んでいるのか?
あ、この間の交通事故で一回死んでるけど、それはノーカウントな。
─────そんな時だった。
「────お姉さん、こっちで僕らと少しお話ししませんか?」
さっきの陽キャの中の内の二人が顔面の主をお誘いに来た。
こういう奴ら、本当に下心と行動力の塊だな。
でも過去の経験で大体なんとなく、こういった場合どうしたら自分達に都合がいいかわかってるんだろうな。
俺にはない発想だぜ。
俺がやったら悲鳴が上がって取り押さえられ、ひどい目に遭うはずだ。
そんなシミュレーションは何回もやってるから、目を閉じなくても簡単に想像できる。
「私、あまり大勢で騒ぐのは苦手で……」
え!?顔面の主が陽キャの誘いを断った!?
─────意外だ。
普通だこう言った雰囲気だと誘われたら付いていくものかと思ってたけど。
そんで顔面の主を奪われ、一人で取り残された俺は更に孤独感に苛まれ………
────だが、奪われるもなにも初めから俺のじゃないがな。
「それじゃ隣のお兄さんも一緒にならどうですか?」
陽キャも顔面の主を引き込もうと食い下がる。
─────だが一つ言わせてほしい。
俺を巻き込むな!
「この方のご迷惑になりますから………」
あ、空気読める人?
「お姉さんは学生さん?」
「────いえ、学生ではありません」
「僕たち近くの大学に通ってるんですけど、社会人の方のお話しに興味があって!」
よくもまぁ、こんなに誘い文句が出てくるものだ。
「私なんか、社会人不合格ですから。若い皆さんにお話しすることなんか何もなくて………」
顔面の主もニッコリ笑いながら負けずにお断りする。
───でも、頼むからあっちでやってくれ。
俺はちょっと腹が立ってきたぞ。
少し陽キャと顔面の主に背を向けるとスマホを取り出した。
「ゴンちゃん、今俺の横でナンパしてる陽キャ達の名前と経歴調べられる?」
『そんなことなら簡単だ』
スマホの画面にゴンちゃんが表示されたあと、一瞬で顔面の主をナンパしている二人の情報が出た。
俺のスマホのカメラの情報なのか、自動車学校のデータからなのかわからないが、一瞬で個人情報を調べるのだから大したものだ。
─────なになに、ほほう、さっき自己紹介で僕達は近くの大学に通う大学生だとか言っていたが、ほとんど学校行ってないじゃないか。
────しかも、二人とも親は社長か。
……親の金で遊び歩いてる感じだな。
しかも親は真面目に学校に通っていると思っているから免許を取ったら高級外車を買ってやる約束をしているようだな。
────かわいそうな親だなぁ。
結婚して子供なんか作るからこうなるんだ。
だから俺は結婚もしないし子供なんか作らないぞ。
子供なんか嫌いだ。
俺は子供に生まれなくて本当に良かったと思うよ。
────これは受け売りだけどな。
────まぁ、その前に相手がいないがな。
え?もうこのセリフ聞き飽きたって?
────いやいや、大事なことだから今後も何回も言うぞ。
皆様のお陰でたまに日のジャンル別ランキング100位以内に入ることがあることがわかりました。
ありがたや~。
でも、このランキングってどうやってあがるのかな?
─────まぁいいか。気にしても始まらないし~!?
(でもランキングに自分のタイトルが出てると純粋に嬉しいですね!)
そんな感じで書いておりますが、
本当に皆さんに笑って貰えているのかが日々心配な私なのでした。




